第499話~セイレーンの自慢話 そして、『大海溝』へ~
海神祭が終わったのでいよいよ『大海溝』へ向けて出発することにする。
とりあえず出発のための買い出しに出掛けることにする。
町の商業街へと出かけ、必要な物を買うことにする。
「旦那様、私はネイアさんと二人で食料の買い出しに行ってまいります」
「ホルストさん、そういう事ですので」
「ああ、俺はポーションとか油とかこまごまとしたものを買って来るよ」
「すみません。雷属性が付与した矢をください」
「あいよ!」
そんな感じで俺とエリカとリネット、ネイアで分担して買い物をしている。
この前の亀の甲羅の件で商業組合の全面的な協力を得ているため、かなり質の良いものが手に入るので、俺としては満足である。
「銀ちゃん。ワタクシたちはおやつの購入の担当ですよ。張り切って行きましょう!」
「はい!ヴィクトリア様」
「いいわね。じゃんじゃん買いましょう。銀ちゃんも遠慮せずに好きなものを買うのよ」
「はい!セイレーン様」
俺達が物資の調達をしている一方で、ヴィクトリアとセイレーンはおやつの調達をしていた。
ヴィクトリアとセイレーンにはヴィクトリアのおじいさんが、銀にはホルスターがくっついて行っているので、合計五人でおやつを買いに行っていることになる。
おやつを買うのにそんな人数はいらないだろうと思うが、俺たちの中ではいつの間にかヴィクトリアがおやつ担当になっているので他の嫁たちは文句を言わない。
それにヴィクトリアが子供たちの面倒を見てくれているし、ついでに邪魔なセイレーンとおじいさんもついて行っているので、他のメンバーは買い物に専念できるので好都合なのだった。
そんな感じで分担して買い物を効率よくできたので、午前中だけで予定の買い物は終わってしまった。
★★★
買い物が終わった後は少し町の見物をして帰ることにした。
「『海底王国歴史館』。ここだな」
俺達は『海底王国歴史館』という施設に行った。
ここは海底王国の歴史を見て回れるという場所で、歴史的文化的に価値のある資料が展示されているという話だった。
セイレーンのやつが、「ここってこの国の歴史を知るには良い場所なの。私が案内してあげるから、行ってみない?」と、変に行きたがったのでやって来たのだった。
ということで、早速中の見物をしようとしたのだが。
「ねえ、ホルストさん。お腹が空いたので先に何か食べましょうよ」
そうヴィクトリアが主張するので、先に歴史館に併設されている喫茶店で食事をすることにする。
喫茶店にはそこまで凝ったメニューはなかった。
サンドイッチなどの軽食、飲み物、デザートなど簡単なメニューだけである。
とはいえ、差し当たってお腹を満たすには十分なので注文して食べることにする。
「サンドイッチと魚肉ソーセージのセットを7つとお子様セットを2つください」
「畏まりました」
そうやって注文してからしばらくすると。
「お、来たか」
注文した料理が到着した。早速食べてみると。
「おお、思ったよりもうまいな」
公共施設に付属の店の料理だったからそこまで期待していなかったのに意外においしかったのでびっくりした。
特に魚肉ソーセージがおいしく。
「あら、この魚肉ソーセージ、味が濃縮された感じでとても濃いですね。お酒のつまみにとても合いそうです」
と、お酒好きのエリカが特に気に入ったらしく。
「すみません。このソーセージってお土産用に売っていたりはしないのですか」
「ありますよ。レジカウンターのお土産コーナーに置いています」
そうやって店員に確認した上で、清算時に大量に買う始末だった。
一方でヴィクトリアとセイレーンはデザートの海藻から作ったというお団子が気に入ったらしく。
「これ、おいしいですね」
「こっれてお土産に売っていないの?」
「こちらもレジカウンターに置いてありますよ」
と、こちらも店員さんに確認した上で清算の時に買い込んでいた。
というか、聞く話によるとお前たち二人さっきおやつを買いに行くついでに散々つまみ食いしていたらしいじゃないか。
それなのに、まだここでお菓子を買うというのか?いい加減にしておけよ。
俺は執念深くお菓子を買うヴィクトリアとセイレーンを見てそう思ったが、口に出すと後で怖い気がしたので、何も言わずにこの場は見守ることにしたのであった。
★★★
食事の後は歴史館の中を見物した。
歴史館の展示物には海底王国ができる前の時代から始まり、現代にいたるまでの歴史的な品々がもれなくという感じで揃っていた。
地上人の俺たちが見たことがないような海底独特の品物も多かった。
それで、それらについてセイレーンが全部説明してくれる。
「セイレーン様、こっちの魚の形をした人形は何に使う物なのですか?」
「それは海底の人たちが亡くなった時に一緒にお墓に入れていたものね。死者があの世でも食べ物に困りませんようにって、願いを込めてなくなった日と一緒にお墓に入れるのよ」
「セイレーンお姉ちゃん。こちらの物凄く形の揃った貝殻は何ですか。形が揃い過ぎていて気持ち悪いくらいなんですが」
「その貝殻はお金として使っていたものよ。貝の形をそろえるために子供の貝を一定の形のコンクリートの型に入れて、その型に沿って大きくなるように育てるのよ。まあ、かなり大変な作業だからすぐに廃れちゃったんだけどね」
こんな感じで妙に詳しく説明してくれるのだった。
本当に歴史学者並みに詳しいのだ。
この辺りはさすがは海神様の面目躍如と言ったところなのだろうと思う。
それはそれとして、この歴史館という場所、妙にセイレーンに関する展示が多いんだよな。
「セイレーン様、そっちの海底王国の成立の前の時代の壁画に書かれているのって……」
「ああ、これね。これは私を描いた壁画ね。ちょっと技術がつたない感じがするけれど、中々良い感じに描けているでしょう?」
「もしかして、こっちの海底王国初期の女性の銅像も?」
「これも私を模したものね。結構美人さんな感じにできているから、良いでしょ?」
「……そうですね」
その上、セイレーンに関する展示物について質問すると、そうやって嬉しそうに自慢してくるのだった。
そのセイレーンの笑顔は、初めて描いた絵を親に褒められる子供のように無邪気なものだった。
そんなセイレーンの笑顔を見て俺は思うのだった。
あれ?もしかして、こいつ自分がこの国で崇めたれられているのを自慢したくて、俺達をここへ連れて来た、とか?
まさかとは思うが、ありえない話ではない。
こいつ前も俺たちを神殿に連れて行って自分の巨大な神像を自慢していたからな。
いや、こいつヴィクトリアと一緒で調子に乗りやすいところがあるから、きっとそうに違いなかった。
まあ、それでもいいけどね。
半分セイレーンの自慢話が入っているとはいえ、セイレーンの説明はわかりやすくてそれなりに楽しかったしね。
こんな感じで、俺たちは順調に準備を進めて行ったのだった。
★★★
そして、買い出しの日から二日後。
「さて、それでは『大海溝』へ向けて出発するぞ!」
「「「「はい」」」」
俺達は自分たちの潜水艇ノーチラス号へと乗り込み、大海溝へと向けてトリトンの町を離れるのだった。




