第507話~大海溝の遺跡 地下二階極寒地獄風ダンジョン うう~、ワタクシは寒いのが苦手です!~
「さ、寒い!」
『大海溝の遺跡』、地下二階針山地獄風ダンジョンを抜けてホッとしたのも束の間。
地下三階へと侵入した俺たちを待ち受けていたのは極寒地獄だった。
氷点下の寒さの中、さらに猛吹雪まで襲い掛かって来る。
そんな寒さに満ち溢れた場所だった。
「どうだね。『大海溝の遺跡』名物『極寒地獄風ダンジョン』は?よい感じの寒さだろう?」
俺達が寒そうにしているのを見たおじいさんが俺にここの感想を聞いてくるが、寒さでそんな質問に答えている余裕がない俺は、おじいさんを華麗にスルーして、ヴィクトリアに指示を出す。
「ヴィクトリア、すぐに防寒具を出せ!」
「ラジャーです!」
★★★
ヴィクトリアです。
ううう、とっても寒いです。
一応ホルストさんの指示でありったけの防寒着を出して着込んだので先程よりはだいぶマシなのですが、それでも寒いことに変わりはありません。
寒いところが嫌いで、寒いところだとすぐに布団にくるまって眠りたくなるワタクシとしては本当に辛い状況です。
うううう。おじい様にセイレーン叔母様。何てダンジョンを造ってくれたのでしょうか。
恨みますよ!
そう思いながら二人のことを睨んでやろうと思って見ると。
「あれ?」
おじい様はともかくセイレーンお姉ちゃんが寒そうに震えています。
一応二人にも防寒具は貸し出したはずなのですが、それでもセイレーンお姉ちゃんは震えています。あげく。
「ううううう。極寒地獄風ダンジョンって、何でこんなに寒いのかしら。辛いわあ」
と、泣き言を言っています。
そう言えばこの人も、ワタクシ同様、寒いのが苦手でした。
自分で造ったダンジョンで自分が苦しむ羽目になる。
策士、策に溺れるとはまさにこのことです。
そう考えるとちょっとだけスッキリしましたが、寒いことに変わりはありません。
この寒さ、本当にどうにかならないのでしょうか?
★★★
ワタクシがそんな風に悩んでいると、ホルストさんが手を考えてくれました。
「ヴィクトリア、風の精霊を出せないか?」
「できますけれど、どうするのですか?」
「俺が『天火』の魔法で周囲の空気を暖めるから、風の精霊を使って暖めた空気が他に行かないようにしろ」
「あ、なるほど。それはいい考えですね。では、早速……『精霊召喚 風の精霊』」
ワタクシはホルストさんの指示に従ってすぐさま風の精霊を召喚しました。
そして、作戦通りホルストさんが『天火』の魔法を使い周囲の空気を暖めて、ワタクシが風の精霊に命令して、暖まった空気をワタクシたちの周囲に留めました。
「あ、これは暖かくてよいですね」
「生き返るね」
「気持ち良いです」
「何だか眠くなってきたわね」
これは好評だったようで、皆さん思わず歩くのを止め、幸せそうな顔でしばらく暖かさを楽しんでいたくらいです。
というか、セイレーンお姉ちゃん!こんな所で寝ようとしないでください!
こんな寒い所で寝たら、女神なので死なないとは思いますが、氷漬けになって大変なことになっても知らないですからね!
