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第500話~大海溝の高水圧と巨大な魔物との戦い~

 大海溝への船旅は順調だった。


 大海溝はトリトンの町からはるか南。大岩石地帯という場所にあるらしいのでそこへ向けて潜水艇ノーチラス号を走らせている。


 潜水艇の操縦は交代で行っている。

 今艦橋にいるのは俺とリネットとネイアの三人だ。


 他のメンバーは後部の休憩スペースにいる。


「あ、これで僕の勝ちだよ。セイレーンお姉ちゃん」

「あら、お姉ちゃん負けちゃったわ。ホルスター君、強いわね」


 休憩スペースではこの前の『機械魚水泳大会』で手に入れたボードゲームでみんなで遊んでいるみたいで、そんな声が漏れ聞こえてきた。

 楽しそうで何よりである。


 俺としてはすぐにでも向こうに合流したい気分だったが、今は仕事中なので我慢だ。

 リネットとネイアの三人で仕事に熱中する。

 仕事は割と忙しかった。


「ホルストさん、この辺は少し水深が浅くなっているようですね。万が一のことを考えて少し上の方へ移動しますか?」

「そうだな。う~ん、リネットはどう思う?」

「アタシも少し上へ移動した方がいいと思うよ。そっちの方が激しい海流と遭遇した時に対応しやすいからね」

「それじゃあ、そうするか。ネイア、艦首を上へ向けてくれ」

「はい」


 そんな風に俺が細かく指示を出しながら、一生懸命に操艦している。


 なぜこんなに忙しいかというと、この辺りって時折強い海流が流れてくることがあって、それにぶつかると潜水艇が激しく揺れるんだよね。

 だからそういう事態に備えて操艦にも神経を使うんだよ。


 ということで、俺たち忙しい訳なのだが、それでもホッとする時間はある。


「ホルストさんたち、お食事の時間ですよ~」


 俺達が頑張って操縦していると、ヴィクトリアがそうやって昼ご飯を運んで来てくれた。

 今日の弁当は海神祭の時に買った仕出し弁当だった。

 あの時の弁当、屋台に買い食いに言っていたヴィクトリアたちの分の他にも大海溝へと向かう旅の途中で食べる分も買って、ヴィクトリアに保存してもらっていたのだった。


 屋台に行ったヴィクトリアたちの分は海神祭が終わって迎賓館に帰った後、ヴィクトリアとセイレーンの二人が貪り食っていた。

 昼間屋台でたらふく食った上に、海神祭のフィナーレのスープまで飲んだくせによく食えるなと思っていたのだが。


「大丈夫です!おいしい物は別腹ですので!」

「私も問題ないわ。だって折角のお祭りだもの。張り切って食べなきゃね」


 と、二人共、食い過ぎていると全く思っていない様子であった。


 言っておくけど気分が悪くなっても俺は知らないからな。

 そう思いつつも本当に二人の気分が悪くならないか心配する俺なのであったが、その後別に気分が悪くなった様子はなかったので、無用な心配だったみたいだ。


 ちなみにホルスターと銀、ヴィクトリアのおじいさんはさすがにお腹がいっぱいだったのか、三人はこの時は食べずに翌日お腹が空いた時に食べていた。

 こっちの方が正常な反応だと思うので、一応気を付けた方がいいと思うぞ。


 そんなことを思い出しつつ、俺たちはヴィクトリアが持ってきてくれた仕出し弁当を食べる。


「うまい!」

「やっぱり、この弁当は美味しいね」

「これを食べると一気に疲れが取れる気がしますね」


 弁当を口に入れた瞬間、俺たち三人がそうやって弁当を褒め称える。

 さすがに仕出し弁当はおいしかった。少し前に食べたばかりなのにそれでもおいしいと感じるということは、この弁当の味は本物だということなのだろう。


「それでは、ワタクシは休憩室へ戻りますね。ラララ~」


