② 「最後」の再会 1
「会っておいで」
お風呂から出た彼女に、メリルが告げた。
「あの男……、今下宿先に行かせたから1人でいるって、聞いたよ」
「……」
彼女は信じられなくて、目を見張って立ち尽くした。
「どうしてそんなことしたの……」
「――それはもう言ったよな? 君会いたいって言ったじゃない」
「……本当にしてしまったの……」
「――君のためだよ。大好きな君のため」
ゆっくり告げたメリル。押し殺したような声音だった。
「君、もう明日、いや明後日には帰るんだろ? 飛行機は夕方って言ったっけ……、それまでに何もできなかったら今度こそ後悔するんだろ?」
――後悔させたくないよ。たとえそれが他の男とのことでも。
「ここから遠いの?」
「……3,4区画先、です……」
「そう。1人で行くね?」
「……」
彼女は頷くふりをして顔を伏せた。
外に出られる格好に着替えに、寝室に引っ込む。
心臓は悲鳴を上げるようにばくばく大きく拍動していた。
――ずっとずっと会いたかった。夢なのかしら。
彼女は夢見心地で歩いていたが、苦しそうに顔をしかめて胸元を押さえていた。
彼の下宿先の家に訪ねると、本人が1人出てきた。
――本当に待っててくれたの……。
ドアが開くなり強く引っ張られて、彼女が気づいたら固く抱擁されていた。痩せ細った体なのに彼は折ってしまいそうなほどに抱きしめていた。彼女はぎゅっと目を閉じた。
――痛い。でも……やっぱりこの腕……。
「アンジー……やっと会えた……やっと……」
彼女はこの夜限りで彼とさよならしようという決意を揺らがせまいとして、ぐっと身を強張らせて耐えた。
そうでもしなければ簡単に溶かされてだめになってしまうと感じて。
「携帯繋がらなかったのよ」
「没収されている」
「……そうなの……」
携帯が使えないから全ては両親から聞いて、ここにやってきたと彼は言った。両親からは「アンジーがどうしても直接話がしたいと言っているから、落ち着いて聞いてあげなさい」とだけ言われていたらしい。
「そう……じゃあ」
彼女は震える声で、切り出した。
「――これで最後にして」