第519話~潜水艇の修理依頼 え?潜水艇の修理ってそんなに時間がかかるんですか?~
海底王に『海竜の徽章』の入手を一応海底王国の役人を通して報告した俺達だったが、「謁見して正式に報告してほしい」と言われてしまった。
それに対してもちろん俺はオーケーしたわけだが、謁見までには数日かかるとのことなので先に潜水艇の修理に行き、ついでノースフォートレスの町にも出向いて家の様子も見て行くことにした。
「少し出かけてきます。一週間ほどで戻ってきます」
王宮へ使いをやり、そうやって俺たちの予定を伝えてもらう。
すると。
「了解しました」
と、返事が返ってきた。
「王宮にも予定は伝わったことだし、出かけるぞ!」
「はい」
俺達はヒッグスタウンにある魔道具工房へと出かけたのだった。
★★★
「こんにちは」
「あ、これはホルスト様。ようこそいらっしゃいました。今日はどうされたのですか?」
「今日はレンブラントさんに用があって来たんだけど、いるかな?」
「はい。おりますよ。少々お待ちください」
魔道具工房へ到着した俺たちはすぐに受付へ行き、レンブラントさんに面会を申し込む。
すると、受付さんがすぐに面会を取り付けてくれたので少し待つ。
五分後。
「ホルスト様、よくお越しくださいました。本日はどういったご用件でしょうか」
「実は、潜水艇が破損したので修理をお願いしに来ました」
「修理依頼ですか?わかりました。それでは潜水艇の状態を確認しますので、工房の方へお越しください」
現れたレンブラントさんに修理の件を伝えると、すぐに工房へと案内してくれて、潜水艇の状態を確認してもらうことになったのだった。
★★★
「う~ん。これはずいぶん派手にやられましたね」
俺達の潜水艇ノーチラス号の状態を確認したレンブラントさんが難しい顔をする。
ノーチラス号の状態はその位悪かった。
ノーチラス号は外殻に十か所以上の亀裂が入り、そこから船内に浸水が起こっている状態だった。
その上水圧の影響はタンクにも及んでおり、ダメージは深刻そうだった。
幸いなことにエンジンなどに被害は及んでいなかったが、かなりやばい状況であることは間違いなかった。
「一か月ですね。修理にはそのくらいかかります」
レンブラントさんの見立てでは一か月位かかるらしかった。
まあ、外殻が大分壊れてしまっているので修理をするとなればその位は最低でもかかると思っていたので、そんなものだと思う。
この分だと海底の地脈の封印へ行くのにしばらく待たなければならないが、潜水艇無しでは行けないので仕方がなかった。
ということで、この条件でレンブラントさんに修理をお願いすることにする。
「レンブラントさん。それではお願いします」
「お任せください。前よりも丈夫にしてみせますよ」
俺達の頼みにレンブラントさんは力強く頷いてみせ、前よりも頑丈なのにしてくれると誓ってくれたのだった。
さて、これで修理の依頼は終わりだ。
「それでは、また」
「お気をつけて」
俺たちは最後にそう挨拶すると、次の目的地であるエリカの実家へと向かうのだった。
★★★
「やあ、よく来てくれたね。元気そうで何よりだ」
エリカの実家へ行くと、エリカのお父さんがそうやって笑顔で俺たちのことを出迎えてくれた。
そして、挨拶もそこそこにホルスターを呼ぶと、お母さんと二人でその頭を撫でながらかわいがり始めた。
「ホルスター、元気だったかい?」
「うん、元気だったよ」
「ホルスター君に会えなくて、おばあちゃん、寂しかったわ」
「僕も寂しかったよ。だからおばあ様に会えてうれしいよ」
「あら、かわいい子!」
そうやって二人で代わる代わる声をかけ、頭を撫で、時には抱き着いたりして、久しぶりに孫と会えたのを喜んでいる。
さて、そうやってお父さんたちが一通りホルスターを愛でて満足したところでお父さんたちにセイレーンとヴィクトリアのおじいさんを紹介しておく。
「お父さん、お母さん。紹介しておきますね。こちらがヴィクトリアのおじいさんのダービーさんと、おば・……親戚のお姉さんのセイラさんです」
もちろん、ダービーはおじいさんの、セイラはセイレーンの偽名だ。
……って、危なかった。もうちょっとで「叔母さん」という禁句を言う所だった。
ここでうまく『親戚のお姉さん』と言えたのは、自分でもナイスプレイだったと思う。
