表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/741

第29話~夫婦温泉物語~

「これで全員ですか」

「はい、お願いします」


 次の『ヒートンの町』に着いた俺たちは、まず警備隊の詰め所に行き、盗賊たちを引き渡し、捕まっていた人々を保護してもらった。

 捕まっていた人々は安全地帯までこれたことで一様に安堵の表情を浮かべていた。


「本当によかったです」


 それを見て感極まったヴィクトリアが涙を流しているのがすごく印象的だった。

 こいつもこんな顔をするんだなと感心してしまった。


 盗賊?

 これからのことを思ってか皆絶望の表情を浮かべていたよ。


 まあ、自業自得だから知ったことではないね。

 王国の法律では盗賊は火あぶりの刑だったはずだから、まあそうなるんじゃないのという感じだ。それ以上の興味はわかなかったね。


 そして、警備隊での用事を終えた俺たちは、そのままの足で町のギルドに来ていた。


「まさか、盗賊から分捕った財貨を全額被害にあった人たちに返して欲しいと依頼するなんて。さすがSランク冒険者ともなるとやることが違いますね」

「いえ、それほどでも」


 ギルドの男性職員にそう言われた俺は、照れくさくなって頭をかいた。

 盗賊を討伐して得た財貨は王国の法律では討伐した者の財産となるように定められている。

 なぜなら、そうでもしないと危険な盗賊退治など誰も引き受けないからだ。


 だが、今回俺たちはその権利を放棄した。


 というのも、ここへの道中、捕まっていた人たちの話を聞く機会があったのだが、それによると盗賊団は相当悪辣な奴らだったらしく、周囲の町や村、商人たちはかなりの被害を受けたようなのだ。


「ホルストさん、ここは盗賊から奪い取ったお宝を被害を受けた人たちに返して、少しでも助けてあげましょう」

「旦那様、私もヴィクトリアさんの意見に賛成です。失った命は二度と戻ってきませんし、この程度の財宝では被害を受けた人たちの損害には到底足りません。ですが、それでも、ほんの少しでも被害受けた方々の助けになるのならばそうすべきです」

「アタシも二人に賛成だ。ホルスト君。君はSランク冒険者だ。ならば、世間のために貢献するのも仕事の一つだ。盗賊の財宝なんか処分して、被害者の救済に当てるべきだ」


 被害者の話を聞いた女性3人衆は口々にそう主張した。


 それを聞いた俺はもっともだと思ったので、こうしてギルドに来て財宝を換金して被害者に分配するように頼んだのだ。


 俺はどちらかというと自分を金に汚い人間だと思っているが、今回は財宝を惜しいとは思わなかった。

 それよりも困っている人を助けたいと思った。


 さて、用事も終わったのでギルドを出ることにした。


「ちょっと、ホルストさん、待ってください」

「まだ、何か?」


 ギルドを出ようとした俺に職員さんが声をかけてきた。

「今回ホルストさんが討伐した盗賊団なんですが、賞金がかかっておりまして、事後依頼ということで報酬が出せるのですが」

「そうですか。そういうことでしたら、報酬はいただきましょう」


 俺は報酬を受け取ることにした。


 なぜなら、盗賊の財宝は放棄してもいいが、逆に報酬の方は受け取らなければならないとリネットさんに事前にアドバイスを受けていたからだ。


 というのも、ギルドの依頼が出ているのに報酬を受け取らない人がいると、そういう人が現れるのを期待して、依頼の報酬がだんだん少なくなったり、出す人がいなくなったりするのだそうだ。

 そうなると、将来的に冒険者の生活が成り立たなくなってしまう可能性がある。


 だから、俺は遠慮なく報酬を受け取ることにした。


 俺の返答を聞いて職員さんはニンマリとした。


「さすが、よくわかっていらっしゃる。もしかしたら受け取ってくれないかとひやひやしていました」

「そんなわけないじゃないですか。俺も女房抱えて大変なんですよ」

「ははは、それは羨ましいことです。では、手続きをしてまいります」


 職員さんはそう言うとすぐに手続きをしてくれた。


「さて、じゃあ、今日はちょっと早いけど、宿屋で休むぞ」

「はい」


 報酬を受け取った俺たちは宿屋に向かった。


★★★


「町長?」


 宿屋で宿泊の手続きをしていると、『ヒートンの町』の町長が訪ねてきた。


「初めまして、町長のヘルマンと申します」

「どうも、ホルストです」


 宿屋のレストランの個室で俺は町長と会った。

 町長はがっしりとした体格の初老の人で、物腰の柔らかい優しそうな人だった。


「それで、どういったご用件ですか」

「お礼を言いに来たのです。実はホルスト殿に助けてもらった娘の中に、私のいとこの娘がおりまして。それで、あの子は心に受けた傷がひどくてしばらく外出できるような状態ではありませんので、私が代わりにお礼を言いに来た次第でして。どうもありがとうございました」

「いえ、大したことはしていませんよ」


 俺は町長が訪ねてきたと聞いてちょっとだけ警戒していたが、話を聞いて警戒を解いた。


「いえいえ、ご謙遜なさらないでください。ギルドで聞いた話によると、捕まっていた人を助けていただいたばかりか、盗賊の財宝の権利も放棄なされて、人々の被害救済のために寄付してくださるとか。本当に頭の下がる思いです」


