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天使の仕事ほど嫌なものはない  作者: 大上丈
第四章 咎人の帰郷
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対上月先輩専用超高性能型偵察機竜【ガーゴイル】のガー君

 「……ふわぁ」


 喫茶店RINGでのバイト中、隣でグラスを磨いている天童が大きな欠伸を漏らした。


 「…………」

 「あぁ、すみません。失礼しました」


 ラミアとの激闘を終えてから約二週間。連日連夜悪魔の襲撃を受けているせいか、流石の天童もお疲れのもよう。


 狙われているのが基本的に俺とはいえ、当然のように戦い始めた瞬間に殺されることもある訳で……その後始末だけでなく、町への被害を最小限に抑えるため奔走していることもあってか、何気に俺以上の苦労を天童はしているようだ。


 全くもって頭が下がる思いである。


 特に昨日なんかは俺が何も出来ないまま、襲われたと認識した瞬間に蟷螂みたいな奴に首を刎ねられ殺されたからな。あの見事な手際だ……きっと天童でも苦戦するような、非常に手強い悪魔だったのだろう。そうに違いない。


 その証拠とでもいうかのように、今朝は驚くことに天童は俺の分の朝食を半分しか食べずに残していた。


 由々しき事態だ。


 『天童の作った朝食めちゃくちゃ美味ぇっ!?』って感動したから、しばらくの間天童には俺のために毎日疲れててほしい。


 ……違う違う。


 思考を切り替えて、俺は心配する面持ちを天童に向けた。


 「寝不足か?」

 「えぇ……まぁ。昨日はちょっと色々あって眠れなかったので……」

 「そうか」


 問いかけると、天童は再び「ふわぁ」と小さな欠伸を漏らした。目尻に溜まった涙を拭いて、いつもよりも気持ちのんびりとした動きでグラスを磨き始める。


 やはり、昨日俺を瞬殺させた悪魔は恐ろしい程の強敵だったようだ。


 あの怪物のような天童をここまで疲れさせるとは……なんともまぁ、厄介な話である。


 やれやれ、本当に人気者は辛い。


 それ程までの強敵が次々と襲ってくるだなんて……疲れ果てた俺が瞬殺されるのも仕方のないことだった。


 出来ることなら、俺が【憤怒の烙印】持ちだということを訂正したい。


 こんなデッドオアアライブな毎日はもう嫌だ。


 「……少し休むか?」


 とはいえ、広まってしまったものは今更どうしようもない。


 いくら訂正の言葉を並べたところで認識が覆らないことはスキャンダルを起こした芸能人や政治家達がしっかりと証明してくれている訳で、必死にあがくだけ無駄というものだ。


 こうなってしまえば最後、悪魔達の意識が別のところに向けられるのを待つしかない。それまでこの地獄のような日々は延々と続いていくのだろうが、耐え続けるしかない。


 そのためには、天童には元気になってもらわなければ困る。


 しっかりと体を休めて、俺の分まで戦っていただかなければ!


 「いえ、大丈夫ですよ。今日はお客さんも少ないですし、これくらいの忙しさなら全然平気です」

 「そうか……」


 しかし、俺の提案を天童は首をふるふると振って否定した。


 休んでほしいのは本当なんだけどな……。俺の好意が無下にされて残念である。


 仕方ない……行き場の失ったこの好意は、自分に向けるとするか。


 「じゃあ、後は任せてもう帰っていいか? 久しぶりに家で一人ゆっくり休みたいんだけど?」

 「ダメに決まってるでしょう。心配するフリして何急にサボろうとしてるんですか。びっくりしたぁ……。びっくりしすぎて危うくボコボコにするところでしたよ? たった今胸の内に湧いた『ありがとう』の気持ちを返してください」

 「お、おう……」


 そう言いながら、拳を固く握りしめる天童。一応笑顔を取り繕ってはいるが、溢れんばかりの殺気が漏れ出ていて超怖い。


 くわばらくわばら。


 何を言っても殴られそうな気がしたので、心の中だけで『ありがとう』の気持ちをお返しさせていただくことにする。


 ありがとうございます天童さん! ボコボコにしないでくれて、すげーマジ感謝!!


