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野盗達の生活物資はどこに?

ヴィエル村から立ち去るにあたって俺たちは一度、集落よりもやや北東にあたる“バルベラの森”に向けてゆっくりとマリルたちや野盗たちの視線を受けつつ去っていく。


「ん、どうやら彼らは “バルベラの森” から来た変異種のようね」


「“バルベラの森” ですか……それならあの強さも納得できます」

「この辺りの森でハイ・コボルトなんて見たこともないですからね……」


赤毛の魔導士ミュリエルの呟きに自警団員たちが同意する声が背後から聞こえてきた。後のことは済まないが彼女に全て任せることにしよう。


ただ暫くは、イーステリアの森外縁部に斥候を出して警戒しておくか…… もしもの時に備えて、もっと森の奥に集落を移せそうな場所を確保する時期なのかもしれないな。


そうなると、今向かっている北東は髑髏マークの危険地帯 “バルベラの森” だから、必然的に森林地帯の南東を目指すことになる。


まぁ、転ばぬ先の杖という奴だ。

時間のあるときに下見にでも行こうか……


色々と先のことを考えながら、短い草が広がる草原の中を暫く進む。やがて村から俺たちが見えなくなった頃合いで、進路を森とは反対の西に向け、鼻を利かせつつ注意深く辺りを見回しながら移動した。


それからあまり時間をかけることもなく、先頭を進んでいたブレイザーが立ち止まる。


「グルォン、グルゥアォ? (ブレイザー、見つけたか?)」

「ワフッ、グルァ、ウォオオンッ! (あぁ、御頭、バッチリだッ!)」


そこにあったのは地面に生える草が踏みしめられた不自然な痕跡だ。先程の野盗たちはこの痕跡が指し示す道なき道を通り、ヴィエル村までやってきたのだろう。


そして、野盗といえども多くは元傭兵であるため、行動は自然と類似する。通常、傭兵は剣を振るう戦闘時に直接関係のない生活物資を携帯していない。


では、どこにあるのか?

後方の陣幕の中、若しくは主戦場から少し離れた場所に隠すのである。

ヴィエル村で遭遇した野盗も武装と小道具以外は持参していなかった。


つまり、彼らの生活物資などがヴィエル村近辺の草原に伏せられているはずだ。まさか霞を食べて生きているわけではあるまい。


「グルァ クルァアゥ…… (ボスの言う通りだわ……)」


その十数人の野盗たちによって踏みしめられた草の跡を眺めて、ランサーが呟く。

…… まぁ、ミュリエルが持っていた周辺地図と勘が当たったおかげに過ぎないけどな。


だが、直感を馬鹿にできないのも確かだ。

それらの多くは類似した状況の経験則を基として無意識から得る感覚である。


今回の思い付きに無理やり理屈をつけるとすればだが……


根拠としては、ゼルグラの町と都市ウォーレンを結ぶ南北の街道、それを横切るスティーレ川の支流、ゼルグラの町からヴィエル村へ延びる東西の街道とそれらの位置関係かな?


両街道を狙えて水源に近く、渡河の必要性が無い川の南側、いざとなれば東部の森に逃げ込める場所と考えれば、野盗たちの生活範囲はかなり限定的になる。


総合的に判断すれば、彼らはスティーレ川支流の南側かつヴィエル村の北側から来たことが推測される。一度、北東の森方面へ集落を特定されないために進んだ後、そこから西進すれば野盗たちの移動痕跡と交差する可能性があったのだ。


「グルァ、ガオォアン…… (御頭、斥候に出る……)」

「ワフ、グォン (あぁ、頼む)」



【発動:気配遮断(中)】

【効果:自身の気配を気取られにくくなる】



すぐにブレイザーの気配が薄くなり、目の前にいるのに実感が得にくくなってくる。そのまま奴は痕跡を追って北に駆けていった。


恐らく、村の近くまで生活物資を持ったまま移動することはないだろうから、この痕跡を北に辿れば隠してある物資と見張りに辿り着くはずだが…… 南の可能性もあるのか?


などと不安になっていると声が掛かる。


「グルァ、ウォアガルゥウッ (ボス、水が飲みたいよぅ)」


俺は野盗たちから回収した革の水筒の蓋を開け、中身を確認して軽く口に含んで安全を確認してから、それをアックスに放り投げた。


「ガゥウォアル ワォオアァン (その革水筒はお前が使え)」


「ワゥッ! クルァオォン? (えッ! もらっていいの?)」


アックスは嬉しそうに革の水筒を受け取り、蓋を開けて口を付ける。


「ブフォッ!?」


そして、中身を噴き出した。

僅かにアルコールの匂いが漂ってくる。


「ワ、ワフィッ! (な、何これッ!)」

「ガゥッ、ガォンッ (ははッ、酒だッ)」


そもそも、集落でも一部の者は果実を発酵させてお酒を造って飲んでいるが、あまり一般的ではないし、アックスが飲んでいるところを見たことは無い。


やはり初めてだったか。

その俺たちのやり取りをランサーはジト目で見ていた。


「グゥ、グルァオウ…… (もう、またボスは……)」

「ワゥ、ウォオオンッ (まぁ、いいじゃねぇか)」


少し砕けた雰囲気の中、不意に草を掻き分ける音が鳴ってブレイザーが姿を現す。


「ウォオアゥ、グルァ (戻ってきたぜ、御頭)」

「グァウォン? (どうだった?)」


「ガルクォオオォファ ガルア、 ガルオァアゥウ」

(そんなに離れていない場所だ、見張りは二人いた)


では、そいつらの身ぐるみも剥がそうか……


ブレイザーの先導で姿勢を低くして野盗たちのキャンプまでそっと回り込むと、視線の先では気だるそうな表情をした見張りが欠伸を咬ましていた。

読んでくださる皆様には本当に感謝です!!

拙い作品ではありますが、頑張って書いて行こうという励みになります。

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