武装コボルトの誕生
戦利品の内訳は、武器がロングソード一本、槍一本、弓一セット、短剣二本、大剣一本、戦斧一本、それにショートソードが一本だ。防具はレザーアーマーが四着、シールド二個、マント四着である。
「キュゥンッ(マズっ)」
「クァウゥ、クァルォア ウォオルアォン!
(おいこら、槍の穂先を舐めるんじゃねぇ!)」
初めて鉄の味を知った一匹が何とも言えない表情をしている。
まさか、武器の使い方を知らないとかじゃないよな、それは食べ物じゃないんだぜ、友よ…… いや、集落のコボルトたちは黒曜石を棒に括り付けた槍を使っているので大丈夫なはずだ。
ともあれ、近場の森に戻り、普段の狩りの中で武器の使い方を実演してみせる。
「グルゥ、クァン (そっち、いったぞ)」
「ワフッ、グルゥアッ!! (あぁ、任せておけッ!!)」
仲間が追い込んだ猪の横合いから突撃して、力任せにロングソードを振り抜く。
「ブオァアッ!? ブオォ……ッ、オォッ」
腹に大きな傷を負った猪は踏み止まろうとするが、やがて力を失いゆっくりと地に伏した。
「クァアーン♪ (ご馳走だ♪)」
「キュア♪ (やった♪)」
皆が喜びの鳴き声を上げて近寄ってくるが、肉を分けあう前に先ずは武器の分配だ。俺は本能に忠実過ぎる仲間たちと獲物の間に身を割り込ませ、ロングソードを掲げた後にイノシシの傷口へと剣先を向ける。
「クゥ? (ん?)」
そうすると一匹がその鋭利な切り口に気付いて興味を持つ。
(よしよし、いい感じだぞ!)
俺は鞘に戻した剣をそいつに持たせると次に戦斧を手に取り、絶命したイノシシの脚を切り落とし、切断力を示した上で無骨な武器を先程とは別の一匹に渡した。
「ウゥ、クゥアオゥ(うぅ、危ないよぅ)」
イノシシの脚がスッパリと切れたことにビビったそいつが恐る恐る戦斧を手に取った後、同じように大剣の試し切りを行い、それを同世代の中で一番体格の良い雄に手渡す。
「オファ……(重いな……)」
最後に短剣を使ってイノシシの魔物を捌き、皆で夕餉を取るのだった。
「キュウ~ (幸せ~)」
「クァアーン (お腹いっぱい)」
牡丹肉を食べ終え、そのまま幸福そうに寝転がる幼馴染たちを叱り飛ばす。
「グルォ、グルガォウアァッ!! (お前ら、腑抜けるんじゃねぇ!!)」
まだ装備に関する指導は終わっておらず、次は防具を身に着けさせる必要がある。ただ、どうしても元傭兵の俺でさえ着用したレザーアーマーに名状し難い違和感を持っており、皆の反応が気になるところだ。
(今まで腰蓑しか着けてなかったからな……)
ともかく、ここは心を鬼にしなければならない。
俺は大剣を持つ仲間、通称バスターを立たせて胸板を殴る。
「グルァ、ガルォウッ!? (大将、何するんだ!?)」
痛がるバスターに、レザーアーマーを無理やり着用させ、もう一度同じように胸板を殴る。バスターは体に力を込めてその衝撃に備えるが……
「クゥ、ワフォン? (ん、痛くない?)」
首を傾げて俺とレザーアーマーを交互に見るバスターに防具の重要性を知ってもらった後、妹にもその意味を知ってもらうため、先程と同じように彼女の胸元を軽く殴る。
「ワファ!? ク、クォーンッ!! (痛い!? に、兄ちゃん!!)」
妹には割と甘かったために殴られたことで何やら混乱しているが、有無を言わさずにレザーアーマーを着用させ、再度同じ個所を殴りつけた。
「ワゥ、クゥワフォン? (アレ、あんまり痛くない?)」
どうやら、鎧の意味を理解してもらえたようだ。
さらにロングソードを持つ通称ブレイザーと、戦斧を持つ通称アックスに盾を装備させ、彼らには格闘訓練の形式で俺の拳を何度も受け止めさせて盾の使い方を覚えてもらう。
最後にマントを妹ら雌二匹とブレイザー、バスターの二匹に与えて以下の構成となった。
通称:バスター(雄)
種族:コボルト
武器:大剣
武装:レザーアーマー
補助:マント
通称:ダガー(雌:妹)
種族:コボルト
武器:短剣(主) 短剣(補)
武装:レザーアーマー
補助:マント
通称:ブレイザー(雄)
種族:コボルト
武器:ロングソード
武装:シールド
補助:マント
通称:アックス(雄)
種族:コボルト
武器:戦斧
武装:シールド
補助:なし
通称:ランサー(雌)
種族:コボルト
武器:槍
武装:レザーアーマー
補助:マント
通称:アーチャー(雄:俺)
種族:コボルト
武器:弓矢(主) ショートソード(補)
武装:レザーアーマー
補助:なし
俺が何故、弓を選んだかって?
誰も使えなかったからだよッ!
俺も上手く命中させられる気がしねぇ……
「ガルワォオオンッ! グルァウ ワゥウオォンッ!!
(弓なんて飾りですッ! 偉い人には分からんのです!!)」
…… くだらん事を言うよりも練習が必要だな。
こうして武装を遂げた俺たちは徒手空拳の訓練に加えて、黒曜石のナイフで加工した木剣や木槍などを用いた訓練を行う。その合間に俺は一人で弓矢の練習をして、何とかまともに扱える状態まで腕を上げた。
そして、武器調達から2ヶ月ほど経った頃、コボルトの群れ三十数匹の中で異彩を放ち、狩りの成果も上々な五匹の仲間を従えている俺は戦わずして集落の頂点に立った。続く序列二位は最近頭角を現したバスター、序列三位は我が妹のダガーである。
この時、俺たちは2歳と2ヶ月であった。
なお、コボルト族の寿命がどれくらいなのかを群れでは誰も知らない。力が衰えたあたりで狩りから戻らなかったりして姿を消していくからだ。それはさておき、最近では年の近い三~四歳のコボルトたちも各自で鍛錬を積んでいる。
そんな彼らの力も借りて、俺と仲間たちは若い一歳前後のコボルトや、生まれたての仔ボルトたちを護る立場となり、集落の生活水準や防衛能力の向上を目指す。
作中のステータスは賛否両論ありますけど、
分かり易さがありますよね~
★ 物語の書き手としての御願い ★
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