 よし、これで義理は果たしたな。

 

 気を取り直して、俺もピカピカになったグラスを更に磨く作業を再開させた。


 ……やっぱ帰っていいだろ、これ。


 暇で暇で仕方ないので、暇つぶしに来店しているお客さん達の話に耳を傾けることにする。


 今来店している客は二人。最近悪魔だということが判明した熊谷深月と、皆さんご存知の通りストーカーの剣崎妹(本名は剣崎実)だ。それに加えて、この店の店員であり、ついでに神の子でもある三ノ輪環が仲良さげにテーブルを囲んでいた。


 なんでも今日はストーカーの剣崎妹から大々的な発表があるということで、このような集まりが開かれたらしい。


 ちなみに店員であるはずの環は休みでも休憩中でもなく、ゴリゴリの勤務時間内だ。文句も言わずに働いている俺達の前で堂々とサボってるから、早くクビになればいいのになと本気で思う。


 なんなら俺の隣で働いてる天童に至っては今日バイトでも何でもなくボランティアで仕事してるし……なんでまだアイツにブチギレてないのか不思議に思うレベルだ。


 神の子だからって甘やかし過ぎじゃないですかね? 魔王と大天使の息子である俺のことも甘やかしてほしい。


 「じゃじゃーん、見てください! 皆さんの協力のおかげで、ついに完成しました!」

 

 そう言って、剣崎妹が鋼で出来たダチョウの卵みたいなものをドンと机の上に置いた。

 

 どうやら発表したかったのは、あの謎の卵型の機械らしい。


 環と熊谷もその制作に協力したようで、「おぉ」とか、「これが、私の全財産のなれの果てかぁ……」とか、驚いたり嘆いたりしていた。


 ちなみに前者が環で、後者が熊谷。


 二週間前、剣崎妹をダシにして俺とのデートを敢行したことがしっかりと彼女にもバレてしまったということで、無理矢理金銭面での補助を要求されてしまったらしい。


 従わなければ「刺す」と、たった一言の脅し付きで。太宰治かよ。


 とりあえず、俺まで金銭的要求をされなくて良かったなと本当に思う。あんな良く分からないものに全財産を奪われては絶望しかないからな。


 明日は剣崎妹と約束のデートをする日。その前に財布の中身がスッカラカンになっては堪らない。やっぱ絶望しかねぇわ……。


 そんなことを考えてる内にも、剣崎妹の発表は続いていた。


 「起きて、ガー君」


 という一言ののち、ガー君と呼ばれた鋼の卵に罅が入る。


 俺が殻だと思っていた箇所はどうやら翼の部位に当たるものであったらしく、ウィーンという機械音と共に中から鋼の翼を広げた一匹の竜が現れた。


 『ガガ、ピー』と、機械的な産声を上げて、自己紹介が始まる。


 『ガークン、ダヨ。ヨロシク、ネ』


 流石にこれだけでは説明として不十分過ぎるので、剣崎妹がすかさず補足説明に入った。


 「ご紹介します。この子が以前お話した、『対上月先輩専用超高性能型偵察機竜』、ガーゴイルのガー君です!」

 『ガガ、ピー!』

 「「…………」」

 「へぇ、結構可愛いわね」

 「これの為に、私の全財産が……」


 奴の正式名称を聞いた瞬間、思わずといった感じで体が前に出る。天童はそれに即座に反応し、スッと手を前に差し込んで俺の行く手を阻んだ。


 「邪魔すんなよ天童……。アレは……アレは存在しちゃいけない代物だろ」


 『対上月先輩専用超高性能型偵察機竜』。


 聞いただけで眩暈がしそうなほどの名前に、沸々と怒りが湧いてくる。もうね、『対上月先輩専用』って言ってる時点で最強にダメ。どう考えても害獣以外の何物でもないだろう。


