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石英は結構使える奴だ!

【お知らせ】※44話登場のグラップラーの階級をストライカーに変更

即興で、仲間たちを夕飯調達のための狩りにいく組と、バラックたちに同行してスティーレ川に向かう組に分けた。


「ガルワォア、グァンオァ ガルオッ! グルァオ

(それじゃあ、狩猟組は頼むぞ!バスター)」


「ウォオオッ、グルァ!(任せろッ、大将!)」


腕黒巨躯のコボルトが、狩猟組の若手たちを4匹ずつの班に編成する。各班に別々の方角へ向かうように指示を出した後、自身も班を率いて森の木々の中に姿を消していった。


猫人職人の3人が集落に滞在している間はその食事の世話もしなければならないので、彼らには頑張ってほしいところだ。


「グル、グルォアオン…… (さて、俺たちも向かうか……)」


川辺に向かう鍛冶師と大工の二人を先導して南に下る。なお、農夫のジョセフは既にある程度整地された集落の広場の片隅に小規模なイモ類の畑をつくるそうだ。


その予定地で枯れ木や落ち葉を燃やし、生じた灰を土壌に混ぜて養分にする必要があるらしい。それらを拾いにいった彼は別行動となった。一応、そちらには護衛の武装コボルトを2匹ほど付けている。


こちらは俺たちの他にも、粘土や砂鉄の運び出しも想定しているので、1歳世代のコボルト数名とナックルたち垂れ耳犬人も連れてきていた。


「よし、じゃあ先ずは石英を拾うか」


(石英? 粘土じゃないのか)


疑問に思った俺はグリマーの服をちょいと引っ張り、腰袋から石筆を取り出して河原の石を足で左右に退けた後、しゃがみ込む。それに合わせて彼も屈んでくれた。


“石英は何に使うんだ?”


「石英って河原に転がっているけど、あれ、やたらと硬いだろ? 他の石と打ち合わせれば、それを砕いて加工することができるんだよ」


…… 俺たちも黒曜石を加工するが、あまり気にせずそこら辺の石で叩いていた。あれも、石英ならもっと簡単になるんだろうか?


「で、持ってきた道具だけじゃ足りないだろうから、石斧でもつくろうかなと……そこら辺は私よりもバラック君の方が器用かもしれないけどね」


彼は暫く河原を探し歩いて拳大の石英と平べったい玄武岩を拾ってくる。皆の注目が集まる中、石英をハンマー代わりに玄武岩を砕き、削って形を整える。


カンッ カンッ カンッ


と音が響き、グリマーの手元には刃先を削り出された手斧が出来上がっていく。


「…… 俺より断然上手いじゃねーか、グリマーさん」

「ガ、ガゥォ!グルグァアン!! (す、凄い!あんなに簡単に!!)」


なんか、垂れ耳コボルトの内、小柄な一匹がやたらと目を輝かせて興奮している…… そいつは自分でもやってみたかったのか、石斧の完成を見届けると河原に石を探しに走っていった。


「ん、こんなものかな? ちょっと使ってみて」


グリマー氏作の“くの字型”石斧が手渡される。


それは“くの字型”の半分が持ち手で残りが刃になっており、その部分だけ徐々に薄くなっている。全体としての重量はそこそこで切断力もありそうだ。


俺は渡されたそれを右から左に流し、少し離れた場所の直径8㎝くらいの細めの木を指さした。


「ワフッ、ワゥウッ、クァン (おい、アックス、切ってこい)」

「ワゥァン、グルゥクァン…… (やっぱり、僕が切るんだね……)」


そう、伐採といえばアックスしかいない。


奴は俺から渡された石斧を手に指定した木まで歩いていき、慣れた手つきで幹の周りを切り込んでいく。


「ワゥアアァンッ!! (よいしょっとッ!!)」


そして、一周した頃合いで木の上側を持ち、体重をかけてテコの原理で圧し折る。さらに木を掴んだままくるりと捻って、最後の繋がりを切り離す。一時期は毎日朝から夜まで中央広場をつくるために伐採作業に勤しんでいただけはあり、見事な手際だ。


「ワフッ、ガオァウォオオン? (どうだ、石斧は使えそうか?)」

「ワンッ、ウァオン!!(うんッ、大丈夫!!)」


「よかった、問題なさそうだね…… 何言ってるか分からないけど」


戻ってきたアックスから石斧を受け取り、グリマーが微笑む。

大工だけにマッチョなんだが、この猫耳男は妙な爽やかさがあるな……


などと考えていたら、"カンッカンッカンッ"とさっき聞いたような音が聞こえてきた。そちらを向くと、先程の小柄な垂れ耳コボルトがこれまた器用に石英を打ち付けて石斧を成形している。


「お、いいね~、垂れ耳君。じゃあ、これをあと5個はつくってくれるかい?」

「ワゥ? (何?)」


石斧を作る手を止めて、首を傾げる垂れ耳コボルトが一匹。俺はその手元の作製中の石斧を指さし、右手を突き出して全ての指を折り曲げた。因みに、数を含むハンドサインは既に此方の群れに統一されたとアックスから聞いている。


「ワォン、グルァ (わかった、ボス)」


そいつは頷いて又作業に戻った。その姿を見た俺は密かにそのコボルトをスミス(仮)と心の中で名付け、その名称は翌日には確定するのだった……


「さて、粘土を掘るにしても手でやるわけにもいかねぇ、さっきの木を適度な長さに切ってそれで土をほじくり返すか……」


グリマーに手を伸ばして石斧を受け取ったバラックが伐採した木の端を掴んで持ち上げる。地面に残る切り株を台にして、そこに切断したい部分をのせてから石斧を振り下ろす。


「あ、バラック、ついでに先端を尖らして木杭にできるように頼む」

「あいよッ!!」


猫人の鍛冶師は手先の器用さを活かして手頃な長さに切り離した木の棒の先端を削っていく。程なくして、木杭ができあがった。


「クルァアォン、グルァ (器用なものね、ボス)」

「ワァオン、クァン (そうだね、兄ちゃん)」


「グルァ ガルォッ! (俺たちもやるぞ!)」

「「ワフ!? (えッ!?)」」


単に色々作ってもらうだけじゃ意味が薄い、見ているだけじゃなくて、俺たち自身も作業へ積極的に加わっていく必要がある。その意味ではスミス(仮)は見所がある奴だ!


さらに土を掘り返すための木杭を何本か作ろうとしていたバラックを手振りで止める。そして、自分を指差して、その後に木と木杭を順に示した。


「あ~、自分でやりたいのか。好きにしてくれ」


俺は差し出された石斧を受け取って加工を始める。その後、仲間たちも同様の作業をおこなって、数本の木杭が完成した。なお、その際にダガー(妹)は意外と器用なことが発覚したのだった。

読んでくださる皆様には本当に感謝です!

拙い作品ではありますが、頑張って書いて行こうという励みになります!

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