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ユニコーンの角は鋭い

大きく利き足を踏み込みながら、小鬼族の重戦士は鉄槍に貫かれたままのゴブリン・ファイターを大盾で脇に押しのけ、槍柄を握るランサーの体勢を崩す。


「クァ!? (くッ!?)」


よろめく彼女を目掛け、巨漢のゴブリンが大きく戦斧を振り上げて自重を乗せた斬撃を叩き下ろしてくる。それはバスターが本気で放つ渾身の一撃に比類するほどだ。


「クゥアウッ! (ランサーッ!)」

「キュアンッ! (うきゃあッ!)」


咄嗟に槍を手放したランサーが斜め後方に飛び退り、戦斧の振り下ろしを回避するが……


 バキッ


「グッ、グルゥ ヴォルクーッ!! (わ、私の槍がーッ!)」


躊躇なく振り下ろされた一撃は彼女の愛槍を断つ。


「ガルォッ!! (このッ!!)」


ランサーは怒りつつも剣帯の鞘から短剣を引き抜き、半身になって右掌に握り込んだ得物を構えた。


これはナイフを用いて戦う時の基本スタンスのひとつで、身体の側面を向けることにより攻撃を受ける面積を減少させ、さらに心臓や内臓も狙われ難くする意図を持つ。


だが、短剣一本で御し切れる相手でもないだろう………


「ガゥガルゥッ (ここは退けッ)」

「ウォアオンッ、グルァ (後はお願いッ、ボス)」


再び後方へ飛んで戦斧の範囲外へとランサーが退避するのに合わせ、俺は逆に踏み込んで間合いを詰めながら短戦槌の爪を振るう。


「グルァオオォッ!! (ぐるぁおおッ!!)」


「ウガァアアッ!!(うがぁああッ!!)」


咆哮と共に繰り出した一撃へと反応し、奴も気勢を上げて大盾を構えたまま突進してきた。


「ガハッ!?(がはッ!?)」


巨漢ゴブリンの体重を乗せた突撃に俺は短戦槌ごと弾かれてしまう。よろけながらも何とか体勢を維持するが、一瞬の隙を逃さずに奴は戦斧を振り上げて追撃を放つ。


「ガァッ!! (がぁッ!!)」


即座に飛び退くも、右肩を浅く切られて血飛沫が舞った。


その直後、巨漢のゴブリンの背後で “縛鎖の牙” に縫い留められた小鬼たちの頭を踏みつけ、高く跳躍するダガーの姿を視界に捉える。


「ヴルァアァンッ !! (刺しちゃうよッ!!)」


妹は落下の勢いを乗せて、巨漢のゴブリンの背中へ逆手で握り込んだ二つの短剣を突き刺す。


 ギィインッ

 ズブッ


「ッガァアァッ!?」


二本の短剣の内、野盗から奪った普通の短剣はブリガンダインに仕込まれた小鉄板に弾かれたが、黒いユニコーンの角を加工した刺突短剣はその小鉄板の繋ぎ目を貫通して、相手の右肩を深く抉った。


「グルァアッ!ウォフッ!! (みごとだッ!妹よッ!!)」


一撃離脱でダガーが巨漢のゴブリンから離れるのと入れ替わりに、俺は左手に風属性の魔力を籠め、体勢を崩した奴に向けて吶喊する。


「ッ、ウガァッ!!」


巨漢のゴブリンは盾を構えるが、その端に短戦槌の爪を引っ掛けて外側にどけながら、左の掌底を顔面に叩き込む!


「ギウゥッ!?」


「ウォフ、ヴォルオゥ! (風よ、切り裂けッ!)」


そのまま相手の顔面を掴んで風属性の魔法 ”風刃” を至近距離で撃ち放つ。


 ブシュッ


「ゲァッ……ァ……ッ……」


噴き出した奴の血をもろに浴びてしまうが、気にはしていられない。少し遅れてカランッと音が鳴り、巨漢のゴブリンが被っていた鉄兜が地面に落ちて転がった……


片が付いたところで改めて視線を巡らせると、“縛鎖の牙” から逃れたゴブリン二匹もバスターとリズに倒されており、既にルクア村の広場での戦いは勝敗が決していた。


残るのは土塊の牙に下半身を大地へと縫い付けられたゴブリンたちのみだ。飛び道具も持っていない様子で脅威にならない。その状況を確認した後、俺は自分の身体をちらりと確かめる。


先程ランサーの進化を見たためだろうか…… 自分もゴブリンの変異種を倒したことで何か変化は無いか気になったのだ。


(ぐッ、何も変わってないか)


軽く落胆していると不意にゴブリンの断末魔の絶叫が響く。


「ギィァアァアッ!!」


何事かと視線を向ければ、リズが “縛鎖の牙” に捕らわれたゴブリンの胸にラージナイフを何度も突き刺している。


「このッ! よくも皆をッ!!」


「ギ…ィ…アッ………ゥ」


村の広場にはこの場で戦った数名の猫人(ねこびと)の遺体が転がっていた。その光景が彼女の激情を駆り立て、既に絶命したゴブリンへと幾度も刃を突き立てさせる。


どうせ、このゴブリンどもは始末するので好きにさせておこう。


俺もおもむろに短戦槌を振り上げた。


「グ、グギャォ…… (た、助けて……)」


何やら言っているようだが…… 俺に奴らの言葉など分かるわけもなく、機械的に短戦槌の爪を頭蓋に振り下ろす。


「ゲァ…ァ…」


残りの身動きできない小鬼たちもリズと一緒に仕留めていき、最後の一匹の頭蓋に短戦槌を振り下ろした瞬間、意識が白く染まっていく。


……………

………


そして、どこからともなく降り注ぐ祝福と喝采に意識が呼び起こされる。

気がつけば、俺は白く輝く螺旋階段の上で佇んでいた。


「ガゥ、ワォフルァウ グルォオゥ…… (さて、終極を目指して昇ろうか……)」


そこに何があるかは知らないが、どうやら皆がそれを知りたがっているようだ。

ある者は期待を込めて、ある者は辟易として、ある者は憎しみを抱いて。


それはさておき、物事の “真理” と “本質” は同一の概念ではない。

真理とは絶対的な唯一を指し、本質はそれに近いが違うものだ。


弓矢の訓練に用いる的の中心を真理とすれば、その周辺が本質となる。

真理ではないが本質を外してもいないといった具合に……


この場に集う彼らは本質的な部分を共有しているが、求める真理はどうやら異なる。


(まぁ、俺には関係ないけどな)


などと考えていると極端に足が重くなっていき、頭の中から此処での記憶が掠れて消えていった。


……………

………


「アゥ、クォン ウォフアオォウンッ? (あれ、兄ちゃん雰囲気が変わった?)」


「ガルゥ、ヴォルクオォウン…… (これは、魔力の質が変わったか……)」


身体的な変化はあまりなく、強いて言えば毛並みが艶やかな銀色になったくらいだが、体内に魔力と生命力が漲る。



通称:アーチャー(雄:俺)

種族:コボルト

階級:エルダー・コボルト

技能:中級魔法(土・風) バトルクライ(眷属鼓舞) 魔力強化(小 常時)

   ハウリングノイズ(魔法を一定時間阻害)

称号:森の賢者

武器:弓矢(主) 短戦槌(補)

武装:レザーアーマー



どうやら、また少し強化されたようだ……

読んでくださる皆様には本当に感謝です!!

拙い作品ではありますが、頑張って書いて行こうという励みになります。

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