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古代の森北東部の戦い

「ッ、ギグス ガルドッ!! (ッ、警鐘を鳴らせッ!!)」

「 ギゥッ、ヴァリギァ!! (はいッ、ヴァリ様!!)」


村の広場にいたゴブリンの一匹が備え付けてある銅鑼に駆け寄り、叩き鳴らす様子を一瞥しながらもヴァリとソードは手早く斥候兵に詳細の確認を済ませていく。


その間にも警鐘を聞いたゴブリンたちが武装して参集し、広場が慌ただしい雰囲気に包まれる中、浅黒い肌に白髪を生やした小鬼族の勇者ブレイブの大声が響き渡る。


「ギャウ、レギオ ゼクスッ!! (お前ら、隊ごとに纏まれッ!!)」


その声に応じて混乱気味であったゴブリン達は機敏な動きを見せ、族長のヴァリの下に猟騎兵が、ブレイブとソードを含む隊長格の四匹の傍には小鬼族の戦士たちが集う。


「ラウァスッ、ギウデクト (すまないッ、少々遅れた)」


頭を掻きながら、ブレイブは古代の森に流れ着いてから世話になっているヴァリに詫びた。


「ガルギア、サイスレゥ ギゥラスレア

(犬どもだ、南東側から攻めてくるらしい)」


「ギッ、ガルディアス…… (ふん、蹴散らしてやるさ……)」


不敵に笑うブレイブに頷きながら、ヴァリは同胞へと激励を飛ばす。


「デスタ ガルギア ギラルッ! ラズ ギィス ラクセ、フィアレスッ!!

(すぐに犬どもがやってくるッ! 数は我らが優勢、恐れることは無いッ!!)」


「「「ガァアァァアァッ!!」」」


不意にもたらされた襲撃の知らせに対する動揺もあるが、敗走して統制を失えば猟犬たちに討取られることはゴブリンたちも理解している。


魔物の世界は弱肉強食なのだ…… 故に彼らは腹を決めて雄叫びを上げ、それを満足そうな表情で眺めたヴァリは客将に向き直った。


「ギル ディゼルク セノガドアッ! ディセレド、ギギゥギォ!!

(私は騎兵隊を率いて側面を叩くッ! 後は任せたぞ、ブレイブ殿!!)」


「ギゥレギォ、ヴァリギォ

(引き受けよう、ヴァリ殿)」


踵を返して厩舎へ向かうヴァリの背に、猟騎兵の十数名が続いて広場を辞していく。


「ッ、ギギゥ、ギオゥ ガディアッ! (ッ、ブレイブ、俺達も征くぞッ!)」


「ギィ、サイスラゥ ゼルギアスッ! (あぁ、南東の森で迎え撃つッ!)」


相棒に応じながらもブレイブは鞘に納めたままの大剣を掲げて号令を掛け、10匹ばかりの守備兵を残して迎撃へと向かうのだった……


……………

………


コボルト連合の本隊を指揮する銀毛のハイ・コボルトがゴブリンたちの村から1㎞前後の場所で立ち止まり、嗅覚に連中の雑多な生活の匂いを感じ取る。


「クォファ ガオゥルアッ! ウォフグルォウ グァウルォガオァッ!!  

(この場で陣容を整えますッ! 前面は私達とブラウ隊の各班ッ!!)」


「ウォオンッ、グルォアッ!!(いくぜッ、野郎共ッ!!)」


「「「ウォオオオォンッ!!」」」


声を魔法の風に乗せて指示を届けるシルヴァに対して、そんな事はできないブラウが大声を上げて仲間たちを鼓舞しつつ、隊列後方から脇に逸れて先頭へと移動してくる。


その動きに応じて、シルヴァは部隊を横手に移動することで場所を譲りながらも、さらに隊列中程へ指示を飛ばす。


「ヴァガル ヴァウルォオンッ、ガゥオルァ ウォアアウッ!!

(両翼はハスタ隊に任せますッ、側面攻撃を警戒してッ!!)」


「アルォ、ヴァウルガオァアン、グルゥヴァアルォウ

(シロ、左翼に付く班を頼む、俺は右翼に回る)」


「ヴォルウォフ~ (仕方ないなぁ~)」


自部隊に属するシロに三つの班の指揮を任し、ハスタは二つの班を率いて左翼へと向かう。程なくしてコボルト達は移動用の隊列から三日月形の陣形を成す。


それに合わせたかのようにシルヴァの嗅覚が大勢のゴブリンの匂いを捉え、聴覚も騒がしい葉擦れの音を拾う。


「ッ、ガルァッ!! (ッ、きますッ!!)」


少し離れた木々の合間から大小様々なゴブリンが次々に姿を現し、同族たちの緊張が高まる中、彼女はその陣容をつぶさに観察する。


(…… 彼の予想通り、村の守備に一部を割いているようね)


その為、現状でのコボルト勢とゴブリン勢の数はほぼ均衡していた。


立派な城塞があるならばともかく、そうでない場合は守るものが無い側が有利だ…… と、彼の若い賢者が言っていたことをシルヴァは思い出す。


(でも、騎兵隊がくるから……)


そう考えればどう転ぶか分からない。


そもそも、戦闘に於いて勝敗が決する分水嶺は損耗率2 ~ 3割であり、一般的にその数の死傷者をどちらかが出した時点で優劣は決まる。


以後も勝ち目が無いのに命を散らす酔狂な者はいないため、追撃されて個々に討ち取られるリスクがあっても撤退を始めるのが普通なのだ…… でなければ一族郎党全滅するのみ。


仲間たちの低い唸り声と、ゴブリンたちの威嚇の声を聞きながらシルヴァは気を引き締めて大きく息を吸い込み、同族を鼓舞する魔犬の咆哮を上げるッ!


「ヴォルフォアァアアンッ!!(討ち果たしなさいッ!)」

「ギャウッ、ギゥレギォッ!! (小鬼族よッ、武勇を示せッ!!)」


僅かな差でゴブリンたちの中からも魔力を帯びた雄叫びが上がり、双方の喊声が戦端を開く。

”皆様に楽しく読んでもらえる物語” を目指して日々精進です!


う~ん、今日は更新してからブクマが良く飛びます……orz

まぁ、伸び続ける事もありえなのでエタらない様に頑張るのみですね!!


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