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第103話~王国武術大会番外戦 VSグレートデビル②~

 グレートデビルとの戦いが始まった。


「『天火』」


 とりあえず魔法を放って様子を見てみる。

 俺の放った魔法は途中で複数の炎弾に分かれると、一斉にグレートデビルに襲い掛かっていく。

 だが、グレートデビルもおとなしく食らうわけがなく。


「『氷槍』」


 氷の槍を出現させて相殺してきやがった。

 さすがは悪魔とかいうだけあって、魔法が得意なようだ。

 あっさり俺の魔法をかき消しやがった。


 さらに。


「『黒雷』」


 グレートデビルは雷の魔法を使ってきた。

 奴の放った雷は黒く、おどろおどろしかった。


「『天雷』」


 それに対抗して俺も雷を放つ。

 ドッカーン。

 雷と雷が空中でぶつかりはじけ飛ぶ。

 はじけた雷はそこら中に分散して降り注ぐ。


 ピシャーン、ピシャーン。

 観客のいなくなった観客席や、試合会場に命中しては、観客席や地面をえぐり取っていく。


 それを見て俺はゾッとする。

 もし、観客を避難させていなかったら今頃大惨事間違いなしだからだ。

 フォックスたちの的確な避難誘導のおかげで、すでに観客の姿は場内にない。

 本当、あいつらに任せて正解だったと思う。


 しかし、グレートデビルはすごい。

 俺の使った『天火』も『天雷』も+2のはずなんだが、グレートデビルの魔法はそれに対抗できているのだ。

 かなりの魔法使いといえるだろう。


「それでは、これならどうだ」


 俺は左右の手にそれぞれ別の魔法を展開する。

 『魔法合成』

 文字通り、2つの魔法を合成して別の魔法として放つ魔法だ。

 それで、今回合成するのは。


「『天火』と、『天風』の合成魔法、名付けて『天の火柱』」


 俺が放った魔法はグレートデビルへ一直線に向かっていく。


「『氷槍』」


 グレートデビルは再び魔法を放って迎撃してくるが、今度はうまくいかない。

 プシュー。

 俺の魔法により、一瞬で氷の槍が蒸発してしまったからだ。


 ドッゴーン。

 氷の槍の弾幕を突破した俺の魔法は着弾し、すさまじい火柱でグレートデビルを包み込む。


「ぐおおお」


 グレートデビルが絶叫する。

 火柱はそのままグレートデビルを焼き尽くすかに見えたが。


「ち、死ななかったか」


 火柱が消えた後もグレートデビルは生き残っていた。

 全身の毛が焼け縮れて、皮膚がところどころ黒焦げているが、それでもしぶとく生きていた。


 あの炎で死なないなんて。

 グレートデビルの魔法防御力は意外に高いようだった。


「よし、魔法戦はここまでだ。あとは接近戦で決着をつけてやる」


 俺は愛剣『クリーガ』を抜くと、グレートデビルに近づいていく。


★★★


「『神強化』」


 俺はクリーガに聖と火の2属性を付与して、グレートデビルに近づいていく。


 さすがはオリハルコンの剣。

 普通の剣なら2属性を付与すると、剣が崩壊しそうになるのにびくともしない。

 苦労して手に入れた甲斐があるというものだった。


「おのれ、人間め。よくも我をこんな目に遭わせてくれたな」


 俺に痛い目に遭わされたグレートデビルは、とてもお怒りのようだ。

 その瞳に怒りと復讐の炎が燃えたぎっているのがよく見える。


「殺してやる!」


 ジャキン。

 グレートデビルは拳から黒く長い爪を生やすと、俺に襲い掛かってきた。


 ガキン。ガキン。

 クリーガとグレートデビルの爪が激しく激突する。

 それだけですさまじい衝撃が発生し、空気を揺らし、発生した衝撃波が周囲の物を破壊していく。


 しばらくはそのまま打ち合っていたが。

 このままでは埒が明かないな。

 そう感じた俺は、


「『重力操作』」


一旦グレートデビルと離れ体勢を立て直す。

 そして。


「『神眼』」


 神眼を使用して感覚器官を広げる。

 そうすると見えてくる。

 隙が無いように見えても、結構突くところがあるな。

 俺はそれを狙って攻撃を仕掛けていく。


 ズバ。ズバ。

 クリーガがグレートデビルを切り裂いていき、出血が増えていく。


