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第520話~セイレーンの商品売却体験 セイレーン様、あまりギルドの子を困らせないでください!~

「お父さんとお母さん。それでは行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 翌朝、別れの挨拶をしてエリカの実家を出た俺たちは場所を移動する。

 いつものようにヒッグスタウンの郊外に出た後。


「『空間操作』」


 魔法で一気に移動する。

 移動した先は予定通り。


「ノースフォートレスの町。久しぶりに帰ってきた気がするな」


 俺達が拠点にしているノースフォートレスの町だった。


★★★


 ノースフォートレスの町に入った俺たちは商業ギルドへと直行した。

 そして、そのまま支配人のマットさんに面会を申し込むと。


「やあ、ホルスト殿久しぶりだね」

「ホルスト殿、元気だったかい?」

「マットさんにダンパさん。お久しぶりです」


 マットさんと冒険者ギルドのギルドマスターであるダンパさんが出てきたので挨拶をしておく。


「それで、今日はどんな用件で来たんだい?」

「実は今回海底王国へ行っておりまして」

「海底王国?というと、伝説に聞く人魚の国のことかい?」

「はい。その人魚の国です」

「へえ、ホルスト殿はすごい所へ行ったんだね。そんな所へどうやって行ったんだい?」

「それは企業秘密です。あまり詳しくは話せません」

「そうか。残念だが仕方ないね。それで海底王国へ行ってきたということは、今日の用件はもしかして?」

「はい、ご想像の通りです。海底王国でお宝を手に入れてきたので売却しようと思って来たのです」

「ほほう。それは興味がある話だね。それでは早速商品を見せてくれないか?」

「はい。ただ量が多いので倉庫を使わせてもらってもいいですか?」

「もちろんだとも」


 ということで、話はまとまり、俺たちは倉庫へと移動したのだった。


★★★


 倉庫に移動した俺はヴィクトリアに指示を出す。


「ヴィクトリア、頼むよ」

「ラジャーです」


 俺の指示でヴィクトリアが収納リングから素材や商品を取り出し倉庫にきれいに並べて行く。


「「おおおーー」」


 それらの品々を見てマットさんとダンパさんがうなっている。

 多分、海底王国の品々が珍しいので驚いているのだと思う。

 実際、俺たちに色々と質問してくるし。


「ホルスト君、この髪飾りは何でできているんだい?」

「これは海底王国に生息する宝石サンゴですね。海底王国でも貴重な品ですよ」

「こっちの指輪は真珠だと思うんだが、この台座に使っている素材は何だい?」

「それは七色貝で作っているのだと思います。七色貝は虹色に輝く貝で、海底の一部地域にのみ生息しています。海底王国でも貴重な品ですよ」


 と、こんな感じで俺がマットさんやダンパさんに説明している一方で。


「ふん、ふん。ふんふふ~」


 セイレーンの奴が倉庫の一角で自分の収納リングから商品や素材を取り出して嬉しそうに並べていた。

 セイレーンが並べている品は海底王国の冒険で俺たちが手に入れた品物の一部で、今日のためにあらかじめセイレーンに渡していたものだった。


 そうやって嬉しそうにしているセイレーンを見てマットさんが俺に聞いてきた。


「ホルスト殿。あちらの女性はどちら様で何をしているのですか?」

「ああ、あちらはうちのヴィクトリアの親戚のお姉さんでセイラ(セイレーンの偽名)さんと言います」

「ほほう。ヴィクトリア殿の親戚のお姉さんですか?」

「はい。まあ、詳しく言うとヴィクトリアのお父さんの妹さんなので叔母に当たる方なのですが、本人が嫌がるので、絶対にお姉さんと呼んで下てください」


 そこまで言ったところで、何やら事情があるのを察したのか、マットさんとダンパさんは俺の言葉に黙って頷いてくれたのだった。

 二人が察してくれたのを見て、俺はセイレーンに聞こえないように声の音量を下げて二人にこう頼むのだった。


「それで、今彼女が何をしているのかというと、どうも彼女ギルドに商品の売却をしてみたいそうなのです。なので、誰かつけてやって買い取ってあげてくれませんか。できれば少し高く買い取ってあげてください。その分、俺たちの方の金額は下げてもらっても構わないので」

「うん。ホルスト殿がそう言うのならそうしてあげましょう。おい!」

「はい、支配人」


 俺の頼みを了承してくれたマットさんは俺たちの査定をしていた部下の一人に声をかけると、何やら耳打ちしてからセイレーンの方へ行き、セイレーンに声をかけた。


「初めまして、セイラさん。私、当商業ギルドの支配人を務めさせていただいておりますマットと申します。よろしくお願いします」

「あら、ここの支配人さんですの?初めまして。セイラと申します。よろしくお願いします。マットさん」


 そうやって挨拶をかわすと、マットさんとセイレーンはお互いにぺこりと頭を下げ合って会釈をする。


「セイラさんは何でもヴィクトリア殿の親戚のお姉さんだとか」

「はい、その通りです。うちのヴィクトリアもお世話になっているようで、ありがとうございます」

「いえ、いえ。こちらこそ、色々と儲けさせてもらっているのでお互い様です。それよりもセイラさんはとても美しい方でありますな。こんなとんでもない美貌の持ち主には初めてお会いしました。こんな方が身近にいるホルスト殿が羨ましいですぞ」

