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そのリス、凶暴につき

「グルァ、ガルグァオンッ…… zzz

(大将、この世界を頼むッ…… zzz)」


いや、重すぎるだろッ!

どんな夢を見てんだよッ!!


朝からバスターの意味不明な寝言を聞きつつ、頭を左右に振って意識を覚醒させる。


「ワファ…… (眠い……)」


確か昨日は朝からミュリエルを送りにヴィエル村に行って、野盗を凹って、色々して帰ってきたらもう夜で、そこからダガーが狩ってきたイノシシの肉を焼いて食った。


そしたら、既に夜更かしするような遅い時間になっていて……


別に天気が悪いわけでもないし、アックスが伐採拡張してくれた集落の中央広場に皆で仰向けになって、そのまま星空を眺めながら寝たんだったな。


「zzz…… グゥア、グゥアルゥアァオンッ、ガルォクァウゥッ!!

(zzz…… リスが、リスがいっぱいだよぅ、ここはもう駄目だ!!)」


アックス、貴様もか…… リスがどうしたというんだ。

本当に意味が分からんな。


「ガルゥ ワォンワォオオン (俺も何か言ってたりしてな)」

「フッ 」


その呟きに反応して意味ありげな溜息を漏らした長身痩躯の幼馴染を一瞥し、少々離れた場所で狐しっぽを身体に巻き付けて丸まっている妹に視線を移す。


「ウ~、クォン、ワアォンッ (う~、兄ちゃん、おはようッ)」

「ンッ…… (んッ……)」


妹の身じろぎで一緒にくっついて寝ていたランサーも目覚め、朝の木漏れ日の中で身体を伸ばしていく。


俺も体をほぐして本格的に目を覚ました後、暫くは穏やかな朝の時間を過ごしながらバスターとアックスが起きるのを待ち、改めて広場に並べた戦利品の検分を行う。


基本的にショートソードやロングソードばかりだが、頭目が持っていた戦槌、弓、スリングショット、大剣、手槍も少し混ざっている。それに手入れのための砥石も野盗たちの生活物資の中にあった。


防具に関しては軽装鎧が中心となるが、小型の金属片を軽装鎧に仕込んだブリガンダインなどもある。ただ、試しに着てみたところ、敏捷性に影響してしまうため、俺たちコボルト向きの装備ではないと判明した。


結局は革製の軽装鎧をまだ頼らせてもらうことになりそうだ。


そのレザーアーマーも今回の戦利品で追加されており、バスターやアックスの斬撃、ランサーとブレイザーの刺突で破損して使い物にならなくなったものを除いても新たに十数個が手に入った。


「グルァ、ガル グルゥアオッ (大将、これを俺にくれッ)」


それら装備の中からバスターが持ち上げたのは両手持ちの大剣だ。今使っているやつはかなり傷んでいて刃も一部が欠けている。そりゃ、常に渾身の力で振り回せば消耗が激しくなるのは当然だろう。


「グァ、ワォンッ (あぁ、構わない)」

「ガルァォンッ (有難いッ)」


腕黒巨躯のコボルトが新調した大剣の重さや手に馴染むかを確認する様子を横目に見つつ、地面に並べた武器から飛び道具を手に取る。


「ワオァン、ガル ガォアン? (ブレイザー、コイツは使えそうか?)」

「ワゥ、クルゥン ウォオオン…… (あぁ、人間の礫か……)」


俺は足元の小石を拾ってスリングショットに装填し、中央広場の端っこに立つ木を狙い撃つ。礫が木に直撃してビシっと衝突音が鳴り、僅かな木片が宙に飛んだ。


「ガル…… グォオアガゥ (これは……不意討ち向きだ)」


興味を示すブレイザーにスリングショットを放り投げてやると器用に受け止める。後、奴のロングソードも相応に傷んでいたので、戦利品の物と差し替えた。


「グルァ、グルゥウ? (ボス、僕のは?)」

「グルォアン、 ウォオォン (戦斧はないが、剣にするか)」


「ン~、グルォアオォン (ん~、戦斧が良いよ)」

「グルゥ クゥガオォン (あたしも短剣でいいや)」


ということで、アックスは今と同系統の武器が手に入らなかったので変更なし。妹は “バルベラの森” で入手した漆黒のユニコーンの角を加工した刺突短剣がお気に入りなので、補助として使っている短剣だけを新しいものと交換した。


「グゥ、グルゥ、ガルォウォオンッ (まぁ、皆、慣れている武器が良さそうね)」


ランサーは目新しい手槍といつもの槍を両手に持って比べて、結局はリーチのある従来の槍を使うことにしたようだが、それとは別にちゃっかりと短剣の一つを確保している。


なお、今回手に入れた防具によりアックス以外の五匹はレザーアーマーを装備できた。何故、アックス以外かと言うと、今回の野盗たちの体格では奴の身長190㎝超えのマッチョな体躯に合う大きさの軽装鎧が無かったためだ。


防具を漁っていた際、動きが阻害されるとのことでブレイザーが盾を持つことをやめ、ある程度の攻撃を弾ける鋼鉄の籠手を腕に装着していた。


因みに当初の頃に仲間が身に付けていたマントも自前の毛皮がある俺たちには必要がないと早々に気付き、既に裂いて布へと加工している。


結果的に皆の装備は以下の通りとなった。



通称:バスター(雄)

武器:盗賊の大剣(交換)

武装:レザーアーマー


通称:ダガー(雌:妹)

武器:刺突短剣(主) 盗賊の短剣(補:交換)

武装:レザーアーマー


通称:ブレイザー(雄)

武器:盗賊のロングソード(主:交換) 盗賊のスリングショット(補) 

武装:レザーアーマー 鋼鉄の籠手


通称:アックス(雄)

武器:戦斧

武装:シールド


通称:ランサー(雌)

武器:槍(主) 盗賊の短剣(補)

武装:レザーアーマー


通称:アーチャー(雄:俺)

武器:弓矢(主) 盗賊の短戦槌(補)

武装:レザーアーマー



「ワフ? グルゥア ワフィルォオゥフッ

(あれ? 僕だけ何も変わってないよッ)」


何やらアックスの不服そうな声を聞きながら、実は密かに確保していた短戦槌を眺める。この鉄芯に鋭く尖った太い爪を備え、反対側が槌となった武器は戦い方の幅を広げてくれるだろう。


ともあれ、俺たちの装備を整えてから三~六歳世代のコボルトらにも武器を回して、鉄製武具を装備した同胞が俺たち以外にも群れに十数名追加された。

読んでくださる皆様には本当に感謝です!!

拙い作品ではありますが、頑張って書いて行こうという励みになります。

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― 新着の感想 ―
[一言] この冒頭のバスターの寝言が伏線になってるんですね。わかりません
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