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【第一章】蒼炎のプロローグ(7)

翌日。午前の講義が終了してすぐに俺はAクラスの教室へ向かった。昨日のうちに学院側の調査は完了しているらしく立入禁止は解除されていたが、机や教壇といった設備を整えるまでAクラスの講義は別の教室で行われている。


「あ! 来たね、レイス」

「こんにちは、レイスさん。準備はできています」

「やっほ〜〜レイスくん。頼まれてたひとたち、声かけといたから。もうすぐ来ると思うよ」

「すまん、助かる」


教室にはすでにフィル、キティ、ポルカといったすでに事情を話している面々が揃っていた。遅れてイワンを含めた事件現場に立ち会ったAクラスの生徒数名、そして担当教師のケインズが到着する。


「んだよポルカ、だれだ? オレに話があるヤツってのはァ」

「Aクラスの諸君と……おや。君はFクラスの」


イワンのがなり声に続いてケインズが眼鏡の奥の怜悧な瞳を光らせる。


「レイスです。忙しいときにお呼び立てしてすみません」

「リズボンから話は聞いています。面白い話を聞かせてくれるそうですね」


ケインズを呼んでくれたのはありがたいがどんな声のかけ方をしたんだ、あのFクラス教師。


「あァ? Fクラスのゴミがオレを呼びつけやがったのか?」


舌打ちをしてイワンは俺にずんずんと大股で歩み寄ると威圧的に睨みつけてきた。目の前に立つと俺より頭一つ分大きい。昼休憩の時間をとられているのが癪なのか相当に苛立っているようだ。


「悪いな。すぐに終わる」

「舐めてやがんのかてめェ……」


俺の言葉に眉を吊り上げてイワンが胸ぐらを掴んだその瞬間、教室のちょうど教壇があったあたりからすさまじい熱気が放たれた。見れば昨日見たものと同じ蒼い炎が渦を巻いて噴き上がっている。


「こ、これは」

「【ハウゼンブルクの蒼炎】!?」


Aクラスの面々から短い悲鳴が上がる。イワンが驚いて手を離した隙にするりと抜け出すと、俺はフィルに礼をいった。


「フィル、助かった」

「うん! 見せちゃった方が早いもんね!」


その言葉にケインズが驚いてフィルを見る。


「これは……フィル・バレンタイン、君が?」

「そうです! あ、もちろん魔術暴走なんかじゃないですよ。ちゃんと統制できてますし」


フィルが答え、するすると手のひら程度の大きさにまで炎を弱めてみせる。ケインズは興味深そうに目を見張った。


「にわかには信じられませんね。【蒼炎】はハウゼンブルク家の創造魔術。いくらフィル・バレンタインが優秀でも真似できるものではありません。……いったいどういうカラクリなのですか」

「キティの魔術を種火として、フィルが魔力だけ供給しているんですよ。そこの魔術陣からね」


ケインズの問いに、俺は炎が立ち上がるその根本——一枚の羊皮紙に書かれた魔術陣を指差して答える。


「種火、ですか」

「【ハウゼンブルクの蒼炎】は色が特殊ってだけじゃない。その比類ない強さをもたらしているのは『物質も魔術もすべてを呑み込む』特性です。当然呑み込んだものは【蒼炎】自体のエネルギーに変換される」

「なるほど、その特性は私も認識していますが……間違いありませんか、キティ・ハウゼンブルク」

「はい」


キティは短くこくりとうなずく。ケインズは彼女を見やりながら、鋭い眼光でキティがいま魔術を発動していないことを確認している。そしてその口の端をわずかに笑みの形に変える。


「……面白い。これならば昨日の件、キティ・ハウゼンブルク以外の人物が関与したとも考えられるということですね」

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