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未来の生物学者?に出会う3匹

なんとか、漆黒の一角獣(正式名称は知らない)を倒した俺たちだったが、その時点で予定変更を余儀なくされる。


「ッ、クゥオファン…… (ッ、足が痛いよぅ……)」


妹が脚を挫いてしまい、俺とバスターも無傷というわけではないため、ここが退き際だろう。


「グルァ、ガルォ グルヴォアファ ウルァオン

(大将、ここはコイツの血の匂いが満ちている)」


「ワフッ、ガォクルゥウ ヴァルォウゥ

(あぁ、それに誘われる獣もいるだろうな)」


俺とバスターは仕留めたばかりの漆黒の一角獣を見下ろす。

少々もったいない気もするが、今はこれを捨て置いて撤退すべきだ。


「ワァグォル グルォオン…… (角だけでも頂いていくか……)」


先程、剣撃を弾いた角を確かめると傷一つ無い。

俺はしゃがみ込むと一角獣の頭を膝の上に載せ、角の根元を持って力の限り折ろうとする。


「ウォオオオーーーンッ!!」


森の中に咆哮が響くが……一角獣の角はびくともしない。

そして、何故か叫ぶと同時に俺の体内の魔力が少々失われていく。


「アゥ? クゥオファ ワゥル クルォアァン!?

(アレ? 足の痛みがちょっとマシになった!?)」


「ガォア グルゥアッ!! (力が漲りやがるぜッ!!)」


ダガーは挫いた脚の痛みが少し治まり、バスターは力を滾らせて、俺の身体にも活力が巡る。どうやら先程のは仲間の基礎能力を強化する魔力を伴った咆哮のようだ。


(しかし、単に気合をいれて叫ぶだけで発動するのか…… 注意が必要だな)


だが、結果として目的は果たされる。


「グルァ、ウォン! ガゥグルゥ ウォオアンッ!!

(大将、任せろ!今の俺ならやれる!!)」


俺が漆黒の一角獣から離れるとバスターが肩に大剣を担ぎ、腰を落として構えを取る。狙うは一角獣の角、その付け根の部分だ。


「グォウ、グルゥアファン。グォウァオオゥ……… ガァオルゥッ!!

(一撃、それ以外は無粋だ。一撃を極めてこそ…… 必殺と成す!!)」


一瞬だけ闘気を纏ったバスターの両腕の筋肉が瞬間的に盛り上がり、その剛腕から大剣の一撃が振り下ろされる!


キィイィイーーーーーーンッ


金属同士がぶつかるような澄んだ音を響かせて、魔物化した一角獣の角は根元から切断されて、ごとりと地に転がる。こうして一角獣の角という貴重品を手に入れて帰路へと着いたのだが、魔力を帯びた咆哮の効果が切れた妹の足が痛み、俺たちの歩みは遅々としていた。


「ワフオゥ、ガァウル ワォア クゥオァアゥ

(とりあえず、少し戻って川辺で脚を冷やそう)」


「ワォアンッ、クォン (分かったよ、兄ちゃん)」

「グルゥア グルァウ ワァルファウ (俺と大将で前後に付こう)」


その提案通りに冒険者から奪った方位磁針を手に俺が先頭を歩き、その後ろにダガー、最後にバスターの並びで来た道を戻る。結果的に集落を旅立ってから五日目にして俺たちは山脈に辿り着けずに帰ることになった。


なお、悪い事というのは立て続けに起こるものだ。


川辺に辿り着いた俺達が水で喉を潤し、ダガーが脚を水に浸して冷やしていると、川の上流から葉擦れの音をさせて何かが近づいてくる。


「グァ、ガルフ、グルゥアッ! (ちッ、来るぞ、警戒しろ!)」

「グゥオァッ、グルァ!! (分かってるぜぇ、大将ッ!!)」


俺とバスターが前衛になり、後衛にダガーの陣形で待ち受ける。

妹が走れない以上は迎撃を試みるしかあるまい。


木々の間から見えたのはこちらに向かって必死の形相で走ってくる魔術師の服装をした赤毛の少女と、それを追いかける表皮が鉱石で覆われた大型のリザードの姿であった。


……………

………


ミュリエル・ヴェストは今年、王都の魔術学院を優秀な成績で早期卒業した新米の魔導士(17)である。なお、正規の養成機関を卒業した魔術師のみが晴れて魔導士を名乗ることができるため、その敬称は一種のステータスとなっている。


さらに言えば彼女の専攻は魔物を含む生物学。


様々な土地に赴いて周辺の魔物や動物、植物の生態を調べ、書籍として出版したり、ギルドの依頼で調査を行ったりする分野だ。まだ駆け出しである彼女は一冒険者として資金を稼ぎ、蓄えた知識でいずれ世に認められるような学者を目指していた。


………… 今は命懸けで脅威度C+の魔物、ロックリザードから逃げているが、彼女は未来の立派な生物学者を目指してひた走るのだッ!!


「もう、いやぁ、追ってこないでよッ!!」



そもそも事の起こりは数日前になる。


フェリアス領の中核都市ウォーレンの東には森林地帯があり、植生や棲息する魔物に興味を持った私は、この都市を最初の活動拠点として選んだ。


そして、森林地帯で手に入る薬草と低級な魔物素材の採取依頼を受けたのが二日前、出会って日の浅い仲間たちと四人で都市からスティーレ川沿いに進み、森林へ辿り着いたのが昨日になる。


それから森の入り口で一晩を過ごし、今日は依頼をこなすために薬草の採取と低級のイノシシ型やリス型の魔物を狩っていた。


一連の過程は順調に進み、昼過ぎにはもう依頼の品は集まっていたので、私たちのリーダーである戦士アレスが皆に意見の確認をする。


「まだ昼過ぎで体力的にも余裕がある。もう少し奥まで行って経験を積みたいんだが……」


私はその言葉に微かな不安を覚えた。


都市ウォーレンからスティーレ川沿いに森林地帯へ入った場合、危険な “バルベラの森 ”と呼ばれる区域が近いのだ。不用意に踏み入ると、周囲の脅威度E+と比較にならない、脅威度C以上の魔物と遭遇する危険性がある。


このバルベラの森の怖い所は “低確率” で周囲の魔物と隔絶した強さの魔物が現れる点にあり、油断をした冒険者が命を落とすことも多い。因みに他の仲間たちはどうやら乗り気のようで、まだ知り合って間も無い私は曖昧に頷くだけで留めることはできなかった。

読んでくださる皆様には本当に感謝です!!

ヒロイン登場ッ、という事でも物語の幅を広げていきますよ~(*'▽')


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― 新着の感想 ―
[良い点] 大将の成り上がりが見え始め、ワクワクが加速しているところに、ヒロインですと⁉︎(゜∀゜) 魔物の進化に関する描写が興味をそそり、世界をより知りたくなりますね∠(`・ω・´)! “低確率…
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