 俺達に弁当を渡したヴィクトリアが、自分の分の弁当を食べに戻る時に物凄く笑顔で鼻歌を歌っていたので、こいつも俺たちと同じ思いなのだと思う。


 さて、うまい弁当を食べたことだし、大海溝まで頑張って航海して行こうと思う。


★★★


 それから五日後、大海溝へ到着した。


「うわー、物凄い断崖絶壁が海の底へと続いていますね。底が全然見えなくて、見ているだけで怖くなりますね」


 潜水艇の窓から大海溝を覗き見たヴィクトリアがそんなセリフを吐いて、大海溝のことを怖がっている。


 ヴィクトリアの気持ちはよく分かる。

 俺も大海溝の底へと続く闇を見ているだけでなんとなく暗い気分になってしまったからだ。


 何と言うか、大海溝の中は本当に真っ暗で何も見えなくて、だから何が潜んでいるか分からなくて本当に気味が悪いのだ。

 闇を恐れる人間の本能とでも言うのだろうか。

 ここの闇を見ているとそういう気分になってしまうのだ。


 それは俺の嫁や子供たちも同じようで。


「あの暗闇。生理的に受け付けないですね」


 とか言っちゃってるし。


 ともあれ、神命を果たすためにもここで立ち止まっているわけにもいかない。


「いつまでもぐずぐずしていないで、先へ進むぞ!」


 俺はそう宣言すると、ノーチラス号を大海溝へ向けて進ませるのだった。


★★★


 大海溝へは順調に潜って行けた。


「旦那様、計器に異常はありません」

「操舵悍もちゃんと動かせているよ」

「タンクも正常に動作しています」

「ワタクシが外の警戒に出している水の精霊も、外から見て潜水艇に異常なしと報告してきています」


 嫁たちから上がってくる報告にも特に異常はないようだった。

 心配していた水圧の影響もほとんどないようだったので正直安心した。

 まあ、大海溝へ入る前に『海の主』を呼び出して、『海竜の加護』を入念に書けてもらったからな。

 そのおかげでこうして無事なのだと思う。


 こうして少し落ち着いたところで、俺はセイレーンに大海溝の底にあるものついて聞く。


「それで、セイレーン様。この大海溝の底には何があるのですか?」

「遺跡よ。ここの底にはね『大海溝の遺跡』と呼ばれる遺跡があるのよ」

「『大海溝の遺跡』ですか?それでそこに『海竜の徽章』もあると?」

「ええ、あるわね」

「それで、底へはどのくらいで到着しますか?」

「このまま順調にいけば三時間てところかしら」


 三時間か。結構長いな。

 今分速五十メートルほどの速度で潜っているので、三時間ほど潜り続けたら深度一万メートル近い深さまで潜ってしまうことになる。

 かなり大変な作業である。


 というか、普通の人間が無事にこんな場所まで来られるはずがない。

 前にヴィクトリアのおじいさんが海底の封印のことを自慢するようにいたが、ここへ来てその意味がようやく分かった気がした。

 確かにここ難攻不落だわ。


 そう改めて実感するのだった。


★★★


 そうやってしばらくは順調に潜れていたのだが、潜り始めてから一時間ほどして、外の監視の任に就いていたヴィクトリアから突如警告のメッセージが発せられた。


「ホルストさん、水の精霊から報告です!こっちに近づいてくる存在があります!」

「こっちに近づいて来ている?それはどんな存在だ?」

「水の精霊の報告では、相手はとても巨大な縦長の生物で、顔はどことなくドラゴンに似ているそうです」


 ドラゴンに似ている巨大生物?それってドラゴンじゃあ……。

 俺がそう思い言葉を発しようとした時、セイレーンが割り込んできてこう言うのだった。


「やっぱり現れたわね。『大海溝の王者 巨大タツノオトシゴ』」


 巨大タツノオトシゴ。


 それが俺たちの前に立ち塞がる敵の名前の様だった。

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