第518話~大海溝の遺跡 海竜の徽章ゲット! そして、脱出~
邪見鬼に見送られながら奥の部屋に行くと下り階段があった。
その階段を降りると、すぐ目の前に扉があった。
扉を見ると海竜の紋章が描かれているので、ここがゴールで間違いないと思う。
ということで、扉を開けて中へ入ると。
「お、祭壇?かな?」
入ってすぐに祭壇らしきものがあり、その上には何か箱のようなものが置かれていた。
それを見て、俺が箱に手を伸ばそうとすると。
「お先に失礼します!」
そう言って、ヴィクトリアが割り込んできて箱を手にする。
箱を手にしたヴィクトリアが早速箱を開け、中身を確認すると。
「おお!この徽章には海竜の紋章が描かれていますね。これで『海竜の徽章』ゲットです!」
中から『海竜の徽章』が出てきたのだった。
何か最後にヴィクトリアにおいしい所を持って行かれてしまった。
思えば、今回ヴィクトリアの奴妙に目立ちたがっていたが、多分おじいさんが目の前にいるので良いところを見せたいのではないかと思う。
まあ、いいか。ヴィクトリアがそうしたいというのならさせてやればいい。
それよりも、こうして俺たちは『海竜の徽章』を手に入れることに成功したのだった。
★★★
そんな感じで『海竜の徽章』も手に入れ、皆で喜びを分かち合い、ダンジョンから出ようかと思った矢先。
「なんだ?ダンジョンが揺れているのか?」
なぜか突然ダンジョンが揺れ始めた。
しかもかなり激しく、地面が、壁が、天井がグラグラと激しく揺れている。
何事かと思った俺はヴィクトリアのおじいさんとセイレーンに聞いてみた。
「これは一体何事ですか?」
「これはね。ダンジョンにはつきものの『お宝手に入れたら、ダンジョンが崩壊を始めました』イベントよ」
「『お宝手に入れたら、ダンジョンが崩壊を始めました』イベント?何ですか?それは?」
「そのままよ。『海竜の徽章』を手に入れたらここのダンジョンは崩壊するっていうイベントになっていたわけよ」
「ダンジョン崩壊って……危ないじゃないですか!」
「危ないかもしれないけど、これも用意した最後の試練なのよね。クリアしてもらわないと困るわ」
これも試練。そう言われては俺もこれ以上何も言えなかった。
何とか脱出するしかないようだ。ただ少し気になることがあるので聞いてみる。
「なるほど、試練だというのなら仕方ないですね。でも、ここには赤丸とかもいましたよね。彼らはどうなるんです?」
「大丈夫よ。赤丸とか青丸とか、ここにいた子たちはとっくに逃げているし、このダンジョンもホルスト君たちが脱出すれば元に戻るようになっているから。それにダンジョン脱出までには時間もあるし、ここまで来られた者なら余裕で脱出できるようにしてあるから、安心して!」
「それは良かった。それなら早速脱出と行きましょう」
ここにいた他の連中も無事だと聞き、安心した俺はこのダンジョンからの脱出をすることにしたのだった。
★★★
「『空間操作』。……よし!うまく行った!」
俺は『空間操作』の魔法を使ってダンジョン入口の船着き場へと移動した。
本当はダンジョンの外まで一気に脱出したかったが、俺の魔法ではここまでだった。
まあ、いい。
ここまで来れば後は水路を通ってダンジョンの外へと脱出すればよいだけだ。
「ヴィクトリア!」
「ラジャーです!」
俺はヴィクトリアに潜水艇を出させると、それに乗り込み、水路へと突入するのだった。
★★★
潜水艇に乗って水路を通過するのは至難の道だった。
「ホルストさん!音波装置が反応しっぱなしで収拾がつきません!」
さっきから音波装置係のヴィクトリアが悲鳴をあげている。
どうやらここの水路もダンジョン崩壊の例外ではなく、少しずつ壁が崩れ、通路が狭くなっていっているようだ。
このままだと潜水艇が崩れた壁に激突して危ない!
