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第521話~売却交渉完了! そして、ギルドでの飲み会 ちょっとセイレーン様、飲み過ぎですよ!~

 友達のフォックスと再会した俺は、久しぶりに会話を楽しんだ。


「ドラゴンの。本当に久しぶりだな。仕事が終わって帰って来たのか?」

「仕事が終わったというか、まあ仕事の合間に空き時間ができたので商品の売却に来たって感じかな」

「そうか。俺たちはちょうど仕事から帰って来たところさ。ダンジョンに巣くう魔物からの素材回収の仕事だ。今から手に入れた品を商業ギルドに納品するところさ。で、そっちは商業ギルドから出て来たところみたいだが、もう商品の売却は終わったのか」

「いや、まだ交渉中でもう少し時間がかかると思う。だから一旦中断して昼飯でも食いに行こうと思って出て来たところだ」

「そうか。それじゃあ、それが終わったら時間は空いてるか?」

「空いてるけど、何かあるのか?」

「実は、商品の納入が終わった後、夕方からうちのチームで飲み会をやろうと思うんだけど、お前らのチームも参加しないか?場所は冒険者ギルドの中の『ラブ&ピース』何だが」

「飲み会か……」


 フォックスに飲み会に誘われた俺は悪くないと思った。

 最近は飲むと言っても家族や海底王国の貴族のお偉いさんたちとが多かったから、たまには冒険者仲間と飲むのもいいなと思った。


 皆はどうなんだろうと思って見て見ると。


「ラブ&ピースですか。そういえばあそこの鳥の揚げ物しばらく食べていないですね。久しぶりに食べたいですね」

「あそこの地酒、しばらく飲んでいないからたまには飲みたいですね」


 と、嫁たちは久しぶりに行きたそうにしていた。


 セイレーンに至っては。


「これがラノベで読んだ冒険者たちの飲み会!ここは参加してみたいわあ」


 と、妙な幻想を抱いて行きたそうにしていた。


 こんな風に皆行きたそうなので参加することにした。


「ああ、わかった。俺たちも参加するよ。夕方だったな。じゃあ、その位に酒場に行くよ」

「おお、待ってるぜ」


 ということで、俺たちはフォックスの飲み会に参加することが決まった。


 その後もしばらく世間話をした後一旦フォックスと別れ、俺たちは昼飯に向かうのだった。


★★★


 昼食後は商品売却の再開だ。


 とは言っても俺たちの分は終わっているので、後はセイレーンの分を見守るだけだ。

 交渉は引き続きカヤックさんが担当してくれている。


 昼飯前は大分疲れた様子のカヤックさんだったが、ご飯を食べて気力を取り戻したのだろう、元気よくセイレーンに応対してくれている。


「そうですね。こちらの石化回復の魔法薬でしたら一本銀貨六十枚でいかがですか?」

「そうねえ。それでもいいけど、もう一声欲しいかな。銀貨六十二枚でどうかしら?」

「こちらのミスリルの弓は彫られている海竜の彫刻がとても美しくて素晴らしいですね。これなら欲しがる人も多いと思います。銀貨八十枚でどうですか?」

「この品だったら銀貨八十三枚は欲しいかな?いかがかしら?」


 そんなカヤックさんに対して、セイレーンは相変わらず細かく交渉をしているが、先程に比べると若干勢いがない気がする。

 何と言うか、先程までに比べて値上げの要求幅が少なくなっていると思う。


 おかげで。


「そのくらいならいいですよ」


 セイレーンの提示額が想定内だと感じたカヤックさんが二つ返事で値上げを了承してくれ、交渉がスムーズに進むようになった。

 先程までとはえらい変わりようである。


 ここまでセイレーンの態度が変わったのには二つ理由があると思う。


 一つは昼食の時に腹いっぱい食べさせておいたからだ。

 昼食ではピザを食べたのだが、セイレーンにはシーフード、コーン、マルガリータと三枚もピザを食べさせておいたからな。

 おかげでお腹がいっぱいになって少し眠そうな感じなので、勢いがなくなったのだと思う。


 それともう一つはこの後に飲み会というメインイベントが増えて、そっちに気が逸れたことも原因だと思う。

 あいつ、『冒険者同士の飲み会』というものに憧れていたからな。そっちに興味が大分移って、売却の方から興味が分散したのだと思う。


 まあ、おかげでこのまま商品売却は何事もなく終わりそうだし、うまく行ってよかったと思う。


 結局夕方までにセイレーンの商品売却は滞りなく終わった。


「ホルスト殿。セイラさん。こちらが売却代金になります」

「ありがとうございます」

「ありがとね」


 マットさんから売却代金を受け取ると、俺とセイレーン、二人がそれを懐に納める。

 俺の方は後でエリカへ渡しておいてうまい具合に運用してもらうつもりだが、セイレーンはどうするのだろうか。


「今回のお金はセイレーン様のご自由にしてもらって構わないですよ」

「本当?ありがとうね!」


 一応そう言っておいたので好き勝手に使ってもらって構わないのだが、結構金額があるのでどうするつもりだろうか。

 ヴィクトリアのお母さんたちが来た時はあげたお金を使い切って帰って行ったが、セイレーンの場合使い切れないと思う。


 本当にどうするのだろうと思い様子を窺っていると。


「ふふふ、お金、たくさんもらっちゃった。何に使おうかな。服とか可愛らしいアクセサリーがあったら買っちゃお。後、おいしい物も食べちゃお!それと余ったお金は、今度ソルセルリお姉ちゃんと一緒に下界に降りてきた時にでも使っちゃおうっと!」