 ──俺だけは、絶対に奴の存在を許しちゃいけなかった。

 

 「ダメですよ優さん、ガー君を壊したりなんかしちゃ」


 しかし、それなのに天童はアレの破壊を阻止しようと力を強めてきた。


 天使の怪力に阻まれてはどうしようもないので、俺もその場で悔し気に歯噛みするしかない。


 それでも、文句の言葉だけは吐き出そうと、俺は唇を噛む思いで口を開いた。


 「俺は俺のプライベートを守りたいだけだ。たったそれだけのことが、どうして許されない?」


 そんな、至極当然の疑問。


 天童はそれを「ふんっ」と鼻息だけで一蹴し、何をバカなことを言ってるんだというような顔で反論を口にした。


 「当然です。というか、どうして優さんにまだプライベートが許されていると思っているんですか? あなたは大魔王の息子で、【憤怒の烙印】を発現させているんですよ。いつどこでその力を欲する悪魔に狙われるかも分からないのに、我々が優さんの位置を把握していないでどうしますか。もっと自分の立場と弱さを自覚してください。アレは、優さんの為に作られたものでもあるんですから」

 「うぐっ」


 そう言われてしまうと、吐き出そうとしていた文句の言葉も喉元で止まってしまう。


 完全なストーカー目的で作られたのなら噴火の如く怒りが湧いてくるが、俺を見守るためだということなら、俺が文句を言うのも筋違いな気がしてくるから不思議だ。


 実際のところ俺は天童の言う通り死ぬほど弱い。


 もしも天童のいないところで悪魔に捕食されてしまえば、環に蘇生されることなく、俺は誰かの腹の中でクソになって死ぬことになるだろう。


 ……それは、俺としてもちょっと嫌だ。どうせ死ぬのなら、せめてもう少し美しく最期を飾りたいものである。


 「それに……そんなに気にしなくても大丈夫ですよ」 

 「あ?」


 俺から破壊の意思が消えたことを感じたのか、天童は出していた手をスッと引っ込め、信じていいのかどうか分からないことを言ってきた。


 「アレで分かるのはせいぜい位置情報までです。別に生活環境を直接覗き見られる訳ではないのですから、優さんは安心してこれまで通りの生活を送ればいいと思いますよ」

 「そうなのか?」

 「えぇ」


 安心しろと言われても、やはりにわかには信じがたい。アレのご主人様は剣崎妹だ。天童の言うこととはいえ、果たして信じていいかどうか。


 「これを見てください」


 俺の表情から疑念が消えてないのを悟ってか、天童が懐からスマホを取り出す。


 向けられた画面を見ると、この町の地図の上に矢印がちょこんと浮かんでいた。矢印が指し示している場所は喫茶店RING……というより、俺の現在位置を指し示しているのだろう。


 ふむふむなるほど、こんな感じで情報が入ってくるのか。


 ……で、なんでそれがお前のスマホに転送されてんの? お?


 俺が軽く睨みつけると、天童は特に怯む様子もなく平然とした口調で答えた。


 「実は私と絵里先生も彼女に資金を提供し、優さんの位置情報が自動的に私のスマホに転送されるようアプリを入れてもらってるんです。先程も言った通り、我々が知っていなければ何の意味もありませんからね」

 「……何で母さんも一枚噛んでんだよ」


 色々と言いたいことはあるが、やはり一番の驚きは母さんも剣崎妹に資金提供をしていたというところだ。

  

 先月から俺の生活費を全額カットし始めたかと思えば、まさかあんなものにお金を注ぎ込んでいたとは……。あのクソババアはひもじい思いをしている子供おれが可哀想だとは思わないのだろうか?