「おのれ」


 傷つけられたグレートデビルが怒りのボルテージを上げ、攻撃が激しくなる。

 しかし、無駄なことだ。


 スイ、スイ。

 俺はそれらの攻撃をことごとくよけ、逆に反撃し、奴の傷を増やしてやる。


「こうなったら」


 俺に直接攻撃が通じないと思ったグレートデビルは背中の翼を大きく羽ばたかせる。

 そして空中に飛びあがると、両手を上にあげ、魔法を使い始める。


「我が究極の魔法を食らうがいい」


 邪悪な魔力がグレートデビルの手に集中していく。

 これはまずいな。

 そう感じた俺は自分の中に意識を集中していく。


★★★


 自分の中に意識を集中した俺は、自分の魔法リストをのぞき込み、『神強化』を見る。

 そして、その中の必殺剣を確認する。

 いくつかある必殺技の中から、最適と思われるものを選択する。

 そして、剣に魔力を籠め、上段に構える。


「出でよ。我が眷属たる黒龍よ。我が敵をその地獄の火炎で焼き尽くせ。『黒龍火炎陣』」


 グレートデビルが魔法を展開すると、黒い炎をまとった巨大な黒龍が現れた。

 黒い炎。グレートデビルが地獄の火炎だとか言っていたからそういうことなのだろう。

 地獄の炎はすべてを焼き尽くすという恐ろしい炎である。


 だが、俺は別に怖いとは思わなかった。

 なぜなら、俺には必殺剣があるのだから。


「ぐおおおお」


 グレートデビルが呼び出した黒龍が襲い掛かってくる。

 それに対して、俺は冷静に対応する。

 ゆっくりと、しかし力強く必殺剣を放つ。


「行くぞ。『五芒星退魔斬』」」


 俺が必殺剣を放つと、空中に五芒星が出現し、それが黒龍さらにはその背後にいるグレートデビルめがけて飛んでいく。


「ぐお?!」


 五芒星は一瞬で黒龍を消滅させ、グレートデビルに迫っていく。


「くそ」


 グレートデビルが五芒星を避けようと、翼をはばたかせて位置を変えても。


「何だと!」


 五芒星は自動でグレートデビルを追尾していく。


「この、この」


 グレートデビルは何とか五芒星を回避しようと必死にもがくが、それは無駄な努力だった。


「ぐわあああ」


 最後は五芒星の直撃を食らい、地面へと落下していった。

 俺はすかさず落下したグレートデビルへ近づき、


「地獄へ帰れ!」


 トドメの一撃を加えてやる。


「ぐは」


 俺の一撃を受け、短い悲鳴を残してグレートデビルは消滅した。


★★★


 事件が終わった後、俺は闘技場の控室で休んでいた。


「ふう、疲れた」


 本当に疲れ果てていた俺は控室の壁にもたれかかってグダグダしている。


 その控室から壁一枚隔てた廊下からは、大勢の人がバタバタと忙しく行きかう足音が聞こえてくる。

 これは警備隊事務所や衛兵駐屯地から捜査官や衛兵たちが来て、今回の件について調査しているからだ。


 当然だ。もう少しで国王暗殺などという大事件になるところだったのだから。

 実は俺も取り調べを受けたりしたが。


「うむ。そなたは関係ないようだな」


 と、簡単に事情を聞かれただけで釈放してもらえた。

 まあ、俺は国王陛下を助けた側だからな。褒められこそすれ、疑われるようなことはしていないしな。


 対して、オンブルなんかは厳重に取り締まりを受けているようだ。

 ただ、奴は。


「知らない。何も覚えていない」


 それのみを繰り返し話しているようだ。

 大体オンブルは悪魔に乗り移られていただけで、それさえなければ、予選の初戦も突破できないようなただの非力な一般人だからな。


 言ってみれば奴もグレートデビルの被害者に過ぎない。

 処罰を受けないことを祈るばかりである。


「旦那様」


 俺がそんなことを考えているとエリカたちが控室に入ってきた。


「終わりましたか?」

「終わったよ」

「そうですか。では帰りますか。と、その前に王様からの言葉を伝えておきますね。『表彰式は後日行う。使いの者を寄こすので、それまで待機しておくように』とのことです」

「わかった。では、帰るとするか」


 こうして、俺たちの武術大会は終わり、俺たちは家に帰るのだった。

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