第505話~大海溝の遺跡 地下二階針山地獄風ダンジョン ここは一筋縄では行かないダンジョンだね~
赤丸を見事降参させた俺たちは地下二階へと進んだ。
「うわー!涼しいです!ホルストさんもそう思いませんか?」
「そうだな。涼しいな」
地下二階へ出た途端ヴィクトリアが顔を緩ませて嬉しそうな顔になる。
まあ地下一階は灼熱地獄風ダンジョンで本当に熱かったからな。
ここは地下一階と比べると圧倒的に過ごしやすく、快適だった。
この分ならこの階層は簡単に突破できるかな?
一瞬そう思ったりもしたが、ここはセイレーンとおじいさんが作り上げた地獄風ダンジョン。
そうそう簡単であるわけがないのだった。
★★★
リネットだ。
『大海溝の遺跡』の地下二階へ来たアタシたちは悪戦苦闘していた。
この階層に来た最初は暑さから解放されてラッキーと思ったりもしたが、ここはセイレーン様とヴィクトリアちゃんのおじいちゃんが造ったダンジョン。
そんなに簡単ではなかった。
というのも、ここの地面はそこら中に石や鉄でできた針の山が生えてきており、それらをうまく避けて行くのが難しく四苦八苦している。
「ほほほ、どうだね。私とセイレーンが造ったこの『針山地獄風ダンジョン』は?」
ヴィクトリアちゃんのおじいちゃんがアタシたちが苦労しているのを見て、作り甲斐があったという顔でいる。
ヴィクトリアちゃんのおじいちゃん的には折角造ったダンジョンが有効に機能していてやった感を感じているのかもしれなけれど、このダンジョンはちょっとひどくない?
針がそこら中から生えていて危ないじゃない。
針をよけ損ねて転んで怪我でもしたら大変だよ。
そう思ったのか、ホルスト君も。
「ほら、ホルスターと銀は危ないから俺の肩に乗りな」
「うん、パパ」
「ホルスト様、ありがとうございます」
そうやってホルスター君と銀ちゃんの二人を自分の肩に乗せて、二人の安全を確保しているしね。
こういう時ホルスト君って本当に頼りになるよね。
今回はホルスター君たちがいるからそっちを優先したけれど、いなかったら絶対にアタシたちの安全を確保しようと動いてくれただろうからね。
もしかして、お姫様抱っこしてくれたりなんかして……キャッ。
やっぱり男性ってホルスト君のような頼りがいのある人が一番だよね。
本当、今回のことでまた惚れ直しちゃいそうだよ。
と、ホルスト君が二人を肩車しているのを見て、そんなことを思うアタシなのでした。
★★★
それはともかく、アタシたちはこの針山地獄風ダンジョンを安全に行く方法はないかと考えたんだ。
すると、ネイアちゃんがあることを思い出したんだ。
「そういえば、前に石だらけの危険な岩石地帯を歩くときのために、アダマンタイト製のすね当を買いましたよね?あれを使いませんか?」
そのネイアちゃんの言葉を聞いたアタシたちは、そう言えばそんなものを買ったな、と思い出したのだった。
すね当は鎧の足の部分のパーツの名称だ。
かなり頑丈なものなので、靴代わりに使えば岩石地帯を安全に歩くことができると思って買っていたのだった。
しかもアタシたちが買ったのはアダマンタイト製である。
これを履いておけば、石の針だろうが鉄の針だろうが踏んづけても安全だと思う。
「ヴィクトリア」
「ラジャーです!」
で、早速ホルスト君がヴィクトリアちゃんに行って人数分すね当を出してもらい、それをみんなで履いた。
履いた上で実験としてホルスト君が鉄の針を踏んでみると。
「これなら、大丈夫そうだな」
アダマンタイト製のすね当に踏まれた鉄の針は根元からポキリと折れて、その役目を果たせなくなるのでした。
こうしてこの階層を安全に進む手段を手に入れたアタシたちは前進を再開したのでした。
★★★
この階層の敵は石と鉄でできた魔物ばかりだった。
こういう無機物でできた魔物って、正直戦うのがめんどくさいんだよね。
なんでかって?
こういう奴らって、ゴーレムと同じように大抵体の中に核を持っていて、それを壊さない限りいくら体を破壊しても倒せないんだ。
だから、核を探知して破壊しなくちゃならないんで普通の魔物より面倒くさいんだよ。
え?核があるということは、こいつらもゴーレムの一種じゃないのかって?
それが違うのよね。
というのも、ゴーレムは誰かが造り出した人工的な魔物であるのに対して、こいつらは自然界にある魔石に魔力が溜まりそこに石などがくっついて行って自然に発生した魔物だから。
でも、面倒くさいからと言って避けて通ることはできない。
「ホルスト君、行こうか」
「そうだな。行くか!」
ということで、確実にこいつらの核を破壊して行動不能にするため、アタシはホルスト君と二人、突撃して行くのでした。
★★★
魔物の討伐は順調に行った。
今回、アタシは斧ではなくサブウェポンのアダマンタイト製の槍で戦っている。
魔物の核を貫くには槍の方が便利だからだ。
「『閃光雷撃突き』!」
そうやって槍でどんどん核を破壊して行って、魔物たちを始末して行く。
「『一点突破』!」
ホルスト君もアタシの横で同じような感じで魔物たちの核を破壊して行っている。
良い感じだと思う。
ただ、ここの魔物は数が少し多い。
「グガアアア」
「ちっ!一匹魔物を倒したと思ったら、すぐに次の魔物が現れやがる!」
「本当だね。どうなっているんだろうね1」
目の前の魔物を倒してもそうやって次の魔物がすぐに出てきたのだ。
倒しても倒しても湧いて出てくる感じだ。
まるで、誰かが次々に魔物を生み出しているかのように!
それはアタシだけでなくホルスト君も感じたようで、何と言うか不審そうな顔をしている。
そんなアタシたちを見て、ヴィクトリアちゃんのおじいちゃんが声をかけてきてこう言うのだった。
「どうだ。そんな風にいつまでも目の前に現れる敵を倒しているだけでは埒が明かないぞ。真の敵を倒さなければな!」
★★★
真の敵を倒せ。
戦闘中ヴィクトリアのおじいさんがそんなことを言って来た。
どういうことだ?
そう思った俺はおじいさんに聞き返した。
「ヴィクトリアのおじいさん。それはどういう意味ですか?」
「そのままの意味だ。この階層は『力の試練』の場。その課題をクリアしない限り、いつまでも魔物は出現し続け、この地下二階から抜け出すことはできない。そういうことだ」
なるほど、これがさっき言っていた試練か。
しかも『力の試練』とか、よく分からないが難しそうだ。
そう思った俺は妙にやる気が出て、剣を握る手に力を込めるのであった。




