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G騎兵 VS コボルト槍兵

「ッ、ヴァリギァッ、エド ギラゥディ!

(ッ!? ヴァリ様ッ、村が燃えています!)」


「グッ、ギドラ ガルデス! ディゼ ガドスッ!!

(ぐッ、今更止まれんぞ! 全騎突貫ッ!!)」


既に騎乗している二足歩行の土蜥蜴(ランドリザード)はかなりの速度に達しており、急制動を掛けると大きな隙を晒してしまうため、騎兵隊を指揮する族長のヴァリは突撃を敢行させるが……


「 ッ、ウォアゥッ! ヴァオォア!! (ッ、きたかッ! 仕掛けろ!!)」


ハスタの合図に従って、敵騎兵隊の横合いの茂みから落ち葉を撒き散らし、鉄槍を構えた白黒混毛のコボルト6匹が強弩(バリスタ)で射られた矢の如く飛び出す!


彼らは戦闘直前の睨み合いの最中、比較的に大柄な者たちが多いブラウ隊の陰でゴブリンたちの意識から外れ、密かに息を潜めて身を隠していたのだ。


これには右翼の戦力が薄く、かつ槍兵が少ないと錯覚させて、仇の敵騎兵隊を引き付けるというハスタの意図がある。ただ、伏せている仲間は機が満ちるまで戦闘に参加できないため、本当に右翼が薄くなってしまう事は避けられない。


その分だけ被害が増えてしまうブラウの犬族たちには事前に話を通し、ハスタは部隊に属する白フワコボルトを含む3匹と共に、立て耳巻きしっぽのコボルトたちを支援していた。


それでもゴブリンたちの凶刃に倒れる同族がいる状況で、機を待つためとはいえ、息を潜めているしかない伏兵たちのフラストレーションは如何ほどだったのか……


「グルォガルグッ、ウォアオォン! (皆の仇ッ、ここで討つ!)」


「ヴォルァアァッ、ウルガォ! (死に晒せやッ、害獣どもが!)」


憤怒の表情でヴァリ率いる騎兵隊の先陣目掛け、白黒混毛のコボルト槍兵6匹が横合いから身体ごとぶち当たっていく。


「ウォオオオ!? (うぉおおお!?)」

「ギウァッ!! (なにぃッ!!)」


「「グゥウゥッ―――ッ!!」」


突然の強襲に慌て驚いたランドリザードたちが勝手に回避と急制動を取り、思わずしがみつく小鬼族の騎兵たちと諸共に倒れ込む。


その致命的な隙を逃すはずもなく、白黒コボルトたちの繰り出した鉄槍が騎兵やランドリザードを穿つ。


「グッ、グギィ……ッウ… (ぐッ、痛ぇ……っう…)」

「ゲハッ…ゥグァア………ッ (げはッ…ぅぐぁあ………っ)」


「グァ……ゥ……ッ」


こぼれ落ちる命を留めること叶わずに崩れ落ちた同輩たちを左右に避け、後続の騎兵たちはランドリザードの手綱を引き締めて、急制動を掛けながら体勢の維持に努める。



大半のゴブリン騎兵たちが振り落とされないように必死となる最中、彼らを指揮するヴァリは大柄なランドリザードの手綱を片手で操り、少し体勢を崩しながらも眼前の白黒コボルトへ槍撃を放つ。


「ルギウスッ!(螺旋槍ッ!)」


「ッ、ウァ… ッ…… コフッ…」


螺旋に渦巻く風刃が纏わりついた突撃槍で胸元を穿たれ、そのコボルトは吐血しながら崩れ落ちていく。


「ッ、ガルァア、グルォウ!! (ッ、この畜生め、よくも!!)」


「ギィッ、デラクッ! (はッ、遅いぞ!)」


ヴァリは素早く得物を引き戻しながら上体を捻り、仕留めた白黒コボルトの仲間が突き出した鉄槍を躱すと、左掌で太刀打ちを掴んで手繰り寄せた。


「ワゥッ!? (なッ!?)」


握り込んだ鉄槍ごと攻撃を仕掛けたコボルトも引っ張られ、そこに乗騎である大柄なランドリザードが大口を開いて迫る。


「ギドギゼル、ギゥス (喰い殺せ、相棒)」

「グァウッ!!」


「ゴブッ、ガゥアッ…… ッウ、ガァアァッ!!