 血が繋がっていないとはいえ、一応は赤ん坊の頃からずっと世話してきたはずの息子である。何で今まで育ててきた自分の子供のストーカーに全面協力出来ちゃうのか不思議でならない。普通は止めなきゃいけない立場だろ……アンタは。


 「まぁでも……それくらいなら」


 とはいえ、おそらく天童の言っていることに嘘はない。


 母さんまで資金提供をしていたことには驚いたが、位置情報がスマホに転送されるくらいなら俺としてもギリギリセーフだ。バレたら恥ずかしい場所にさえ行かなければ、特段ダメージを負うこともないだろう。


 ……なんて、そんなことを思っていると、


 「ガー君、昨日撮った画像をみんなに見せやすいように出して」

 『イエス、マスター』

 「はい、これがガー君の試験運転による成果です」

 

 というやり取りののち、ガー君の目がピカリと光り、環達が囲んでいるテーブルの上にホログラムが映し出された。


 「これが、授業中物憂げな表情で窓の外を眺める上月先輩。これが、体育の授業で一切息を乱すことなくグラウンドを走る上月先輩。これが、私に抱き付かれてまんざらでもない顔をしてる上月先輩。これが、お利口な私の頭を撫でてくれている上月先輩。綺麗に撮れてますよね? 実はこれ、上空300メートルから撮影したものなんですよ」

 「どうでもいいよ……。画像荒くなってもいいから、少しだけでもお金返して……」

 「ねぇ実……あんたプレゼンするフリしてさり気なく私にマウント取ろうとしてない? ん?」

 「「…………」」


 ホログラムの内容は、昨日の俺の様子が映し出された画像だった。

 

 まったく気付かなかったが、どうやら俺はガー君の試験運転の一環で盗撮されていたらしい。


 うーん…………アウト!


 すかさず天童に詰め寄った。


 「おい天童、話が違うぞ」

 「はい? 盗撮されてるからなんですか? どうせ優さんは天界から常に監視されなきゃいけない立場なんです。あの憤怒の魔王と裏切りの大天使の息子ですからね、常に見張らなければいけません。当然です。もっと自分の立場を自覚してください。バカなんですか? 【憤怒の烙印】を宿している優さんに文句を言う資格はないのですから。第一、今までも散々盗撮されてきたじゃないですか。今更それが一つ増えたところでなんです? 何も変わらないでしょう」

 「こ、こいつ……!」


 クソみたいな理論振りかざして開き直りやがった!


 今まで盗撮されてきたから今回の件もオッケーだと? オッケーな訳あるかボケ!


 「ふ、ふざけ──」

 

 やはり天使は悪! 間違いない!

 

 俺はそう確信し、天童に怒りの言葉をぶつけようとした。


 「それよりも!」

 「いてっ!?」


 が、その前に、同じく怒りを露にする天童に勢いで塗り潰されてしまう。


 天童は俺の手の肉を万力のような握力で捻り上げ、理不尽過ぎるお説教を始めた。


 「何なんですかあの写真は!? 鼻の下をデレデレに伸ばして、いやらしい! 何でボーっとしてたんだろう? って思ったら、剣崎さんのおっぱいのことばかり考えてたんですね! おっぱいの感触が良すぎてご褒美に頭なでなでですか! はー、私が忙しく走り回ってる間に良いご身分ですね! やはり優さんの頭の中はおっぱいしかないんですね! 最低です優さん! 猛省してください!」

 「いだだだだだだ!! 誤解だ誤解!」


 頑丈さが取り柄な俺ではあるが、流石に天使の怪力の前では悲鳴を上げずにはいられない。


 何で盗撮被害が判明した瞬間にゴリラ女から折檻を受けなきゃなんないんだよ……! あとさっきからおっぱいおっぱいうるさい。おっぱいおっぱい言われ過ぎて、マジで頭の中がおっぱいになってしまいそうだった。おっぱい!


