第517話~大海溝の遺跡 ラスボス邪見鬼戦 後編 総力戦~
オリハルコンの金棒を持った邪見鬼が俺たちに迫って来る。
それを見てリネットが前に出て迎撃する。
「おりゃああああ」
盾を前面に押し出して、積極的防御態勢で邪見鬼に向かって行く。
邪見鬼に向かうリネットからは神気も感じられるので、『戦士の記憶』の力も使って最初から全力で行っているのだと思う。
そんなリネットに邪見鬼も正面から向かって行く。
「ドワーフの娘よ。我に正面切って向かって来るとは、中々良い根性ではないか。行くぞ!はあああああ」
そう言いながら全力で金棒をリネットにたたきつけて来る。
それに対してリネットも全力で斧を振りぬく。
純粋な力と力の勝負!その結果は……。
「やるな!」
「やるじゃない!」
互角だった。
ガキーンと斧と金棒がぶつかり合う激しい音が周囲に響き、衝撃波が発生する。
ここでリネットと邪見鬼は一旦離れる。
両者とも満足げな顔をしているので、初っ端から良い力比べができて良かったと思っているのではないかと思う。
と、こんな感じで俺たちと邪見鬼の戦いはスタートした。
★★★
「『神化 炎槍』」
「『極大化 炎槍』」
「『極大化 鬼火』」
リネットが邪見鬼から離れたのを見てエリカたちが魔法を放つ。
エリカたちの魔法は一直線に邪見鬼に向かって行き、そのまま命中するかと思われたが。
「『鬼神装着 鬼神鎧』」
何と邪見鬼は魔法で鎧を召喚すると防御態勢に入る。
邪見鬼の鬼神鎧とか言う鎧は、多分あの鎧はその輝きから見てオリハルコン製ではないかと思うが、頑丈で、邪見鬼の防御能力と相まってエリカたちの魔法をすべて弾いてしまった。
ならば、と次は俺とネイアが攻撃を仕掛けて行く。
「『十字斬』」
「『武神昇天流 虎殺脚』」
必殺技を繰り出しながら邪見鬼に迫って行く。
だが。
「『鬼神流 仁王の術』」
邪見鬼はそう一言呟くと、金棒を目の前に構えそこを起点に全身をオリハルコンのへと変え、防御を固めてしまう。
そこに俺たちの必殺技が命中したが。
「ち、こうなってはこの程度の攻撃ではどうにもならないか」
「そうみたいですね」
カランという乾いた音とともに俺たちの攻撃が弾かれてしまったのだ。
それを受けて俺とリネットは素早く交代した。
邪見鬼の反撃があるかもと予想したからだ。
そして、その予想は的中する。
★★★
「『神化 炎槍』、『神化 氷弾』、『神化 電撃』」
俺とネイアが離れると同時に邪見鬼が『仁王の術』とやらを解除して魔法を放ってくる。
青丸の時と同じように『神化』魔法で、しかも三発同時だった。
これは普通の魔法では防げそうにない。
そう判断したエリカとヴィクトリアが協力して魔法を使う。
「『神化 魔法障壁』」
「『神化 防御結界』」
「『神化 魔法障壁』と『神化 防御結界』の合体魔法。『神化 絶対防御障壁』」
そうやって二人が協力してしか使えない最強の防御魔法で邪見鬼の魔法を受け止める。
ボン、ドン、ドカンと三回大きな音がして、邪見鬼の魔法がエリカたちの防御魔法に放たれる。
これで攻撃はひと段落かなと思っていると、俺たちに一息入れさせる隙を与えず邪見鬼が急速に迫って来る。
「『鬼神流 金剛破砕』」
そして、十分に神気が乗った強力な一撃を加えて来る。
これにはすでに魔法を受けた後で防御力が下がった状態のエリカたちの防御魔法では耐えられず。
「「きゃっ」」
二人に悲鳴とともに魔法が破れる。
それを見た瞬間、いや正確に言うと魔法が破れる前邪見鬼が必殺剣を放った瞬間に、俺が二人と邪見鬼の間に入って行き、邪見鬼に対抗すべく必殺剣を放つ。
「『フルバースト 究極十字斬』」
俺の必殺剣と邪見鬼の必殺技が激突し、ボス部屋全体が揺れ、爆煙が周囲に広がる。