 とか言っていたから、ここで使えなかった分は後で使うつもりの様だった。

 というか、ソルセルリ、ヴィクトリアのお母さんと一緒に遊ぶつもりなのかよ。

 しかもこっちに降りてきて。


 まあ、好きにすればいいとは思うが、くれぐれも俺やヴィクトリアに迷惑をかけないようにしてくれよな、と俺は思うのだった。


★★★


 さて、売却後はフォックスたちと合流しようとしたのだが、その前にダンパさんに呼び止められてしまった。

 何だろうと思って話を聞くと。


「ホルスト殿、実は一つ急ぎで頼みたい依頼があるのだが」


 どうやら急いで片づけたい依頼があって、それを俺たちに頼みたいらしかった。

 本当は明日辺りは遊びに行く予定だったのだが、俺たちはSランク冒険者。それに普段からお世話になっているダンパさんからの依頼だ。

 断る訳には行かないので、二つ返事で引き受けることにした。


「わかりました。何の依頼かはわからないですが、ダンパさんの頼みとあらば引き受けましょう。ただ、今日は予定があるので明日からでも構わないですか?」

「おお、引き受けてくれるのかい?明日から?もちろんその条件でいいよ」


 ということで交渉は終わり、ここで今日は分かれて明日改めてギルドへ行くことになり、俺隊はそのまま宴会へと向かったのだった。


★★★


 夕方になり、フォックスたちと合流し宴会を開いた。

 場所は予定通り冒険者ギルド内の酒場『ラブ&ピース』だ。


「かんぱ~~~い!!!」


 最初にそうやって乾杯してから、皆で一斉に飲み始める。


「あんたがヴィクトリアさんの親戚のお姉さんのセイラさん?」

「そうですよ。セイラです。あなたは、確かフォックスさんでしたね。今日はよろしくお願いします」

「ああ、よろしくな」


 何かフォックスの奴がいきなりセイレーンに声をかけて行っている。

 一応宴会に先立ってセイレーンとおじいさんの二人とフォックスたちを引き合わせておいたので両者とも名前くらいは何となく把握してくれていると思う。


 それで、宴会が始まってからフォックスが改めてセイレーンに声をかけているのだ。


 もちろんフォックスにはセイレーンの呼び方について注意喚起をしているので、こいつもその辺は抜かりなくやってくれているという訳だ。


「それにしても、セイラさんはべっぴんさんだなあ。俺はこんな美人さん、初めて見たぜ」

「まあべっぴんさんだ何て……恥ずかしいですわ!」


 フォックスに褒められてセイレーンの奴が珍しくデレている。

 ガラに合わないことに、妙に頬を赤らめて乙女チックな顔をしていやがる。


 まあ、セイレーンの奴、あまり男が寄ってこないようだし。

 寄って来ても、いきなりセイレーンに手を出そうとするようなろくでもないやつやおじいさんの権力目当ての欲望むき出し奴らが来るくらいみたいだし。

 だから、お世辞とはいえ、フォックスに褒められて素直に嬉しいのだと思う。


 それにフォックスの奴って結構女にモテるから、女を喜ばせるような秘訣とかを心得ているようだし。

 その上でフォックスって見た目もカッコいいからな。

 男に縁がないセイレーン的には構ってもらって嬉しい相手なのだと思う。


 ということで、フォックス。適当にセイレーンを持ち上げてくれて、今日は上機嫌で帰れるようにしてくれよ。


 俺はセイレーンとフォックスのやり取りを見てそう思うのだった。


★★★


 今日の宴会がセイレーンの機嫌が良いうちに終わることを願っていた俺だったが、その目論見は失敗した。

 セイレーンがフォックスにおだてられて上機嫌になったまでは良かったものの、ここでとんでもない事態になってしまったからだ。


「う、ぐ。飲み過ぎちゃった。気分が悪い」


 何と調子に乗って酒を飲み過ぎたためだろう。

 気分が悪くなったらしいセイレーンの顔が急に蒼くなり始めたのだった。


「大丈夫ですか?」


 急いでヴィクトリアが横に付き、セイレーンを横にして介抱してやるが、その位で良くなるはずはなかった。


「もうダメ!」


 我慢できなくなったセイレーンは急いでトイレへと駆け込む。


「×〇?#**!!×$#**」


 そして、トイレの中から聞こえてくるセイレーンの言葉にはできない醜態を晒す音の数々。

 これで宴会の雰囲気はぶち壊しだった。

 俺達の宴会だけでなく周囲の人たちの宴会までね。


 まあ、あれだけえげつない音が周囲に響いたら皆引くよな。


