⑦ 天使は意地っ張りで……
「……お願いだよ」
自分が情けない男だと、彼女は既に分かっているはずだ。
そっと彼女の上にのしかかって静かに唇を重ねる。
「おれを好きと言ってよ、アンジー……」
「……っ」
さっきまであれほど喘いでいたのに、彼女は声を押し殺しているようだった。うっすら目を開けてみたら、彼女はぎゅっと目を閉じていて――頬を既に涙が伝っていた。
「しんどいだろ。当たり前だよ、……友達なんだから……っ」
未だ自分たちは、互いの性欲を――もしかしたら彼の性欲だけを――充足させるだけの、セックスフレンドかもしれない。
「こういう友達でいてつらいなら、……おれを好きと言ってよ……」
――おれと付き合ってったら。
「……おれは君を愛しているから……ある程度はバカなんだ。付き合ってもいないのに愛してしまっているから――」
必死で歯を食いしばっている彼女。メリルは「力を抜いていて」と優しく囁いてみるが、彼女の口からは歯ぎしりのような音がもれてくるばかりだった。
メリルは耐えかねて彼女に柔らかいキスを浴びせた。
「意固地になっちゃって……アンジー……可愛いね」
彼の理性はほとほと限界に達しそうだった。「彼女が欲しい」という熱がどくどくと溢れ出すばかりだった。
「もっと乱れてよ……好きと言えないだけなんだ、君は臆病だから……。だったら」
――もっと反応して。狂うくらい愛して。
「や……なの――っん……!」
彼女の本能だと分かっている。
愛情より先に本能が反応しているとは当然彼だって分かりきっている。
彼だって自分の身体さえ気持ちよくなるのが虚しかった。
――ただ、おれには愛情があるのに。
「君の……愛……」
――どこにあるの。
彼はもう尋ねられなかった。