そう感じた俺は決意する。
「リネット操縦代われ!俺が外に出て崩れた壁を排除するから、うまく潜水艇を操って脱出してくれ」
「心得た!」
そうやってリネットに潜水艇の操縦を変わってもらい、「『空間操作』」と、魔法を使って外へ出る。
そして、獅子奮迅の活躍をする。
「おりゃああああ!!『十字斬』、『十字斬』」
潜水艇に迫りくる岩の塊に向かってひたすら必殺技を放ち続ける。
何せ俺が渾身の力を込めて放つ一撃だ。
ドゴオオオン!という破裂音とともに次々に岩の塊が崩れて行く。
ただこのダンジョンは最後まで手強い。
「くそ!まだ崩れるのか!」
俺が砕いても砕いてもどんどん壁が崩れて来る。
その量の多さに辟易とし嫌気がさしてきたが、潜水艇には大事な家族が乗っている。
「こんちくしょう!」
俺は最後の気力を振り絞り、潜水艇が無事ダンジョンから脱出するまでひたすら岩を破壊し続けるのだった。
★★★
その三十分後。
「旦那様。ご気分はいかがですか?」
「うん、もう大丈夫」
「ホルストさん。ワタクシの魔法はだいぶ効いてきましたか」
「ああ、大分調子が戻って来たよ」
何とか『大海溝の遺跡』を脱出することに成功した俺は疲れ果てていた。
それで、今俺はエリカに膝枕されながらヴィクトリアに『体力回復』の魔法をかけてもらっている。
エリカの膝は柔らかくて心地よく、ヴィクトリアに顔を撫でられながら回復魔法をかけてもらうのもとても良かった。
おかげで一歩も歩けないくらい疲れ果てていたのに、大分疲れが取れて元気になってきた気がする。
なお、リネットとネイアは潜水艇を操縦しながら俺たち三人のことを羨ましそうに見ている。
この顔はできるなら自分たちが俺の世話をしたいと思っている顔だ。
そんな二人を見て俺は想像する。
リネットに膝枕してもらいながら、リネットに体力回復のポーションを飲ませてもらう。
それはそれでいいなあ、と。
本当、美人で優しい嫁さんたちに囲まれて俺は幸せだなと思う。
さて、俺はそんな感じで一仕事を終えた後の幸せに浸っていたわけだが、ここで異変が起きた。
「な、何だ?」
「ホルスト君、大変だ!潜水艇が!」
ガクガクと突然潜水艇の船体が揺れ始めたのだった。
突然の事態に訳が分からい俺が手をこまねいていると、いち早く事態を察したらしいセイレーンがこんなことを言い始めた。
「大変!潜水艇にかかっていた『海竜の加護』の効果が切れちゃったみたいね。何とかしないと潜水艇が潰れちゃうわ!」
『海竜の加護』の効果が切れた?
そういえば『海竜の加護』って、大海溝に潜る前に賭けて以来使ってなかったからな。
それが時間の経過で切れたという事か。
……って、そんなことを考えている場合じゃない!
『海竜の加護』が切れたせいで潜水艇にかかる大海溝の高水圧を相殺できなくなってきている。
おかげ潜水艇の外郭が壊れ始め、外から水が浸水し始め、このままだと本当に潜水艇が潰れそうな感じだった。
こうなったら、急いで何とかしないと!
そう思った俺は立ち上がると、急いで対応を始めるのだった。
★★★
結論として、俺たちは助かった。
あの後すぐに潜水艇の目の前に『空間操作』の魔法で転移門を出現させ大海溝から脱出したのだった。
それで脱出した先は以前『海の主』と戦った時に滞在した島だった。
ここは風待ち用の島で人は住んでいないが、簡易な港湾設備があるので、非常時に逃げ出すのにはちょうど良いのだった。
それでこの島に脱出した俺たちなのだが。
「旦那様。あちこちから漏水していて、私たちでは修理は無理だと思います」
「そうだよ。アタシたちでは無理だよ。修理に出した方がいいよ」
「私も手遅れになって修理不可能とか言われる前に専門家の手にゆだねた方が良いと思います」
「そうだな。無理に自分たちで直そうとせずに大人しく修理に出すとするか」
大海溝の水圧のせいで潜水艇が破損して修理しようとしたのだが、すぐに無理だと判断し、修理に出すことに決めたのだった。
「それでどうするんですか?すぐに修理に出すのですか?」
「まあ、すぐに修理に出しに行っても良いけれど、その前に海底王やトリトンの町の人に『海竜の徽章』を手に入れたことを報告しないとな。あそこの人たちには色々とお世話になったしな」
ただすぐに修理には出さず、先に海底王やトリトンの町の人に報告することにする。
何せ彼らには大海溝に行くにあたって世話を焼いてもらったからな。
なるべく早く報告するのが義理を果たすことになると思う。
「さて、それではとりあえずトリトンの町へ行くぞ」
こうして俺たちはトリトンの町へと移動した。
★★★
トリトンの町へ魔法で移動し、城門の入口の兵士に帰還を伝える。
するとすぐに王宮へ連絡が行き、使者の役人がやって来て俺たちにこう告げるのだった。
「海底王陛下はあなた方が無事『海竜の徽章』を入手できたことに大変お喜びです。ぜひあなた方にお祝いの言葉を授けたいとのことですが、準備があるので十日程待って欲しいとのことです。それまでは迎賓館でお休みください」
準備ねえ。多分、ここでも派手な儀式をして国民に国王の権威をアピールしたいのだろう。
そう考えた俺は了承の返事をする。
「わかりました。しばらく迎賓館で休養することにします。海底王陛下には良しなにお伝えください」
「了解しました」
最後に使者はそう言い残すと王宮へと帰って行った。
後に残された俺たちは宿舎として利用させてもらっている迎賓館へと向かう。
その道すがら俺は考える。
これで『王家の徽章』と『海竜の徽章』は手に入れた。
後は海底火山へ行き、地脈の封印をすればよいだけだ。
さて、頑張ってやるとしますか。