 実際、フォックスの奴なんかも。


「セイラさん、ちょっと飲み過ぎちゃったなあ。俺が無理に飲めって勧めちゃったのが悪かったかなあ」


 と、セイレーンに酩酊させるくらい飲ませてしまったことを悔いているようだしね。


 まあ、俺は別に悔いる必要はないと思うけどね。

 調子に乗って醜態を晒すくらい飲む方が悪いんだし。

 そう思った俺は。


「まあ、気にするなよ。こっちのフォローはしておいてやるから」

「そうか、頼むよ」


 と、フォックスを慰めて、セイレーンのフォローをしてやっておいた。

 だから今回のことでフォックスがセイレーンに対して嫌いになったりすることはない、まあかなり引くとは思うが、と思うよ。


 とはいえ、人前でこれだけの醜態を晒してしまった以上、もうセイレーンがここの酒場でちやほやされる目はないんだろうなあ、と俺は思うのだった。


★★★


 その後、出すものを出して落ち着いたセイレーンがトイレから出て来たところで宴会は解散となった。


「今日はうちのセイラさんが迷惑をかけたからな。俺が全額出すよ」


 そう言ってフォックスたちに金を出させず、というか酒場中の人たちの迷惑をかけてしまったのでそっちの代金もなのだが、俺が全額払って出てきたのだった。


「それじゃあ、またな」

「ああ、また飲もうな」


 そう言って別れて、俺たちも自分の家に帰って行った。


★★★


 その帰り道、俺は酔いつぶれたセイレーンを背負って歩いていた。


「うー、気持ち悪いの~」


 俺の背中のセイレーンは、まだ気分が悪いのか、俺の背中にピッタリと張り付いて苦しそうにうめいている。


「セイレーンお姉ちゃん。しっかりしてください!ほら背中をさすってあげますので、これで少しは楽になるはずです」


 俺の側にはヴィクトリアがついて、まだ酔いが抜けずウンウンうなっているセイレーンの背中をさすってやりながら歩いている。

 そのおかげか、苦しそうだったセイレーンの表情は段々と穏やかになって行き、家に着くころには落ち着いたのか、スヤスヤと寝息を立てて眠るくらいには回復していた。


 俺はやれやれと思いつつも、エリカとヴィクトリアに言ってセイレーン用のベッドと布団を用意させると、ヴィクトリアに手伝ってもらってセイレーンをベッドの上に寝かせた。

 ベッドの上に横になったセイレーンは、「グガー、グガー」と大いびきをかきながら、服を乱し肌があらわになった状態でベッドの上で爆睡を始めるのだった。


 女性のこんな男性に見られたくない姿を見せられてしまった俺は、後事をエリカとヴィクトリアに託すことにする。


「エリカ、ヴィクトリア。セイレーン様のことは任せたよ」

「はい、旦那様。お任せください」

「セイレーンお姉ちゃんのことは気にせず、ホルストさんは先に休んでください」

「ああ。わかった。でも、明日はギルドの依頼をこなさなきゃいけないから、お前らも適当な所で休めよ」


 最後に二人にそう頼むと俺は部屋を出た。

 そして、そのまま自分の部屋に行くとベッドに横になり、今日の出来事を振り返る。


 本当に今日は一日中セイレーンに振り回されてしまった。

 商品売却にフォックスたちとの宴会と、セイレーンの面倒を見るだけで一日が終わってしまった。

 セイレーン、本当に世話のかかるやつである。


 まるで昔のヴィクトリアみたいだ。

 まあ、ヴィクトリアとセイレーンは血が繋がっていて成長過程も似たようなものだろうからそっくりなのだろうと思う。


 ただ、ヴィクトリアと違ってセイレーンはこの先大人しくなったりはしないだろう。

 もう完全に大人なセイレーンは人格が完成されてしまって、変えるのは難しいからだ。


 ということは、この先も海底にいる間はセイレーンに振り回されっぱなしということになるのかな?

 そう思うと頭が痛くなってきたが、まあセイレーンは面倒くさい人物ではあるが性格は悪くないので程々の距離を保てば楽しくは付き合っていけると思う。


 それに今日やらかしたことで少しは反省するだろうから、しばらくは控えてくれるはずだろうから、それに期待しようと思う。


 それよりも明日はダンパさんの依頼で忙しくなりそうだから早く寝よう。


 そんな感じで、この先セイレーンが少し大人しくなってくれることを期待しつつ、俺は明日に備えてゆっくりと寝るのだった。

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