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大蜥蜴に撥ねられちゃったよぅ

「グルゥァァアァ! (おらぁあああッ!)」


土魔法の発動に合わせて、雄叫びを上げながらバスターが動きを封じられたイノシシの魔物に跨るゴブリン騎兵へと木々の間を縫いながら迫っていく。


「ギゥオォッ! (やらせんッ!)」


そこに土色をした大蜥蜴、ランドリザードに乗ったゴブリン騎兵が斜めに割り込み、サーベルを引き抜いて腕黒巨躯のコボルトを迎え撃つ!


「ガゥッ、クォガルゥオァアァ ヴォルオゥッ!!

(はッ、片手で俺の一撃を御せるかよッ!!)」


【発動:腕力強化(大) + 闘刃】


騎乗している以上、左手で手綱を持ち、右手一本でサーベルを扱う形となるゴブリン騎兵に対し、バスターは盛り上がる筋骨隆々とした両腕から重量級の一撃をぶちかます。


「グッ!? ギャアァァアァッ!!」

「ッ、ウガァァアァ!?」


その闘気を纏った鋭利な一撃はゴブリンを袈裟切りにするに留まらず、騎乗していたランドリザードの背も鞍ごと切り裂いて切っ先が地面に軽く埋まった。


一方で同時に飛び出していたアックスには大口を開けて鋭い牙を覗かせたランドリザードが肉薄するが……


「ウォルアァンッ!! (てやぁああッ!!)」

「グゥウゥッ、アァアァアァァッ!?」


振り下ろされた戦斧が土大蜥蜴の頭蓋を砕き、地面へと叩きつける。


「ギウゥッ!!(ちいぃッ!!)」


斬撃を放ち、姿勢が低くなったアックスの首筋を狙ってゴブリン騎兵がサーベルを袈裟切りに振り抜くも、蒼色巨躯のコボルトは冷静に長盾を翳す。


「ワォゥッ (よっとッ)」


ガンッ


掲げられたデュエルシールドはあっさりとその斬撃を弾き、土大蜥蜴の頭に刺さったままの戦斧から利き手を離したアックスの拳がゴブリン騎兵の顔面を打ち抜く。


「ガハッ (がはッ!!)」


顔面を強打された小鬼族の騎兵は意識を失い、力なく鞍から落下していく……


(森の中での騎兵はやはり、戦闘機動が上手く取れないか…… これなら脅威度は低いな)


などと再認識しながら、木々の合間に隠れたまま右手に3本の矢を握り込み、左手に構えた滑車付きの機械弓へ番えていると森に怒号が響く。


「ギゥオアァアッ!! (貴様らぁああッ!!)」


リーダー格の片耳の少し欠けたゴブリン・キャヴァリアーが騎乗するランドリザードを巨躯に似合わない速度で走らせ、木々の合間を縫いながらバスターの側面に回り込む。


太い木と鉄の穂先で作られたランスを構えたその騎兵が腕黒巨躯のコボルトへ突撃を敢行する。狙われたバスターから少し離れた場所では、残りのゴブリン騎兵も蒼色巨躯のコボルトにランスによる連続した刺突の猛攻を繰り出していた。


「ウガァアアァッ!! (うがぁああぁッ!!)」


「ウォッ!? (うぉッ!?)」


危機一髪、バスターが加速と重量を加えた突進をひらりと回避するも、その先にはもう一匹のゴブリン騎兵の突撃槍を長盾で受け流しながら応戦するアックスがっ!


「ウッ!? ウワァッ!! (えッ!? うわぁッ!!)」


「ギゥレィアッ!! (死に晒せやぁッ!!)」


倒れ込むように何とか突き込まれるゴブリンランスを躱したアックスだが、巨躯のランドリザードに撥ねられて弾き飛ばされていく。


「ッ、ウゥ…… ッウ (ッ、うぅ……ッう)」


「ギィウァアッ!! (もらったぁッ!!)」


打撲を受けて地面に転がるアックスへと先ほど応戦していたゴブリン騎兵が近接し、騎上から構えたランスを大きく引いて止めの一撃を刺そうとする。


「クッ、ヴォルオァンッ!! (くッ、貫き爆ぜろッ!!)」


俺は木々の合間から飛び出して騎兵の視線を奪い、僅かな時間を稼ぎながら風属性の魔力を籠めた矢を奴の心臓目掛けて撃ち放つ!


「グッ!? ギッ、グゥアァアアッ、ッウア……

(ぐッ!? なッ、ぐぅあぁああッ、ッうあ……)」


革鎧を貫通してゴブリン騎兵の胸元へと矢が刺さり、鏃に凝縮された風の魔力が爆ぜて心臓を穿つ。一瞬の硬直の後、力なくランドリザードの背に取付けられた鞍から小鬼族の騎兵がずり落ちた。


その際に視界が開けて、耳欠けのゴブリン・キャヴァリアーと視線が絡む。


「ギャオゥ、ギギゥギォ ギウェスガルギアッ! ギィ、キュウエルッ!!

(こいつら、ブレイブ殿の言っていた犬どもかッ! ちッ、退くぞッ!!)」


現状を的確に判断して、筋肉質なゴブリンはイノシシ型の魔物から降りてサーベルを構えていた二匹の仲間に撤退を指示し、巨躯の土大蜥蜴を巧みに操って森の奥へと消えていく……


残された二匹のゴブリンたちも急ぎ撤退しようとするが、その頭上に影が射す。


「ウォルァオオゥアッ!(どこにもいけないよッ!)」

「ッ、ガッ!? ギィッ!(ッ、がッ!? 何だッ!)」


樹上より狙いを定めたダガーが落下し、両脚を曲げて太腿の間にゴブリンの頭を挟み込む形でその肩に乗り上げる。


(あれはッ、ヘッドシザーズホイップかッ! 俺ですらまだ体得していないというのにッ!!)


それは魔導書『剛力粉砕』の147頁に記された妙技だ。


主に相手の腕を取って体勢を下に崩しながら、位置の低くなったその首に両脚を巻きつけて、全身を使った回転が生む遠心力で投げ飛ばす。


変形技として片足で相手の首を挟んだまま垂直に跳躍し、体重を乗せて相手を地面へと押し倒して首を折るギロチン仕様もあるが…… 微塵も魔力を必要としない筋肉による魔法(マッスルアーツ)だ。


「ワゥッ! (えいッ!)」

「ギァアアアッ!! (ぎぁあああッ!!)」


そんな俺の期待を裏切って、妹はその体勢のままユニコーンの角で作られた刺突短剣スティレットを握り込んでゴブリンの頭蓋を貫き絶命させた。


どうやらヘッドシザーズホイップではなかったようだな……


「ガルゥァアァン! (そっちも仕留めるッ!)」


頽れるそのゴブリンの肩からぴょんと飛び退りつつも、左手に握る機械式短剣のボタンを押し込み、強力な発条の力で唖然とするもう一匹のゴブリンの喉元に刃先を飛ばす。


「カヒュ、ゥア…… (かひゅ、うあ……)」


最後に残ったゴブリンも刃先が刺さった喉を押さえながら倒れていき、アックスが大蜥蜴に撥ねられたものの、ゴブリン猟騎兵たちとの遭遇戦は終了した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 迫力ある戦闘シーンは、無闇に主人公サイドを強くしていないからこそ書けるんだろうな。 [一言] 黒人差別的なものがモチーフになってたり、状況はすごく理解しやすいですね。参考になることがいっぱ…
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