「あら、やだ。美しいだなんて……はっきり言われると恥ずかしいですわ」


 マットさんにおだてられてセイレーンの奴が子供のようにうれしそうにしている。

 この程度のお世辞でこんなに喜ぶとか、意外に単純なやつである。


 というか、親戚のお姉さんだとか美しいだとか言われて、遠慮なくそれを肯定しているのはどうなのかと思うぞ。


「それで、セイラさんは何でも商品の売却をお望みだそうで?」

「はい、そうです」

「でしたら、私の部下を専属でつけますので、売りたいものがあったら彼に言いつけてください。おい、カヤック」

「はい」


 マットさんに言われて、マットさんの部下の青年が前へ進み出る。


「うちのギルドで商品買取査定部長をしておりますカヤックと申します。まだ若いですが、目利きは確かなのでセイラさんの商品にも適正な評価をすると思いますので、使ってやってください」

「今紹介に預かりましたカヤックと申します。セイラ様、よろしくお願いします」

「よろしくね。カヤックさん」


 と、こんな感じでセイレーンの方も買取りの担当者が決まり、買取り交渉開始となったのだった。


★★★


 その後、商品の買取り交渉は進んだ。


「ホルスト殿、今回の商品は総額でこの位の金額でよろしいですか?」

「そうだな。それでいいよ」

「ありがとうございます。それでは手形を発行させていただきます」


 俺達の方の交渉はそんな感じで順調に進んだ。

 特にトラブルもなく、マットさんから商品の評価の説明を受け、それに納得できたので提示された金額で妥協したのだった。


 その一方でセイレーンの方は売却交渉を楽しんでいるようだった。


「この壺は金貨二枚と銀貨五十枚でいかがですか?」

「そうねえ。それでもいいけど、もう一声欲しいかなあ。金貨三枚でどうかしら?」

「こちらの『グレートライジングフィッシュ』の鱗はかなり上等の品ですね。これならかなりの『耐雷防御力』を期待できます。欲しがる防具屋も多いでしょう。金貨三枚でどうですか?」

「う~ん。後、銀貨五十枚追加してくれないかしら?」


 と、一品一品かなり細かく価格交渉をしていた。しかも要求金額が結構大きい。だから。


「う~ん、そうですねえ……それでしたら」


 と、カヤックさんも頭を捻って色々と利益を計算しながらギリギリの値段を提示して行ってくれたりしている。


 セイレーンがここまでしつこく価格交渉しているのは楽しいからだと思う。

 セイレーンはヴィクトリアに似て自分が気になったこと、ヴィクトリアの場合だと食べ物や俺たちとの関係がそれにあたる、にはとことんこだわるタイプの様だった。


 まあ、それはいいのだが、今回はちょっと迷惑だ。

 時間がかかり過ぎてしまう。

 現に俺達の十分の一も量がなかったはずなのに、俺たちの方の売却が終わった時にまだセイレーンの方は半分ほど残っていた。


 それにセイレーンと交渉をしているカヤックさんも大分疲れているようだ。

 何と言うかセイレーンに言われるがままに細部に至るまで細かく鑑定させられて、見ているだけでも大変に疲れそうな感じだった。

 心なしか、疲れで声に張りがなくなってきている気もする。


 このままではいかんな。


 俺はセイレーンに商品売却をさせたことを後悔し始めていた。

 俺達に迷惑がかかるだけならまだしも、マットさんの部下にまで迷惑はかけたくなかった。


 ここまで細かい交渉をするとわかっていたら、絶対に商品売却なんかしなかったのに。

 そう思い、頭を悩ませた。


 とはいえ、無理矢理に交渉を中断させるとセイレーンの機嫌が悪くなりそうだし、本当に困ったものだ。

 最低でもカヤックさんを休憩させてあげたいなと思った俺は、無い頭を捻って知恵を絞りだすことにする。


 そして、いいアイデアが浮かんできたのでセイレーンに話してみることにする。


「セイラさん。交渉が長引くようでしたら、お腹も空いてきましたし、先に休憩がてら食事に行きませんか?」

「あら、いいわね。私もちょうどお腹が空いたなと思っていたし、是非行きましょう」


 ということで、商品売却は一旦中断となり、皆で食事へ行くことになった。

 そう決まった時のカヤックさんのホッとした顔が、もちろんセイレーンはそれに気付いていないぞ、とても印象的だった。


★★★


 そういう事で商業ギルドを出て外へ出ようとした俺たちだったのだが、商業ギルドの入口で意外な人物に遭遇した。


「よう!ドラゴンの!」

「やあ、フォックスさん。久しぶりです」


 それは俺の友達のフォックスだった。


 そして、フォックスと再会した俺はこの後久しぶりに話すことになったのだった。

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