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犬に噛まれし者達

(これは…… 何気に凄いな)


改革を標榜する過激派エルフたちの半包囲の側面に回り込んだ後、奴らの注目を集めつつ魔力阻害による隙を作るため、魔力を霧散させる “ハウリングノイズ” を風魔法を駆使して広範囲に響き渡らせた。


その結果、王城本館前で攻防を繰り広げる双方のエルフたちの魔法を悉く打ち消したのだ。ともすれば、エルダーコボルトの真骨頂はこの “ハウリングノイズ” にあるのかもしれない……


(まぁ、考えるのは後だ、遠慮なくやらせてもらうッ)


事前にアリスティアに手加減無用の同意を取っているため、俺は魔力を籠めた右足で大地を強く踏み抜く!


「ヴォルァ、ガゥア!『爆ぜろ、大地よッ!』」


ドゥウウッという音を立てながら前方の地面が草花ごと爆ぜ、大量の土砂を垂直に噴き上げる。そして、俺はそこへと両手を突き出した。


「ヴォルファッ、ガルォオオオッ!!

『唸れ征嵐ッ、悉くをなぎ倒せッ!!』」


両腕に旋風が巻きつき、それは瞬時に水平に伸びる竜巻となり、大量の土砂を巻き込みながら半包囲をおこなう改革過激派どもへと迫る!


「ぐぅああッ!?」

「がぁッ!!」


「ッ、目がッ、畜生ッ!」

「げほッ、ごほッ、の、喉がッ!!」


ブレイザーが考案した風属性の中級魔法 “嵐撃” と土属性の中級魔法 “地雷” を合わせた複合的な人外魔法 “砂嵐” が魔力阻害により防御を展開できない過激派エルフたちを襲った。


直撃した者数名は風の刃を内包した嵐に身体を切り刻まれながら吹き飛び、砂嵐を避けた者たちも螺旋の中で細かな細粒となった砂を吸い込んだり、目や鼻を潰されて一時的に混乱をきたす。


さらにその一撃を合図として、背面に回り込んでいた仲間たちも庭園の茂みから強襲を仕掛ける!


「グルァオッ!!(叩き斬るッ!!)」


腕黒巨躯のコボルトが漲る闘気を大剣の刃に纏わせて低い姿勢で飛び出し、未だ混乱の中にある過激派のエルフ達に狙いを定め、右足を踏み込みながら力任せの逆袈裟切りを浴びせた。


「うぁああッ、うッ、あぁ……」

「うぅ、あぁ……」


斜めに胴を切り上げられた二名の過激派エルフたちが力を失い、武器を取り落としながら倒れる。その光景を確認しつつ、バスターは左脚を踏み込み、返す刃で右斜めにいた一人も切り捨てる。


「犬如きがよくも仲間をッ!」


軽装鎧を着こんだエルフが砂に目をやられ、涙を流しながらも片膝を突いて大地に両手をつけた。


「ッ、ウォアッ!! (ッ、これはッ!!)」

【発動:直感回避】


ある種の戦闘狂な部分を持つバスターは仲間たちの戦技分析にも余念がなく、当然に銀色の幼馴染みが得意とする土属性魔法も対応を想定済みのため、類似の属性魔法に自然と体が前に動く。


「喰らえやッ、大地の槍ぃ!!」

「ヴォルッ!! (突貫ッ!!)」


何度も見てきた同系魔法である “縛鎖の牙” は攻防一体の技で、躱したところで地面から生えた土塊の牙が障害の役割も担う。


故に背筋へ悪寒を感じて毛を逆立たせながらもバスターは突撃を敢行する。直後、複数の土塊の槍が地中から突き立つが、既にそこには誰もいない……


「オルァァアァッ!!」

「なぁ!?ッ、ぐぅああッ!!」


大剣の切先が黒曜のエルフの土魔法使いブライトに突き込まれ、倒れ込むようにして致命傷を避けた彼の右胸から肩までを裂く。


「がッ、うぅ、だ、大地の、ッ、恵みを……」

「ッ、ブライトッ!!」


裂かれて血が噴き出す傷を押さえ、即座にブライトはアースヒールを発動させるが、もうこの場で戦う事はできないだろう。その窮地に未だ砂塵に目と喉をやられながらも仲間たちが助けに入り、彼を引き摺って退避させていく……


