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強襲は迅速に

「ザィードッ! 畜生ッ!!」


胸を貫かれた剣士の左斜め後ろの槍兵が叫ぶ。仄かな月明かりの光量にまだ目が慣れてはいないが、彼にも蠢く影の判別くらいはできる。


「喰らえやぁああッ!!」


両手で刺突槍の柄を握り、利き足を強く踏み込んで黒影へと鋭い突きを繰り出した。


「ガァッ (ちぃッ!)」


黒い影の正体であるブレイザーは黒塗りのロングソードから手を離し、右足を斜め後ろに引いて半身となり刺突を紙一重で躱す。


さらに伸び切った槍の太刀打ちを両手で掴み、力任せに自分へと引っ張る!


「ヴゥオオォッ!!(うおおぉッ!!)」

「うおぁッ!?」


前方につんのめった槍兵に対し、長身痩躯のコボルトは左足で踏み込んで距離を詰める。そこから伸ばされた彼の右手が槍兵の喉を鷲掴みにした。


「ッ、がはッ!」

「ウォルァッ! グァルォアァアッ!!(捕まえたぜぇッ!火炎爪ッ!!)」


掌から吹き出す魔焔が眩く暗闇を照らして燃え上がる。


「ぎいぃいいあああッ!!」


その焔は喉元を焼き焦がして槍兵の呼吸を奪うだけに留まらずその全身を蝕んでいく。


相手に与えた損傷から戦闘不能と判断したブレイザーはその男を投げ捨て、地面に転がる剣士の胸から黒塗りの長剣を引き抜いて飛び退った……


時を同じくして、その反対側の護衛たちにはランサーが加速のままに襲い掛かっていた。


「ルァアァ―――ンッ!! (全力で貫くだけよッ)」

「ッ、えッ!?……なッ、あぁあああッ!」


焚火の消失に伴う明暗差に目を眩ませていた大柄な槌兵の腹を彼女のスラッシュスピアが貫く。


「ウォオンッ (邪魔よッ!)」


腹に突き刺さった槍を把握し、驚愕の表情で叫ぶ大男をランサーが蹴り飛ばす。


その動きと併せて槍を引き抜くと同時に左手を離し、右手の握りを緩めつつ前方へとスライドさせて持ち手を斬撃用に切り替える。


「うらぁああッ!!」

「ガルゥウッ!! (遅いッ!!)」


キィィインッ


横合いから袈裟に振り下ろされた盾兵の片手剣に対し、遠心力を乗せた横薙ぎで打ち払うと左手を突き出す。


「クルオァアンッ (煌めけ聖光ッ)」

「うッ!?ッ、うぅッ、ぐぁああ―――ッ!!」


暗闇の中に眩く光る閃光がまたもや盾兵の目を眩ませ、その隙に側方へ踏み込んだランサーがその横腹を一閃と共に斬り裂いた。


結果、最初に腹を貫かれて蹴り飛ばされた槌兵も、続いて横腹を斬られた盾兵も腹を押さえながら前のめりに頽れる。


僅かな間に二名を無力化した彼女の少し斜め前方では、蒼色巨躯のコボルトが縦長の大盾を力の限りに振り下ろしているところだった。


「ウォオオォン!! (でりゃああぁッ!!)」


 ゴンッ


「がッ!?」


思いっきり頭に大盾を叩きつけられた戦士は意識を飛ばされてそのまま地に倒れる。


「ウォルウォン ガルァ~ (どんどんいくよ~)」

「ッ、ぐへッ!」


別の相手が切り掛かってくるのも一切気にせず、アックスがその斬撃ごと豪快にシールドバッシュで殴り飛ばすと、彼の背後から黒い影が飛び出す。


「クォオルァ♪ (不意討つぜッ♪)」

【発動:跳躍力強化(大)】


どこかで聞いた台詞と共に蒼色巨躯を飛び越えて、バランスを崩した護衛の剣士にダガーが襲い掛かる!


彼女は空中でくるりと機械式短剣を半回転させて逆手に持ち替え、着地と同時に半歩を詰めて相手の胸板に突き刺すが、金属片を組み入れたラメラアーマーに防がれてしまう。


「ぐッ!?」


「ウォッ (んッ)」


そのまま機械式短剣の刃先を滑らせ、金属片の繋ぎ目に差し込んで仕掛けのボタンを押し込むと、強力な発条で撃ち出された刃が繋ぎ目を破って剣士の胸に刺さる。


「ぐうぅッ、ッああぁ……あっあぁ…」


そのまま彼は後ろへとよろめいて片膝を突いた。金属系鎧が功を奏して致命傷は免れたようだが継戦は不可能だ。激しく動けば出血により生命の危機に瀕するだろう……


仲間たちがそれぞれに強襲を掛けていた頃、俺は飛び退った魔術師へ曲刀の柄を握りながら迫っていた。


だが、それを塞ぐように両刃のラージナイフを両手に持ち、手甲を装備したバウンサー風の男が割り込んでくる。


「ガルァアァアッ!!(斬ッ!!)」

「ちッ」


その短剣使いは俺の抜剣からの横一閃を両手の得物で受け止め、間髪容れずに曲刀に刃を押し当てたまま右手のラージナイフを滑らせて俺の喉元を狙う。


「グゥッ! (ぐぅッ!)」


その動きを察し、足に力を込めてバックステップで距離を取るが、手元で回転させて逆手に持ち替えたラージナイフを握り込んだ短剣使いが追い縋ってくる。


「だらぁああッ!!」

「ヴォルアッ! (この野郎ッ!)」


奴は右逆手に刃を握り込んだままショートアッパーの要領で俺の顎を切り裂く一撃を放ち、僅差で左順手の刃を脇腹へと突き込む!


俺は逆手の刃を上から左掌で押さえ込み、順手の刃も半身になって体を躱すと、仕返しに押さえ込んだ掌へと風属性の魔力を籠める。


「グルァッ! (切り裂けッ!)」

「ッうあぁ!? 」


風の刃が短剣使いの右手を裂き、今度は互いが後方へ跳ねて距離を空けた…… こうして、俺や仲間たちの初撃が終わった時点で、眠っていた残りの護衛たちも目を覚まして騒ぎ出す。

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