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ゴブリン達の残数は?

……意識を集中して詳しく内面を探ると、身体に宿った力が直感的に理解できる。実際に行使しなければ認識と感覚のズレは埋まらないが、どうやら扱える人外魔法の位階が上昇したようだ。


(系統は相変わらず土と風だな……)


もしかしたら、俺は土と風の属性魔法しか使えない可能性もある。それと魔法以外に “魔力循環を阻害する咆哮” も獲得した故か、体内に異質な魔力の存在を強く感じた。


「ガゥア…… ヴォグァ ガルァアオウゥ、グルァ

(これは…… また差をつけられちまったな、大将)」


何かを察したバスターの呟きが聞こえたが、いま組手をすれば恐らく奴の方が強いはずだ。どうにも俺の成長する方向性は術師型な気がする。


そうなると仲間内の組手で魔法なんて危険なものは使えないため、戦士型のバスターやアックスよりも不利にならざるを得ない。


(……よし、さらに身体を鍛えよう)


一通り考えを纏め終えると不意に痛みが走る。


「クッ (くッ)」


そういえば、巨漢のゴブリンの戦斧で浅く右肩を切られており、 荒事の最中はあまり痛みを感じなかったものの、今となってはじくじくと痛む。


「クォン、クルァアン? (兄ちゃん、大丈夫?)」


心配した妹が近寄り、肩の傷を確認しておもむろにペロペロと舐めだす。


「…………」


何故、獣やコボルトは傷口を舐めるのだろうか? 集落のマザーたちも仔が怪我をしたら頻りに傷口を舐めていたが、やりすぎで酷くなる場合もあったな…… よし、やめさせよう。


グイッ


「ワフッ (あうッ)」


取り敢えず傷口を舐めていた妹の頭を押し返すと、さっきまで折れた槍をくっつけようと足掻いていたランサーから声が掛かる。


「グルァ、ウォアフ クルアァンッ (ボス、多分だけど治せるわッ)」


彼女は白い毛並みの掌を伸ばして、肩の傷口に肉球を押し付けると意識を集中させた。


「…… クルアォンッ (…… 癒しの聖光ッ)」


「オォッ! (おぉッ!)」


暖かな燐光に包まれて肩傷が徐々に塞がっていく…… 回復魔法を使えるのは仲間内では初めてだが、正直なところ癒し手がいるのは心強いな。


「ワォアン (ありがとう)」


礼を述べてから、改めて視線をランサーに向けるとその手にはいつもの槍が無い……


代用できそうな物を探して周囲を見渡せば、土塊の牙に貫かれたまま止めを刺されたゴブリンの一匹がボロい槍を持っていた。


まさにゴブリンスピアという感じだが、穂先自体は錆びていても金属製だ。

俺はそれを掴み取ってランサーへと手渡す。


「…… グルァ、ガルァォオン? (…… ボス、これを使えと?)」


彼女は微妙に嫌そうな顔をしていたが、背に腹は代えられないため渋々受け取り、戦闘後の諸々に一応の区切りがついた。


「ねぇ、アーチャー、これからどうするの?」

「ガォウァ…… (そうだな……)」


現状で確定しているのはルクア村から避難した猫人(ねこびと)たちと合流することだ。リズを彼女の仲間のところに届けないとな。


その後は現状の戦力だけで対処するか、若しくは集落まで撤退して犬人と猫人の二種族でゴブリンを殲滅するかだが、敵方の総数や猫人族の戦力が読めないので判断はできない。


色々と確認すべきことがあるし、ここに留まっていても仕方ない。


「グルォ、ガォウオォンッ (皆、一旦退くぞッ)」


リズにも分かるようにルクア村の西側の森を示して移動を始める。彼女は広場から見える犠牲になった猫人たちの亡骸をもう一度だけ見渡してから俺たちに続いた。


その後は暫く森の中を移動し、猫人たちの村から程よく離れた場所に仲間を待機させてから、ゴブリンたちの情報を得るために単独で引き返す。


ルクア村に同族を残していたことを考えれば、奴らは戻ってくるつもりだろう。


その際は猫人たちを追い込んだ北側の森から出てくるはずなので、周辺を見渡せるような木を探して樹上に身を隠した。


そこで息を潜めてゴブリンたちを待ち、四半刻に少し満たないくらい過ぎた頃だろうか?


最初に森から姿を現したのはフードを被った魔術師風のゴブリンに率いられた十数匹の隊であり、縄で両手を縛った猫人の女性二人を引き連れている。


彼女たちは左右の足も縄で繋がれており、歩幅を制限する事で走れないようにされていた。


暫く様子を眺めているとゴブリンたちは広場で倒れている巨漢の仲間に気付き、襲撃者への警戒を強めながら周囲の状況を確認していく。


その間に森からゴブリンの小集団が三組ほど出てきた。連中も半裸の猫人女性を四人ほど連れており、彼女たちの身なりから捕まったその場で穢されたことが窺える。


さらに後続として姿を見せた長身痩躯のゴブリンの隊、鍛え上げた身体つきをした大柄なゴブリンの隊で戻ってくるのは最後のようだ。なお、大柄なゴブリンの隊も二人の猫人女性を捕らえていた。


(大体、今のゴブリンどもの残数は五十匹強程度だろう。ただ、妙なのが三匹と戦士級が数匹いるな……)


最初に森で俺たちが始末したゴブリンが五匹、ルクア村の広場で倒したのが十三匹だ。加えて猫人の戦士達が倒したであろうゴブリン十匹ほどの遺骸も確認している。


(ふむ、元々は約八十匹強ぐらいの中規模クラスに属する群れか)


俺はそれから暫く樹上に潜み続けて、新たなゴブリンが現れないことを確認した後、木の枝を飛び移ることで樹上を移動して、仲間たちの下へと戻った。


……………

………

読んでくださる皆様には本当に感謝です!!

拙い作品ではありますが、頑張って書いて行こうという励みになります。

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