と、こんな感じで何とか暖を取りつつ、ワタクシたちは先へと進むのでした。
★★★
この極寒地獄風ダンジョンにも魔物は生息しています。
偵察に放っていた土の精霊からワタクシに報告が入ります。
「え?魔物がこの先に?それは大変ですね」
どうやらこの先で魔物が待ち伏せしているようです。
ワタクシはすぐさまホルストさんに報告しました。
「ホルストさん!土の精霊からの報告です!この先で魔物が待ち伏せているようです!」
「何!それは本当か?」
「はい!」
「それじゃあ、皆すぐに戦闘準備だ!」
こうしてホルストさんの指示でワタクシたちはすぐに戦闘準備を完了し、戦いに備えるのでした。
★★★
「敵はブルードラゴンが一匹に氷の邪精霊と雪男が多数の混成部隊か」
こちらに迫ってくる魔物の集団を見て、ホルストさんが敵の編成を確認します。
ホルストさんが言う通り、敵はブルードラゴンと氷の邪精霊、雪男の部隊でした。
ブルードラゴンは青色のドラゴンで氷のブレス攻撃が得意なドラゴンです。
氷の邪精霊は灼熱地獄風ダンジョンにいた炎の邪精霊の氷版の魔物です。
雪男は白い毛皮で覆われた大男の魔物で、力が強いことで知られています。
敵の編成を確認したホルストさんが指示を出します。
「ブルードラゴンは俺が倒す!ヴィクトリアは炎の精霊に命令して俺を援護させろ!」
「ラジャーです!」
「リネットとネイアは武器にエリカに炎属性を付与してもらってから雪男の相手を!エリカ、ホルスター、銀は氷の邪精霊を片付けろ!」
「はい!」
そうやってホルストさんの指示を受けたワタクシたちは動き出します。
★★★
「『極大化 炎嵐』」
「『極大化 炎嵐』」
「『極大化 鬼火』」
ホルストさんの指示を受けて、まずエリカさんたちが攻撃を開始します。
三人が放った炎はすさまじい勢いで、あっという間に氷の邪精霊の群れを炎の柱で包囲してしまいます。
「ギャッ」
炎で包囲された氷の邪精霊たちは短い悲鳴を残すと、次々に蒸発して行きます。
「行くよ!ネイアちゃん!」
「はい!リネットさん!」
エリカさんたちに続いて李根と酸とネイアさんが雪男に突撃して行きます。
雪男は力が強く凶暴な魔物です。
その力は脅威ですが、逆に言えばそれだけの魔物です。
ワタクシのお兄様に鍛えられている二人の神速ともいえる動きについてこられるはずがありません。
「『真空断』」
『『武神昇天流 連武撃』」
「グオッ!?」
二人の猛攻を受けて次々に地面に倒れ伏していきます。
「よし!今だ!行くぞ、ヴィクトリア!」
「ラジャーです!」
そうやって皆が作ってくれた隙を突いてワタクシとホルストさんがブルードラゴンへ向かって突撃します。
★★★
「『極大化 精霊召喚 炎の精霊』」
ブルードラゴンに近づきながらワタクシは炎の精霊を召喚しました。
「ブオオオオ」
その時ちょうどブルードラゴンが氷のブレスを吐いてきました。
かなりの勢いのブレスです。このまま食らってしまったらワタクシたちも氷漬けにされてしまうかもしれません。
しかし。
「……」
すぐにワタクシが召喚した炎の精霊が対応し、炎の壁を作りだしてブレスを防いでくれます。
それどころか。
「……」
たくさんの炎弾を作り出し、ブルードラゴンに攻撃します。
『極大化』を使って召喚されたワタクシの炎の精霊の攻撃は強力です。
「ギャオオオオン!!」
炎の精霊の攻撃を受けたブルードラゴンは、攻撃が相当こたえたのか、泣き叫ぶような大声をあげ、体をのけぞらせます。
その間隙を縫ってホルストさんがブルードラゴンに攻撃を仕掛けます。
「『フルバースト 究極十字斬』」
ホルストさんの攻撃はまっすぐブルードラゴンに向かって行き、スパッとブルードラゴンの首を切り落としてしまいました。
「ギャン!」
最後に短い断末魔の叫びを残してブルードラゴンは散りました。
その後、後方を振り向いて皆の方を見ると、皆がちょうど残りの魔物の群れを退治してしまったところでした。
どうやらワタクシたちは勝利したようです。
★★★
魔物の群れをせん滅してしばらく進むとまた扉が現れた。
多分ここが地下三階のボス部屋だと思う。
なぜそれが分かるのかって?
だってここの扉にも地下一階と同じように鬼のマークが書かれているから。
だからボス部屋で間違いない。
ということで、中へと進むことにする。
「さあ、行くぞ!」
そうやって仲間へ声をかけ、中へ入って行った俺たちを待ち構えていたのは……。