それはともかく、俺の紹介を受けてお父さんたちとおじいさんたちが挨拶をかわしている。
「これはヴィクトリアさんのおじいさん。初めまして、エリカの父のトーマスとこちらが妻のレベッカです。よろしくお願いします」
「ご紹介に預かりましたレベッカです。よろしくお願いします」
「トーマスさんにレベッカさん。初めまして。私がダービーで、こちらが娘のセイラです。よろしくお願いします」
「セイラです。お二人ともよろしくお願いします」
そんな感じで挨拶した後、四人で談笑し合っていた。
初めて会うのに結構仲が良さそうで良いことだと思う。
うん、本当に良かった。
★★★
さて、そんな感じでしばらく過ごした後夕食の時間になった。
「今日はダービーさんたちがわざわざ来てくださったということなので、ごちそうを用意しましたよ」
エリカのお父さんがそう言う通り、今日の料理はドラゴンの肉を使った高級品だった。
「うわあ、エリカちゃんのお父さんは優しいわねえ。こんなおいしそうな料理を用意してくれるなんて、感激だわあ。遠慮なくいただくわ」
「本当ですね。今日の料理は豪勢ですね。たくさん食べましょう」
食い物に目がないセイレーンとヴィクトリアはそうやってうれしそうな顔をしながら、一生懸命に食べている。
途中、エリカのお母さんに、
「おかわりもありますから、遠慮せずに行ってくださいね」
と、言われて、「「はい!」」と大声で返事して、本当に遠慮せずにおかわりを頼んでいたので、本当にうれしかったのだと思う。
他の嫁たちやおじいさんもヴィクトリアたちみたいにはしゃいだりはしないが、「おいしいですね」とか、「うまいな」とか楽しく談笑しながら食べているので、今日の料理が気に入ったのだと思う。
そんな中、俺はお父さんに今後のことについて聞かれていた。
「それで、ホルスト君。海底での仕事はどんな状況なんだい?」
「まあ六割くらい終わりという感じですね。ただ、現在潜水艇を修理中なのでクリアまでには少し時間がかかるかもしれないですね」
「そうか。大変そうだね。できる限り僕の方でも協力してあげるから、遠慮なく何でも言いなさい」
「はい、ありがとうございます」
と、こんな感じで簡単に状況報告をしたのだった。
その後は俺もお父さんも嫁たちの話の輪に加わり、楽しく食事を楽しんだのだった。
★★★
食事後、夜の闇が大分濃くなってきたので寝ることにする。
今日はエリカと一緒に寝る日なので、二人並んでベッドに横になる。
ここで、すぐに夫婦生活を初めても良かったのだが、その前に明日の予定について話す。
「明日は久しぶりにノースフォートレスの町へ行って、セイレーン様が一部の魔物の素材や商品の売却をする。そういう予定でいいな?」
明日はノースフォートレスの町に行って海底王国で手に入れた素材や商品を売却して、その後は家に帰ることにした。
海底王国の物は珍しいので地上では高く売れそうなのと、前に約束した通りセイレーンに商品売却をやらせてあげるつもりだ。
「はい。そういう予定ですね。それにしてもセイレーン様。そんなに商品売却なんかしたいのですね。変わった方ですね」
「まあ、ヴィクトリアもそうだが、セイレーン様もそういう一見絵になりそうな役をするのが好きだからな。今回のことも、昔セイレーン様が読んだラノベとかいう小説に冒険者が素材を売却する場面があって、それが楽しそうだったからやりたいって話だしな」
「そういうことでしたら、やらせてあげたら喜んでいただけるでしょう。そうなれば、クリント様も喜ぶでしょうから、ヴィクトリアさんも親孝行ができて、家族の仲が深まってよろしいと思います」
「そうだな」
本当にエリカの言う通りだった。
家族とあまり仲の良くなかった俺としては、嫁たちや子供たちには同じ思いを味わってほしくなかった。
だから、この程度のことでヴィクトリアがおじいさんたちと仲良くできるのなら、それは嬉しいことなのだった。
さて、そんなことを話しているうちにも夜の闇は深まって行く。
俺はエリカを優しく抱きしめると、そっと耳元でささやいた。
「そろそろ始めようか」
「はい、旦那様」
そして、二人で濃厚な夜を十分に楽しんだ後、疲れ果てて二人で抱き合ったまま眠りに入る。
その眠りに落ちて行く中俺はこう思った。
明日、セイレーンの奴、うまく行くといいな。




