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そうか、最後に……

「“ガルヴォフ”…… ガルヴォフッ!!

『“せいじゅう”…… 聖獣かッ!!』」


そうかッ、聖堂教会の連中が祈ってたのは…… え、マヂで?


瞑目してアルヴェスタ討伐の際のことを思い出してみるが、どこにその要素があったのか理解できない。仕留めたのはアックスだしな……


「クルォオン、ワゥウ。グルゥ ガルヴォファン

『よかったな、アックス。お前は聖獣らしいぞ』」


「ワフィ、クルァ―ン? (何それ、美味しいの?)」


何か面倒そうな予感がしたのでアックスに譲っておこうとするも、広めの部屋の隅にいたエルネスタが首を左右に振って否定する。


「違うわ…… 君のことだよ、アーチャー」

「ガォン 『そうか』」


「聖堂教会の者たちが騒いでおったぞ、朝から今回の顛末をどう市井(しせい)へ出していくかの相談に詰めかけてきおったわ」


その王の言葉を傍に控える老魔術師が補う。


弓兵殿(アーチャー)、今回の件だが…… 多くの民は王都から避難できるほど経済的に裕福ではないのでな、混乱を避けるため情報を統制していた。民には黒雨のアルヴェスタの存在を公表していない」


…… 混乱を避けて都民の被害を最小限に留めるためとしても、一部の者たち、特に流血病の犠牲者やその家族は国に不信感を抱くだろう。それに隠そうとしても目撃者や診察した医師から露見する可能性も高い。


「ガォルウォアン『それは難儀だな』」


エルネスタは俺の言葉に重いため息を吐く。


「そうなのよ…… 既に病の進行が速い二百名ほどが亡くなって、残りの九千名以上の感染者が街や外の医療施設で治療中だからね…… 慎重にいかないと」


「グルァ、クルゥオアン…… ワフィオゥアァン

(ボス、妙な空気だけど…… 何か問題なのかしら)」


「ワゥ、グルォ ヴォルォアオォ

『まぁ、俺たちには関係の無いことだ』」


この問題は俺たちに直接関係するモノでもないので、微妙な雰囲気を察したランサーにそう小声で答えていると、再び老魔導士のグレイオが話を続ける。


「一応、昨晩からの調査で王国騎士がアルヴェスタの存在を認識して追跡、同様に調査を行っていた聖堂騎士隊がこれに遭遇、全滅の危機に瀕するも聖獣殿が七つの災厄の一体を討つ…… という筋書きになっている」


そして、飄々とアレクシウス王が締めくくる。


「ということで、突如現れた聖獣に衆目が向けば、国の対応への批判も多少は薄れるだろう。聖堂教会には盛大にやってくれと言っておいたぞ! 貴公には何から何まで世話になるな、心から感謝する」


つまりは聖堂教会を利用して民衆の関心や印象を操作すると……


(こいつ、中々に油断できない王だな……)


「…… 国が余計な批判を受ければ病に苦しむ民への対応が遅れる。そんなものは後でいくらでも聞いてやろう、先ずは流血病の治療法を探すべきだ。残念ながらな、貴族ですらそんな事も分からん輩が多いのだよ」


(まぁ、根はいい奴なんだろうな)


「ガルウァン、キュオゥ……

『可能なのか、治療が……』」


「可能かどうかじゃない、最善をつくすの」


間髪容れずに銀髪碧眼の魔導士が言い切った。


「幸い、朝から病の進行が緩やかになったと報告が上がってきているし、黒雨が討たれた現状なら治療も可能かもしれないの。現場の医師たちからも興味深い話を幾つか聞いてるよ」


「義娘の提案で個々に対応していた医師や薬師たちを組織化して、王国側から支援を行う計画ができている。そこに聖堂教会の司祭も加えることで下手な対立の図式にもならないだろう」


「ウルゥオ アゥオオォン

『色々と考えているんだな』」


と、感心をしていたら部屋の扉がノックされた。


「失礼いたします、魔導騎士隊のグレンにございます」

「構わん、入れ」


王の許可を得て、どこか懐かしさを呼び起こす東方諸国出身の浅黒い肌をした騎士が一礼してから入室する。


「どうした、急な来客でもあったか?」

「はッ、噂の聖獣殿に…… ルクア村の戦士頭と名乗る者が」


「ルクア村? 聞かない名前だな……」


「アレクシウス王、我が国の管轄下にないイーステリアの森に棲む亜人種猫人族の村です。フェリアス公がウィアルドの町やヴィエル村との交易を認めており、関係は良好だとか……」


ルクア村の戦士頭といえばウォレスか…… こんなところで意外な名前だな。


「イーステリアの森…… 貴公の知己か?」

「ワフ 『あぁ』」


「そうか、ではここまでとしよう。最後にモフらしてもらっても……」

「ガルルゥッ!『断るッ!』」


……………

………


褐色肌の魔導騎士に案内された部屋は先ほどより、少し狭めの部屋であるがそこは王城というもので、巨躯のアックスを含む俺たち5匹が入っても十分な広さがある。


その部屋には旅人の外套を纏う黒髪の猫人戦士が先に通されていた。相変わらず若々しい優男にしか見えないな…… 年頃の娘がいるのに。


「ッ! やはりセルクラムの聖獣というのは君だったか」


俺たちを視界に捉えたウォレスがガタッと席から立ち上がった。


「急ぎ頼みたいことがある、どこか地面に文字を書けるところに行こう」


「グゥ、ヴァングゥア ガルウォオォアン

『いや、念話ができるからここで構わない』」


唐突に話しかけられたウォレスが猫耳と尻尾をピンッと立たせて固まる。


「変な仮面を付けていると思ったら、君はいつも予想の斜め上をいく奴だなぁ」


彼はしみじみと頷く。しかし、この純ミスリル製のハーフマスクはやはり変に見えるのか…… 便利なんだけどな。

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― 新着の感想 ―
王様、モフリストだったのか・・・、 良い趣味だ!、モフらせてあげるべきだ!w
モフらせてくれないのか……
[一言] この話までに手押しの荷車の件がないが返却はしたのか? それとも今後出てくる?
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