(ごぶッ、くそがッ…… ッう、がぁああッ!!)」


喉元に喰らいつかれて致命傷を負いながらも、最後の力で白黒混毛のコボルトがランドリザードの首を両腕で締め付けて押さえ込む。



それは一見すると無駄な足掻きに過ぎないが、僅かな機に乗じてハスタが迅雷の如く仇敵へと近接する。


「ッ、ヴァリギァ!グウッ!? (ッ、ヴァリ様!ぐうッ!?)」


「アルクッ!? エレスレゥ!! (矢だとッ!? どこからだ!!)」


風切り音を鳴らして、突然に森の奥から飛来した数本の矢がゴブリンの騎兵たちを射抜き、彼らの族長への援護を押し留めた。


この狙撃は右翼に駆け付けたオズワルド率いる弓兵たちの仕業であり、鉄槍を手にしたハスタは騎兵たちに邪魔されることなく、大柄で耳の欠けたゴブリンへと突貫する。


「ウォアゥ ガルゥアァッ!! (ここで貴様を討つ!!)」


「ギドアッ! (馬鹿がッ!)」


標的の大柄なゴブリンはランドリザードに騎乗したまま身体を捻って向きを変え、精悍な白黒コボルトへと螺旋に渦巻く風刃が纏わりついた突撃槍を繰り出す。


直撃を避けるため、咄嗟に翳されたハスタの左腕が吹き飛ぶ(さま)を誰もが思い(えが)くが、接触の瞬間に円形状の淡い燐光を放つ腕盾が生じ、螺旋の一撃に削られて魔力光と血飛沫を撒き散らしながらも豪撃を弾き飛ばした。


「グォオオアァッ!! (ぐぉおおあぁッ!!)」


「ギウスァッ!? (なんだとッ!?)」


想定外の事態を引き起こした燐光を放つ腕盾は聖属性の中級魔法 “反動の小楯” であり、ハスタが盟友であるシロに左腕へと付与してもらった一度だけの切り札だ。


それを以てしても、渦巻く風の刃が生じさせる螺旋力を押し留めることはできず、左腕はズタズタに切り裂かれて血を滴らせている。


だが、片腕を対価に勝機を掴み、ハスタは右腕一本で喉元を狙った槍撃を放つ。


「グルォオオォアッ! (もらったッ!)」


「ガハッ、ギ、ァウッ……ウゥ……

(がはッ、こ、んなッ……うぅ……)」


耳欠けのゴブリンの喉に鉄槍を貫通させて動きを止め、素早く握り込んだ柄を手放す。さらに腰元の鞘からラージナイフを抜き、流れるような動作で革鎧越しに仇敵の心臓へと叩き込んだ。


「ウァ、ヴァリギァ…… (うぁ、ヴァリ様が……)」


「ギ、ギィアッ!ッ、グブッ……アァ……

(そ、そんなッ!ッ、ぐぶッ……あぁ……)」


残りの騎兵たちも木々の合間に潜んだ弓兵らの狙撃を受けて負傷し、ハスタの犬族たちに討ち取られていく。


その混乱の中、耳欠けのゴブリンが騎乗していた大柄なランドリザードは矢傷を負いながらも、素早く主の亡骸を咥えて森の奥へと消えていった……

”皆様に楽しく読んでもらえる物語” のため、日々精進して頑張ります!!

ブクマや評価などで応援してくれれば、本当に嬉しく思います!!

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