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閑話休題76~カエル公爵冒険記3 海神祭当日 ああ、私はこのまま天に召されてしまうのだろうか~

 ヒッポカンプ公爵である。

 今現在、私はセイレーン様の手によりカエルの姿にされている。


 そして、私は命の危機に立っている。

 というのも、愚民のガキ共が私を蛇の生餌にするとか言っているのだ。


 この王族であるヒッポカンプ公爵様を蛇の餌にするだと?

 ガキ共、ふざけるのもいい加減にしろよ!


 私はそう思い憤ったが、どうすることもできない。


 何せ今私はガラスのケージに閉じ込められて全く身動きが取れない状態なのだ。

 一応死なないように餌はくれているので今のところは生きているが、それだけの話で、このケージからは一歩も出ることはできない。


 しかも、である。


 私のケージが置かれているのは私を食う予定の蛇が入れられているケージの目の前なのだ。

 つまり私と問題の蛇の間を遮るものは薄い二枚のガラス板しかないのだ。


 これは非常に怖い状態だ。

 蛇の奴と私、それぞれを覆うガラス合計二枚が間にあるとはいえ、蛇のやつの姿がくっきりと見えてしまうからだ。


 その上、蛇のやつ、ときどき私のことを見てはその長い舌をペロペロと伸ばして舌なめずりしてやがる。

 この感じは完全に私のことを餌としてしか認識していないものと思われる。


 怖い。本当に怖い。

 このまま私はこいつの餌にされてしまうのだろうか。何とか助かる方法はないのだろうか。


 何とかこの状況から助かろうと、私は必死に考えるのだった。


★★★


 とうとう海神祭当日が来た。

 海神祭のお祭りの雰囲気にガキどもが喜び騒いでいる。


「屋台行って型抜きしようぜ!」

「ああ、いいぜ」

「兄ちゃん、あの大きなカエルはいつ蛇に食べさせるの?」

「それはお祭りの本番二日目だな」


 本日は海神祭の一日目。ガキどもの話を聞く限りでは私の命は明日までのようだった。

 これは今日中にどうにかせねば。


 私はここから脱出する決意を固めるのだった。


★★★


 その日の晩。ガキどもが寝静まった頃、私は脱出を試みた。


 実は私が入っているこのケージの蓋。空気の入れ替えのために一部が網戸になっているのだ。

 そして、このケージ自体相当ボロいので、その網戸も一部がほつれていて、頑張れば通れそうな感じだった。


 それを見込んで私はこの日のために力を蓄えていた。

 腹いっぱい餌を食べて、なるべくジッとして体力を温存していた。

 その上で、今日この日を待っていたのだ。


 今日の昼間、ガキどもは遊び歩いていたらしく疲れ果ててグーグー寝ている。

 これなら私が少々騒いだところでガキどもは起きないだろう。

 そう考えて今日まで待っていたのだった。


 さて、こんな感じで準備は整った。いざ脱出決行だ!


「ゲコゲコゲコ~~」


 私は網戸の隙間目掛けて思い切りジャンプするのだった。


★★★


 翌日の昼間。


「ゲコ~、ゲッコ~(ふう、助かった~)」


 私は町の通りの片隅の芝生の上でホッとしていた。


 あの後、私は網戸の隙間から何とか脱出することに成功したのだった。

 しかも、今は夏であり、ガキどもは涼むために部屋の窓を全開にしていたので、私は易々と部屋から逃げ出すことにも成功したのだった。

 ということで、命が助かったことに安心した私は通りの片隅の芝生に寝ころんでのんびりとしているのだった。


 ただ、私の安全安心な時間は長くは続かなかった。


「ヴィクトリア。お父様がトイレに行っている間に、先にそっちの芝生に座って食べちゃおうか。ホルスター君と銀ちゃんもおいで」

「「「は~い」」」


 そんな声が聞こえて来たかと思うと、突然私の上に影が差し、女の尻が現れたかと思うと、私はそのまま踏まれた。

 しかも、尻で思い切り押しつぶされるように踏まれたのであった。


「ゲコ~」


 踏まれた私はそうやってうめき声をあげたが、同時に私を踏んづけた女も、


「ギャ~、カエル~」


と、私を踏みつけたことに気がついたのか、慌てて立ち上がると、そんな風に悲鳴をあげる。

 あげく。


「ああ~ん。カエルにお尻触られちゃった~。もうお嫁に行けない!」


 とか、訳の分からないことを喚いていた。

 それを見て連れの女が喚いている女をなだめにかかる。


「セイレーンお姉ちゃん。何大袈裟なことを言っているのですか。たかがカエルを踏んづけたくらいで、一々お尻を触られたとか言わないでください!そういうのは好きでない男性に触られた時だけ言ってください!第一カエルがそんなよこしまな気持ちを持っているわけがないではないですか!このカエルがたまたまここにいて、たまたまお姉ちゃんが踏んづけただけですよ。……って、このカエルは?」


 私を見て何かに気がついたのか、連れの女は私をヒョイと掴み上げると、私のことを隅から隅まで眺めた上でこんなことを言い始めたのだった。


「セイレーンお姉ちゃん、大変です。このカエル、この前ワタクシたちに意地悪してきたヘッポコ公爵とか言う奴ではないですか」


 いや、私はヘッポコ公爵ではなくヒッポカンプ公爵なのだが。


 って、そんなことは今はどうでもいい!

