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コボルトは雑食です

「クゥ!クォン、ワォア~ン (あ!兄ちゃん、おかえり~)」

「「グルァ、ワォアンッ (ボス、おかえりッ)」」


「ワフッ、ガォルウ (あぁ、ただいま)」


月明かりが照らす中、俺は帰りを待っていてくれたダガーや、まだ起きていた集落のコボルトたちに挨拶を返して、二台の台車から運び出した木製の食器類や調理器具を載せた鉄板を集落の中央広場に置く。


さすがに森の中は木々があるし、悪路になるので戦利品を積んだ荷車は浅いところに止めてある。そこからは自分の手で荷物を運ぶ必要があるのだ。


「グルァ、ガルォオオン? (大将、どこに置くんだ?)」


刀剣類を麻紐で纏めて肩に担いできたバスターが尋ねてくる。


「ヴルァ、ガルォン (とりあえず、こっちだ)」


武器類は必要なモノを確保した後、俺たちより先に生まれた三~六歳世代に配ろう。さらに防具類を抱えてきたアックス、革の水筒を両手に持ったランサーにも置き場所を指示し、種類ごとに纏めて中央広場に置いていく。


「ガォオウ、クゥア ウォオアンッ (済まないが、お前たちも手伝ってくれッ) 」


「ワンッ、グルァ (分かったよ、ボス)」

「アォ~ン (運ぶよ~) 」


呼びかけに対して、その場にいた若手で一歳世代の三匹が集まってくる。俺たちがそうであったようにコボルトは同じような時に生まれた者同士の繋がりが深いため、一匹がやってくると残りも後に続くのだ。


因みにバスターとブレイザーに鍛えられているので、たまに “不意討つぜぇ!” とか “この一撃に懸けるッ!” などの台詞が聞こえてくる。そんな癖の強い部分まで見習う必要はないんだが……


ともかく、俺たちに加えてこの人数がいれば運び出しに十分だろう。

後、一往復といったところか……頑張ろう、それが終われば遅めの晩飯にしよう!


もともと、ヴィエル村に出かけている間に妹が晩飯の狩りをしておく手筈になっていたが、どうやらイノシシ型の魔物を仕留めてくれたようだしな!!


……………

………


なお、基本的に俺たちコボルトは悪食だ。

森に自生する植物や果実などは大抵問題がない。


生物的進化の過程において様々な犠牲を出しながらも消化器官を発達させ、耐性を身に付けたのだろう。厳密に言えば、犬が食べられない野菜などでも普通に食べられるし、アルコールもOKだ。


焼いた肉でもいつもと違った味わいを感じることができる。焼いたものを食べる習慣のない大抵の野生動物は熱い食べものに対する耐性がないものの、コボルトは熱いものも割といけるのだ。


俺たちの集落には習慣がないが、上位種のコボルト・メイジがいる群れでは日常的に火属性魔法で起こした火で焼いたものを食べる文化もあったと記憶している。ただ、ちょっと前にミュリエルのために火を通した肉を食べた時に、熱さに慣れていない舌では肉を少し冷まさないと熱過ぎるのは経験済みだ。


「グルァ~ン、クゥアゥウ? (ボス~、まだだめ?)」

「ガゥ、ウァオン、ワゥウッ(まぁ、もう少し待て、アックス)」


俺のコボルト的味覚では、軽く表面を焼く程度のレアが一番美味しい。

それに冷めるのも早いからな。


「フーッ、フーッ、ワゥウッ ウォルワォオン

(ふーっ、ふーっ、アックスこれなら大丈夫よ)」


「ンッ、ワォアンッ! (んッ、ありがとうッ!)」


ランサーが木皿に取り分けたイノシシ肉に息を吹きかけて冷ました後、アックスにそれを渡す。


「ワゥッ、キュア~ン♪ (お肉、美味し~い♪)」

「グルァ、ガルゥウッ (御頭、俺にもくれよッ)」


「ヴルァッ! (応よッ!)」


ダガーが黙々と短剣で切り分けたイノシシ肉を俺がどんどんと中央広場に設置した鉄板で焼いて、仲間たちの木皿に放り込んでいく。


「……ワゥ、クォン、グルォ ガルォファアン?」

(ね、兄ちゃん、あたしたちが食べられなくない?)


「アッ…… (あッ……)」


気がつけば、イノシシ肉の結構な量が仲間たちの腹に入っていた。

こうして、色々とあった一日も終わりを迎えていく。


……………

………


一方、野盗らに襲われてから一日が経ったヴィエル村では、ミュリエルとマリルが客人を待つ。


この村は元々、ゼルグラの町に住む猟師たちがイーステリアの森の近くに休憩するための拠点を用意したのが始まりとされている。


その経緯もあって、ヴィエル村で起きた今回のような野盗襲撃などの大きな事案では、ゼルグラの町の司法院が彼らを裁くことになっていた。


「軽度なものなら、村長の裁量で代理として裁くこともできるんですけどね…… すみません、魔導士様」


「別にいいわよ。どうせ私もゼルグラの町の冒険者ギルドに行く用事があるし、それに一晩泊めてもらったから」


昨日、なにかと衝撃的だったコボルトたちと別れてから、マリルの勧めもあって彼女の家、村長宅にお世話になっている。その際にゼルグラの町の司法院への状況説明を頼まれてしまった。


まぁ、色々と説明し難いでしょうね……


昨日の時点ですぐにゼルグラの町への連絡役は出立しているので、もう直ぐ町に駐留している警備兵を連れて戻ってくるはず。


私は何気なく、遠見の魔法を使って街道の先を見る。

その視界には30人程度の統一感のある鎧を着たフェリアス領兵が映った……

読んでくださる皆様には本当に感謝です!!

拙い作品ではありますが、頑張って書いて行こうという励みになります。

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