 町長は頭を下げた。

 町長なんて偉い人に頭を下げられた俺はすっかり恐縮してしまって、口ごもった。


「それで、是非にお礼をしたいと思うのですが」


 俺が黙っていると、突然町長がそんなことを言い出した。


★★★


「広いお風呂ですね。旦那様」

「ああ、そうだな」


 私がお風呂を見てそうつぶやくと、愛しの旦那様はそう答えました。


 そして、私達は湯船にゆっくりとつかると、


「うーん」


と、背筋を伸ばしました。


 今、私たちのパーティーは町一番のホテルに来ています。


 というのも、町長さんが私たちのためにこのホテルを貸し切りにしてくれたからです。

 しかも、宿泊しているのはロイヤルスイートです。

 そんなところにタダで泊めてくれるというのですから、町長さん太っ腹です。


 一応最初のうちは断ろうとしたのですが、


「今、件の盗賊団のせいで宿泊客がいなくて閑古鳥が鳴いていたのですよ。そこで、どうせ客がいないのなら盗賊団を退治していただいたみなさんに泊まっていただきたいのです。その方が温泉も喜びます。それにギルドで聞くところによると、皆様方は北部砦を魔物から救った英雄だそうで。そんな方に泊まっていただければホテルの方に箔がつくというものです。だから、ぜひ泊まっていってください」


と、町長さんがおっしゃるので、私たちも泊まることにしたわけです。


 それで、今私と旦那様がいるのはホテルの名物『天然温泉大露天風呂』です。しかも混浴風呂です。


 もちろん、貸し切りなので私達夫婦以外誰もいません。

 当然ですが、ヴィクトリアさんとリネットさんには女湯に行ってもらいました。


 夫婦二人でお風呂に入るのは、本当に久しぶりです。

 家だともう一人いるのでなかなか難しいものですから。


 なので、今日は旦那様に思い切り甘えちゃうつもりです。

 ということで早速攻撃開始です。


 まずは、定番のあれからです。


「えいっ」


 手で水鉄砲を作って、旦那様の顔にお湯をかけてみました。


ピチャリ。


 お湯は見事に旦那様の顔に命中しました。


「あっ、やったな。えいっ」


 旦那様も負けじと私にお湯を飛ばしてきます。


「負けませんよ」


 その後しばらくお湯の掛け合いは続きました。


「エリカ」

「きゃ」


 お湯の掛け合いは、旦那様が突然お湯をかけるのを止めて、私を抱きかかえることで終わりました。


 旦那様は私の背中に腕を回して、抱きかかえるように私を抱きしめます。

 旦那様のたくましい腕の感触が私の背中に伝わってきます。


 ああ、本当、旦那様のたくましい腕と固い手で触られるのは大好きです。


 旦那様に抱きかかえられた私は、旦那様の胸に頬ずりします。

 これも私は好きです。


 2,3回頬ずりした後、今度は旦那様の顔に私の顔を近づけキスします。

 ああ、最高に幸せです。

 永遠に続くかと思われる時間キスすると、旦那様は私を抱くのを止め、体を離します。


「もう充分温まったし、体の洗いっこしようか」

「はい」


★★★


「肩こり、腰痛その他筋肉痛に効果あり。他にも神経症、五十肩、リュウマチ、内臓の病気、切り傷、打ち身、皮膚病等様々なケガや病気に効果あり。だそうですよ。旦那様」


 体を洗った後、再び湯船につかった私は、温泉の効能が書かれた看板を読み上げました。


「うん、たくさんあるね」


 体を洗って疲れたのか。それとも湯船で体の緊張をほぐせたからなのか。旦那様は暢気に欠伸をしながらそう言います。


 そんな旦那様を見て、ちょっとからかってみたくなった私は爆弾を投げ入れてみます。


「たくさんありますけど、子供ができやすくなるっていうのは無いですね」

「ぷっ」


 それを聞いて旦那様が思わず噴き出しました。

 顔を赤くしてあたふたしています。


 予想通りの反応だ。


 夜ベッドの上では私を離さないくせに、不意にこういうことを言われるとお母さんにいたずらを叱られた子供のように慌てふためく。

 本当、旦那様はかわいらしい人だ。


 でも、私はそんな旦那様が大好きだ。


「ちょっと、エリカ、お前」

「だって、欲しいんですもの」


 私は本当に旦那様の子供が欲しいのだ。


 結婚当初は子供を作らないように気を付けていたが、今は生活に余裕が出てきたので子作りを解禁している。


 結構頑張っているのだが、なかなか妊娠しない。

 もっと励まなければならない。もっと旦那様にアプローチしなければならない。


「旦那様」


 なるべく色っぽい声を出しながら、私は再び旦那様に抱きついて行った。

 旦那様のあそこが固くなっているのが、タオルの上からでも確認できた。


 よし、成功だ。


 旦那様がやる気になったようだ。


 これは、今晩も子作りのフルコースの確定、かな?

 ああ、早く子供が欲しいなあ。

本日の投稿は以上です。どうだったでしょうか。楽しんでいただければ幸いです。


明日も2話投稿です。1話目は10時頃投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