① 「最後の晩餐」
愛している
気が狂っても
溺れても
この気持ちが
きっと最後まで燃え続ける
離れていても
信じる気持ちが
何よりの燃料になる
※お断り
本章では泥酔した主人公が粗相を働く場面が含まれます。
ダメージを受けたり不快に思う場合があります。
あらかじめご了承ください。
乾杯。
――――
おやつを済ませたふたりはそのまま食事の準備をすることにした。
彼の実家からもらってきたワインとリキュールの瓶も食卓に並んだ。
「ろくなコップがなくて……」
彼は水を飲むためのガラスのコップを2つ、横に置いた。
「いいの。先にご飯ね?」
「……」
実家で作ってもらったチキンのトマト煮と、今トースターで温めたパン、マカロニを茹でてから作ったチョップドサラダの入ったボウルが食卓を彩った。
「お酒弱いんじゃなかったの。最近飲むの?」
「……飲まないよ。ここじゃ全く。それに、弱くはないよ」
「お父さん言ってたじゃないの。お酒飲むとロンはめちゃくちゃめんどくさいって」
「そりゃ悪く言えばの話だ」
「……全くもう。自覚あるの?」
「多少は」
「そう」
彼女は彼がちゃんとご飯を口に運ぶのを見てほっと息をついた。
さっきのスコーンもだったが、半年ぶりに彼がまともにご飯を食べている姿を見た。
「ちょっとはご飯食べられるようになった?」
「夜くらいは」
「どうせ缶詰だとか言うんでしょ」
「……たまにな」
「その……、カウンセリングのことについて聞いてもいい?」
「……そんな、大した話は……」
職場の先輩に、大学勤めの精神科医の友人がいると言うので大学病院を紹介してもらって通い始めたと言う。
「3か月くらい前から」
「そう。少しは何か……ご飯楽に食べられるようになったのかな」
「食事はまあ。――話したくないこととか話したくない気分の時ってあるじゃん。そういう時に限ってカウンセリングの日だったりして上手く行かないこともある」
「それは逆にカウンセリングだから憂鬱みたいな気持ちじゃないの」
「逆にそうかもしれない」
「話したい時に話せるようになったら……いいね」
だから自分と電話をすることは悪くなかったのかもしれない。話したいから電話をする。彼女からかけることもあれば彼からかけてくれることもあったのだから。
「何かあったら……これからも電話してね」
「夜中でも?」
「起きてればいいけれど」
気だるそうにフランスパンにナイフを入れる彼。斜面のように曲がるパン。ナイフが入りきらなくて最後には千切っていた。さっくりいかなくて不満そうにナイフをぽいと放棄した。
互いのグラスにお酒を注いだのは、食事を始めてから1時間近く経った頃だった。
「……かんぱい」
「乾杯」