閑話休題2~エリカの独白~
こんにちは。私はエリカ・エレクトロンと申します。
こう見えても人妻です。
旦那様との交際を一族の方に邪魔されたので、駆け落ちして一緒になりました。
それほど旦那様のことを愛しています。
それにもかかわらず、旦那様は先日女の子を連れて帰ってきました。
とてもアホそうな子でした。
私に何の断りもなく手を出したと私は怒りました。
えっ、断った後ならいいのか?って。
ダメに決まっているじゃないですか。だって私はものすごく嫉妬深いのですから。
私の目の前で他の女とイチャイチャしているのを見たら、激怒して旦那様にお仕置きしちゃうかもしれません。
ただ、同時に子孫繁栄の重大さも理解しています。そういう風に教育されてきましたから。
側室との間にも子を作って係累を増やして一致協力してやっていけば、私の子孫たちも繫栄していくのです。
ヒッグス一族はそうやって繫栄してきたのです。一族のことは腹立たしく思っていますが、そういう知恵を否定する気はありません。
跡継ぎ問題で揉めるだろうとおっしゃる方もいらっしゃいますが、そういうのは教育次第でどうにかなります。
現にこの国の王室だって教育をうまくやっているので、継承問題で揉めたことはないはずです。
だから旦那様が側室が欲しいと仰るのなら許可してもよいのですが、これはないと思いました。
こんなのを側室にしたら一族滅亡だと思いました。
だって、アホそうなうえに、偉そうで、おまけに女神なんて名乗るのですもの。普通の人なら反対するはずです。
まあ、女神なのは本当のことだとのちに判明したのですが……、実は今でも嘘じゃないかと疑っています。
それに、側室になるのではなくうちには本当に働きに来たみたいですし。
私は二人がそういう関係ではないのかと疑ってかかって注意深く観察していたのですが、どうやら二人の間にそういうのはないみたいでした。
そもそもそういう気もないみたいですし。
それと、よく観察しているうちにヴィクトリアさんがそれほど悪い子でないということもわかりました。
確かにアホで仕事も満足にできません。
先日も話し合いの最中に、角砂糖で遊ぶなどという前代未聞なことをしてくれましたし、他にも私が青くなるようなことをいろいろしでかしてくれます。
包丁もろくに使えないので切った食材の大きさはバラバラですぐに料理を焦がすし、掃除、洗濯、裁縫と何一つできません。
私の実家なら即クビレベルです。
ですが、仕事は一生懸命やろうとします。最近ではあまり根を詰めすぎるので、私がもういいと言っても、
「もうちょっとだけやらせてください」
と、けなげなことを言ったりもします。
それに彼女が突拍子のない行動をとるのもどうやら教育のせいみたいです。というのも、彼女のご両親は仕事で忙しく、あまり彼女に構ってくれなかったみたいなのです。だから、こんな常識のない子に育ったみたいです。
性格がずぼらなのもその辺に原因があるようです。彼女はあまり自分のことに気を使いません。
そんな暇があるのなら、横になってだらだらしたいタイプのようです。用事がない時はいつもソファーに寝そべって本を読んだり寝たりしてます。
素材はいいのにもったいない限りです。私もいろいろしてあげていますが、こればかりはあまりうまくいきません。
気長にやっていこうと思います。
後、先程彼女のことを偉そうだと言いましたが、それも自信のなさの裏返しだったみたいです。
そうです。彼女は両親に構ってもらえなかったせいで、普通は両親に褒めてもらうことで子供は自分に自信を持つようになるのですが、いまいち自分の行動に自信が持てないようなのです。
自信がないからこそ虚栄心で他人に偉そうにふるまってしまう。よくあることです。
でも、最近では私たち夫婦に心を許してくれたせいか、そういう態度を取らなくなってきました。
むしろ、ちゃんと手取り足取り教えてあげれば、言うことをよく聞くいい子です。
まあ、何をやらせてもあまり上手にできませんが。
そんなわけで、最近では彼女のことをかわいいと思えるようになりました。
出来の悪い妹ができたみたいで世話を焼くのが結構楽しくなってきています。
旦那様も「あいつ、大分ましになったな」と言ってくれています。
そう言われて私もうれしいです。
何やかや言いましたが、今ではヴィクトリアさんが来てくれてよかったと思っています。
これからもみんなで仲良く暮らしていきたいですね。
次話の投稿は22時からの予定です。
2話続けての投稿となります。
ご期待ください。