 それよりもこの女何で私がただのカエルじゃないとわかったの!?


 それに今、こいつ、私を踏んづけた女のことをセイレーン……様とか言っていなかったか。

 そう言えば、この連れの女、よく見たらこの前の地上人共の一味だった女だ。


 ということは……まさか、この私を踏んづけた女は本物のセイレーン様?

 そう言えば、この女、前に下界に降りてきた時に見たセイレーン様そっくり、いやセイレーン様そのものだ。


 私がそんなことを考えていると、セイレーン様らしき女はこんなことを言い始めたのだった。


「ああ、そう言われれば、こいつ、前に私がカエルに変えてやった公爵ね。何でこんなところに居るのかしら?確かこいつって王宮の門の所に晒されていたはずなのに!……って、こいつがここにいて私のお尻に踏んづけられたということは、まさか本当に私のお尻に踏んづけられたくて、それを狙ってここにいたということなの?そういえば、このカエル、私に踏まれたのになんだか嬉しそうな顔をしているし……ヒイ~、本当おぞましいわ!」


 そう言うと、セイレーン様は本当に気持ち悪そうな顔をしながら私のことをチクチクと小枝でつつき始めた。

 どうやらセイレーン様は、私がセイレーン様のお尻を触ろうとしてここで待ち構えていたと誤解したらしかった。


 このまま誤解されたままでは絶対に酷いことになる!


「ゲコゲコ、ゲッコ~(違うんです!事故なんです!)」


 そう考えた私はそうやって必死に訴え誤解を解こうとしたが、セイレーン様は聞く耳を持たず。


「うるさい!あんたなんかこうしてやるんだから!」


 そう言いながらどこからともなく糸を取り出すと、それで私をグルグル巻きにして。


「ホルスター君に銀ちゃん。これはこのようにして遊ぶのよ!」

「「わ~い」」


 子供たちに私を渡すと、子供たちは水の入ったコップに逆さ吊りになった私を出し入れして楽しむという遊びを始めたのだった。


 ああ、そんな風に逆さ吊りの状態で激しく水に出し入れされると、いくらカエルでも息ができないの!

 く、苦しい!誰か助けてください!


★★★


「こんな汚らわしい汚物は元の場所へ戻しておきましょう」


 その後、十分にお仕置きされた私は、セイレーン様の手で元の王宮の水槽に戻されることになった。

 だが、元居た水槽に行ってみると。


「あれ、水槽の中には別のカエルがいますよ。しかもあのカエルはメスですよ」


 元居た水槽にはなぜか別のカエルがいて、しかもカエルの性別すら合っていない状態であった。


 あ!これ、私がいなくなったのに気がついた見張りの兵士が失態をごまかすために適当に似たようなカエルを入れやがったな!しかも、性別すら合っていないとは適当にも程がある!


 この状況からそれを悟った私は、兵士のいい加減さに怒りを覚えたが、セイレーン様は特に気にするでもなく。


「別にいいじゃない。どうせ人間の姿に戻れず一生カエルの姿のままで過ごすんだから。伴侶がいた方が寂しくないでしょ?」


 そう冷たい声で言いながら、私を水槽の中にポイと放り込むのだった。


 え?セイレーン様、一生カエルの姿のままってどういうことなのですか?それにこのメスガエルと伴侶って何ですか?もしかして、さっきの件で相当怒っていらっしゃるのですか?


 そう思った私はセイレーン様に必死に許しを乞う。


「ゲコゲコゲ、ゲッココ~(セイレーン様、どうかお許しください)」


 だが、この位でセイレーン様が許してくれるはずがなく。


「行くわよ」


 そう言うと、セイレーン様は私を放って、さっさとどこかへ行ってしまったのだった。

 後に残された私は、ただ呆然とするのみだった。


★★★


 その後、私に訪れた運命は過酷なものだった。

 水槽の中にいたメスガエルは私のことが気に入ったのか、「ゲコゲコ」と鳴きながら、24時間私にしがみつこうとしてくるのだった。


 人間であった頃は、何人妻を迎えてもその度に妻に逃げられていた私だったが、カエルになった途端メスガエルにモテるようになってしまった。


 だが、体はカエルでも心は人間である私にとってカエルにモテても嬉しくもなんともなく、正直気持ち悪いだけだった。


 しかし、私にはこのメスガエルを水槽から追い出すだけの力はない。

 だから、兵士がカエルが二匹いるのに気がついてこいつを追い出してくれるのに期待したりもしたが。


「あれ?いつの間にかカエルが二匹に増えているな。まあ、いいか。どうせ偉い人が見に来たりはしないし、万が一事情を聞かれても、カエルが寂しそうにしていたので仲間を入れておきましたと言っておけば誤魔化せるだろうし」


 そんな適当なことを言って、何もしてくれないのであった。

 そして、本格的に手の打ちようがなくなった私は、毎日メスガエルに迫られるという地獄のような日々を送ることになったのであった。


 ああ、本当誰か何とかして!

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