そして、揺れが収まった後、俺は前を向いて警戒したまま後ろにいる嫁たちに声をかける。
「みんな、大丈夫か」
「はい、大丈夫です。旦那様が私たちの前に立って守ってくださったので、何とか防御魔法を張り直せました。おかげで誰も怪我をせず無事です」
「そうか、よかった」
どうやらみんな無事そうなので、俺は安心したのだった。
そうやって皆の安全を確認しつつ、爆炎が晴れた後、邪見鬼の様子を観察する。すると。
「お?邪見鬼の奴、肩から血を流しているな」
邪見鬼の奴が負傷して肩から血を流していた。
どうやらエリカたちの防御魔法を破ったことで必殺技の威力が減衰し、俺の必殺剣の威力を相殺できなかったようだ。
そんな邪見鬼を見て俺は確信する。そして、皆に呼びかける。
「みんな!鉄壁の防御力を誇る邪見鬼と言っても完璧ではない!皆で一斉に攻撃を仕掛けて倒してしまうぞ!」
「はい!」
★★★
俺達は邪見鬼に一斉攻撃を仕掛けて決着をつけることにする。
負傷して邪見鬼が弱っている今こそがチャンスだ。
「『神化 炎槍』」
「『神化 精霊召喚 炎の精霊』」
「『極大化 炎槍』」
「『極大化 鬼火』」
「『フルバースト 真空断』」
「『武神昇天流 気弾』」
そうやって俺以外の全員の遠距離攻撃の準備が整ったのを見て、俺は合図する。
「やれ!」
「はい!」
俺の合図でみんなが一斉に魔法を放つ。
「むう。『鬼神流 仁王の術』」
それに対して邪見鬼は例の『仁王の術』で対抗する。
邪見鬼の防御は完璧みたいで、皆の攻撃を食らっても一見耐えているようにも見える。
だが、俺は見逃さない。
オリハルコンの塊と化している邪見鬼の体が徐々に変色し、赤くなっていることを。
多分オリハルコンが高熱に耐えかねて悲鳴をあげているのだと思う。
俺はこの隙を見逃さず攻撃する。
「『フルバースト 一点突破』」
全力を込めた必殺剣を邪見鬼が持つ金棒目掛けて突き刺す。
相手はオリハルコンの塊になっていて身動きが取れないので、もちろん俺の攻撃は見事に命中する。
そして……。
「やったぞ!」
俺は見事に『仁王の術』を突破し、邪見鬼の金棒を切断し、金棒を切断された邪見鬼の体がオリハルコンでなくなり、元に戻って行く。
さらに俺の攻撃は邪見鬼の鬼神鎧をも打ち砕き、邪見鬼を吹き飛ばし、天井へと叩きつける。
「ぐはああ」
天井に激突した邪見鬼はうめき声をあげながら落下し、地面に倒れ伏す。
俺達の総攻撃をまともに食らった邪見鬼は全身傷だらけで、頭や腕や腹、全身から血を流しながらうめき声をあげていた。
俺としてはこのまま死んでしまうのではないかと心配になったものだが、そこは鬼神王と呼ばれる奴である。
「あれ、少しずつ回復して行ってないか?」
ほんの少しではあるが傷が回復し始めていた。
鬼とはいえ本当に頑丈なやつではある。
ただ満身創痍な状態なのは間違いないので、邪見鬼はしばらく動けなかったが、そのうちに仰向けになると俺にこう言って来たのだった。
「参った!我の負けだ!」
こうして俺たちは邪見鬼を打ち倒したのだった。
★★★
「『海竜の徽章』はこの先の階段を降りたところにあります。それではお気をつけて」
戦闘終了後、邪見鬼はヴィクトリアの魔法で怪我を治してもらうと、「ありがとうございます」とお礼を言ってきて、俺達を『海竜の徽章』がある場所へと続く扉へと案内してくれたのだった。
こいつも赤丸たちと同じく潔く負けを認めるやつみたいで、負けた後はとてもさわやかな笑顔で俺たちを見送ってくれたのであった。
「それじゃあ、達者でな」
最後にそう挨拶をすると邪見鬼と別れて、扉を開けて下り階段を降り始める。
さて、これでこのダンジョンのラスボスも倒すことができた。
後は『海竜の徽章』を回収するのみだ。




