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【第二章】夕闇の国家試験(3)

 魔力が視える。一切の魔力をもたないということと引き換えにしては、その能力はあまりに使えない能力だった。子供の頃は無邪気なごっこ遊びで済まされても、年齢を重ねるにつれ周りに気味悪がられるようになり、いつからか俺は視えないふりをするようになっていった。そして魔力視がいかに『特異』で魔術研究上『興味深い』対象かを理解したころには、絶対に軍や学院には露見しないよう立ち振る舞ってきたのだ。

 警戒する俺をヴァンはきょとんとした顔で見つめたあと、ぷっと吹き出した。


「やあ、すまない。きみはふたつばかり誤解をしているよ」

「誤解?」

「ああ。まず中佐だけど、彼は魔術捜査官ではない。『魔術』のつかない一般の捜査官さ。というか、魔術捜査官自体まだ誰も着任していない空の役職なんだよ。新設されて日が浅いというのもあるが、厳しい試験を課していることもあってなかなか合格者が現れなくてね」


 ヴァンはにこにこと笑いながら手にしたペンをくるくると回す。


「それからぼくはきみをどうこうするつもりはないよ。あくまで選択肢を提示しているだけだ。嫌なら断ってくれてもかまわないし、その場合もきみは元通りの学生生活に戻れることを保証しよう。と、前置きをしたところで」


 ヴァンの目配せを受けたケインズがすっと差し出してきたのは、一枚の羊皮紙だった。俺に宛てられた魔術捜査官の推薦状だ。


「魔術捜査官は国家一級資格に該当します。知っての通り国家試験には学院で優秀な成績を修めて卒業した者に与えられる推薦状が必要ですが、軍捜査局長の推薦はそれに等しい価値があります」

「捜査局直轄とはいえ推薦状がある者に対して公募している役職だから、きみにも一応試験は受けてもらわないといけない。まあ、きみなら問題ないと思うけどね」


 各学院トップクラスの生徒しか授与されない推薦状を手にした王国中のエリートが受験する国家試験は限られた枠を巡って熾烈を極めるという。超高倍率の難関を突破してようやく勝ち取るのが国家三級資格。そこから二級・一級と登り詰めていくためには並々ならぬ修練と経験を積み重ねなければならないうえ、国家一級の試験ともなれば厳しい基準が課せられているため、合格者が出ないこともザラだという。


「最初から国家一級資格とは破格の待遇ですね……正直、えこひいきと思われても仕方ないんじゃないですか」

「それだけ陛下もご執心ということさ。待遇がいいぶん優秀な人材も集まるしね。あとは国家資格二級以上を有する者しか容疑者の逮捕権限がないから、魔術捜査官も相応の資格がないとあまり意味がない……こっちはまあ、捜査局の都合だけど」


 普通の学生であれば是が非でも飛びつく話なのだろう。だが俺は身を守る魔術のひとつも使えない『無術師』なのだ。犯罪者、それも魔術師相手の捜査官など命がいくつあっても足りない。


「あーと、ヴァン局長。光栄な話だとは思いますが……」

「やあ、忘れていた。肝心の報酬の話だけれど」


 丁重に断ろうと口を開いた俺を手で制し、ヴァンはさらさらと手元のメモに走り書きをする。


「そうだね……学生とはいえ国家一級資格保持者ともなれば、これくらいは約束できる。成績次第ではさらに上積みだ」


 はい、とヴァンが提示したそのメモには見たこともない金額が記されていた。数秒ばかりぽかんと間の抜けた顔をさらしていた俺だったが、なんとか引き攣った笑みをとりつくろって冗談を飛ばす。


「……これ、3年契約の報酬とかでしょう」


 絹織りのハンカチで丸眼鏡を几帳面に拭きながら、ケインズはにこりともせずに答えた。


「月です」

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