王都エトワールへ
翌朝。
3人が朝食を食べ終え出発しようとしていた時、
「一昨日、ノワールの森に黒龍が現れたらしいですぞ」
「なんですと!それは大変だ!王都に行った後、ヌーヴェルへ行こうと思っておりましたが、デジールに変更した方が良さそうですね」
と、近く居た商隊の話し声が聞こえてきた。
「黒龍…」
ルークは黒龍の話を聞いて、なにか考え事をしてるようだった。
ノワールの森は私達が居たシロンスの森とは王都を挟んで真逆に位置すると横でウィルが説明してくれた。
3人で街道を歩きながら、ふと疑問に思った事を口にしてみる。
「ねぇ、転移系の移動魔法があるなら、一瞬で街まで行ける魔法とかないの?」
「転移魔法は上級魔法だ。誰にでも使えるわけないだろ」
「花音、もしかして疲れた?」
「う…うん。ごめんなさい。普段、あんまり歩き慣れてなくて。2人は馬に乗ったりとかしないの?」
すれ違う商隊が荷馬車を牽いてるのを見ると馬が存在しないわけではない。
「今回の目的は薬草採取だったからね。採取してる間に馬が魔物に襲われる可能性があるから利用しなかったんだ。距離もそんなに遠くないしね」
「えっ?」
と、遠くない?
1日で着かないこの距離が?
不安を覚えながら、おそるおそる聞いてみる。
「王都まであとどれくらいかかるの?」
「花音、おまえのペースに合わせてると明日の昼頃だな。俺とウィルなら今日中には着いてる」
な・なんと…
…って、事は今日も野宿決定。
私、完全に2人の足引っ張ってたのね。
「花音、ルークの言う事は気にしないで魔法覚えながら、ゆっくり行こう」
そう言ってウィルが『ウォーターブレード』のお手本を見せてくれた。
昨日使った『ウォーターカッター』より、少し威力が上がる初級魔法とのこと。
人気ない方にウォーターブレードを放ち練習し、それなりの効果が出るようになった時。
ルークが立ち止まった。
街道から少しはずれた木の陰を見ながら
「ジャッカローブだ」
ジャッカローブ?
ルークの視線の先を辿ると角が生えたウサギがいた。
「花音やってみろ。まぁ、もし外したら俺が仕留めてしまうがな。」
確かにコントロールはまだまだかもしれないけど、負けず嫌いな私は慎重に狙いを定めてウォーターブレードを放った。
「あ、やばっ!」
放たれたウォーターブレードはジャッカローブが隠れていた木ごとジャッカローブを切断し木が横になぎ倒された。
あ、焦った…
「こちら側に倒れなくて良かった」
「花音、今のはウォーターブレードじゃなく、ウォーターカッターで十分だったぞ」
そう言って倒されたジャッカローブの元に行くルーク。
「ん?!なんだ?この辺りで酒盛りした奴らでも居たのか?酒臭いな」
「ホントだ。なんだか私の世界の日本酒みたいなニオイかも」
「日本酒?なんだそれは。旨いのか?」
「私はまだ未成年だから、飲んだ事はないよ」
飲んだ事は無いけど、よく父に熱燗を温めてあげたな…
「未成年?僕と同じくらいかと思ってたけど、花音って何歳なの?」
「え~と、こっちに来て3日目って事は明日で16歳」
「花音、明日誕生日なの?16って事は、やっぱり僕と同い年だね。明日は成人のお祝いしなきゃね」
「成人?この世界は16歳で成人なの?」
ウィルの言葉にびっくりして聞き返す
「そうだよ。16歳になれば騎士団にも入れるし、お酒も飲める。結婚だって出来るよ」
こちらの世界は男女関係なく、16歳で結婚出来ちゃうのか…
なんだか早すぎる気もするけど…
辺り一面、日本酒くさかった事も花音の誕生日の話題で話がそれて忘れ去られてしまった。
ジャッカローブはルークが鮮度を保つのに時間魔法をかけて運ぶ事になった。
ただ焼いて食べるより、煮込み料理の方が旨いからと…
その日は昼食も夕食も持ち運び便利な携帯食で済ませた。
食品サンプルのミニチュア版のようなモノなので、軽くて嵩張らない。
100食だって楽々運べそうだ。
野宿も2日目で慣れたわけじゃないが、歩き疲れたせいで、ぐっすり眠ってしまった。
朝起きて、お風呂には入れないので、教えて貰った生活魔法ピュリファイ(浄化)とデオドラント(消臭)で体と服を綺麗した。
簡単に朝食を済ませた後、ひたすら歩き続け、お昼近くなった頃ようやく王都エトワールに辿り着いた。