……………

………


「ウゥ、ヴォルァウゥ! (もう、邪魔だよぅ!)」


ゴンッ ガンッ


「げはッ!」

「痛ッ!?」


一方で蒼色巨躯のコボルトは砂塵に目をやられて狼狽える改革過激派のエルフ達を戦斧の腹で殴って気絶させながら、ボスに言いつけられた魔術師を狙う。


改革過激派たちが王城本館の入口を半包囲していたため、背後からの襲撃に対してその防御層は薄く、直ぐに目的のフードを深く被った魔術師エルフたちへと迫ったのだが……


「もういいッ、こいつにぶつけるぞッ!」

「承知ッ!」

「応よッ!!」


何とか瀬戸際で共鳴魔法の術式を維持していたアドレたちが砂塵により涙の滲む目を微かに開けて、“蒼穹の雷槍” の矛先をアックスに向ける。


「消し炭になれッ、蒼穹の雷槍ッ!!」


「ッ、ウォルヴィアル!! (ッ、最弱にして最強ッ!)」

【発動:最強最弱の盾】


四人の黒曜の魔術師たちが伸ばす掌の間、その中心で眩いばかりの紫電を放つ巨大な雷槍が近距離から撃ち出される。


対するアックスは長盾を斜めに構えて、王都セルクラムで彼が獲得した固有概念武装である “最強最弱の盾” を付与した。


魔物たちは本能に基づき己の獲得した能力の使い方を理解する。そのため、コボルトの聖騎士の個人的認識ではあるが…… “最強最弱の盾” はどんな攻撃も一度だけ防ぐ。


正確には防ぐのではなく、運動エネルギー、熱エネルギーなどの全てを消失させ攻撃を無効化するのだが、彼にその理解は少々難しくもある。


ただし、“どんな攻撃も一度だけ” であり、超越魔法メテオフォールも一度だけなら防げるが、コボルトの幼体の甘噛みも一度しか防げない。


さらに体内に特殊な魔力が溜まるまで使用不可のため、次の発動までに一刻を待つ必要があったりもするので、一回の戦闘に付き一度だけと考えるべきだ。


微妙に使いどころが難しいのだが……


膨大な熱量を生じさせ、辺りの草木を燃やしながら轟音を響かせて迸る “蒼穹の雷槍” が淡く蒼色に輝く長盾に触れた途端、夢か幻の如く消失した。


「「はぁッ?」」

「えッ!?」

「ば、馬鹿なっ!!」


(うっう~、大丈夫だったよぅ)


驚愕する改革過激派のエルフ達を他所に、内心でほっと胸を撫でおろす巨躯のコボルトが一匹…… 仲間たちと試しはしたものの、実戦では初投入のために臆病な側面のあるアックスは内心でびびっていたのだ。


ほっとしたのも束の間、気を取り直したアックスは大きく利き足を踏み出し、輝きを失った盾を力の限りに横殴りに振り抜く!


「アゥオアァンッ、グゥッ!!

(危ないじゃないかッ、もうッ!!)」


「「ぐはッ!?」」

「「ぶへッ!!」」


互いに補い合い上級魔法を構築していたアドレを含む4人の魔術師エルフたちは何が起きたかを理解できず、茫然自失のままアックスのシールドバッシュで仲良く昏倒した……

すいません、2話で終わりませんでした…… orz

決着は次話に持ち越します。


読んでくださる皆様の応援で日々更新できております、本当に感謝です!

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