 「はぁ!? 何が誤解だって言うんですか!」

 「何がって、全部だよ全部! 何もかもが全然違う!」


 それに、天童の怒りの理由も全て的外れで本当に辛い。せめて的を射ていたならお説教も折檻も納得が出来るが、こうも見事に外れていては反論せずにはいられない。


 昨日俺がボーっとしてたのは丁度あの人がいなくなった日だったからだし、アイツが胸押し付けてくんのはいつものことだし、アイツの頭を撫でてたのはアイツに『今日はまともに相手する気になれないからストーカーすんな』ってお願いして『じゃあ頭撫でてください』って言われたからだし──やっぱ絶対俺悪くないだろ……!


 「だから──」


 だから、そう考えをまとめ、天童に猛抗議をしようと俺は口を開いた。


 すると、 


 「あのー、すみませーん」


 カランコロンと店のドアベルが鳴り、一人の女の子が入ってきた。


 「──っ!」


 流石にお客さんの前で怒鳴り散らかす訳にはいかない(熊谷と剣崎妹は例外)ので、出掛かった罵詈雑言をグッと堪える。


 天童も俺と考えは同じなのか、肉を抓る折檻を中断し、すかさず笑顔を取り繕った。


 「「──えっ?」」


 瞬間、俺の中で時が止まる。


 入ってきた女の子は、俺にとって忘れられない……とても見覚えのある顔をした女の子だった。


 ──なんで。なんであの人がここに……? 


 だってあの人は、七年前に俺の前からいなくなって……もうこの世には……。


 「ん? あれ? え? あれ?」


 そう混乱で頭の中がごちゃごちゃになっている隣で、なぜか天童も俺と同じように固まっていた。お客さんが来ること自体がそんなに珍しいのか、俺とは違う理由で混乱しているようだ。


 「はいはーい、いらっしゃいませー! お一人様でよろしいですか?」


 固まって動かないでいる俺達を見てか、客席でサボっていたはずの環が椅子に掛けていた店のエプロンを引っ掴み、真っ先に客の対応のために動いた。


 剣崎妹も慌てて宙に移していた俺の盗撮画像を消し、佇まいを正す。ただ一人、熊谷だけが変わらない態度で興味なさげにスマホを眺めていた。


 女の子は店内をきょろきょろと見渡し、対応に向かった環にたどたどしい返事をする。


 「はい、一人です。えーと……すみません、このお店に……上月優、って人はいますか?」

 「えっ?」


 突然の指名に、環が驚きの声を発した。ポカンと間抜けな表情を晒し、訳が分からない様子でその場に突っ立っている。


 ……まぁでも、驚くのも無理はない。猫耳メイド姿を披露した環や天童ならともかく、嫌われ者の俺を訪ねてきた客が突然現れたのだ。しかもその女の子は、俺との接点なんて何もなさそうな、とても可憐で大人しそうな雰囲気を漂わせている。


 むしろ、驚かない方がどうかしていると言えるだろう。


 「えーと……上月なら、今そこにいるけど」


 明らかに年下な少女の見た目をしているためか、敬語も忘れてタメ口になる環。


 戸惑いの表情を浮かべならも俺に紹介していいかどうかの視線を一度送り、俺が逃げる様子もなくその場に突っ立っているのを見てか、指を差しこちらの方へと少女の視線を誘導した。


 「…………」


 見れば見るほど、あの人の顔によく似ている。


 幼少期、一人ぼっちの俺の面倒を見てくれた……あの人の顔に。


 「唯……ねぇ……?」

 「優お兄ちゃん!」


 呆然とあの人の名前を呟くと、少女が俺を見つけ、まるで宝物を発見したかのような満面の笑みを浮かべる。


 「「えっ?」」


 それに、熊谷と剣崎妹も反応した。


 たぶん、『お兄ちゃん』というワードを聞いて、アカネ様とかいう俺の本当の妹が来たのだと勘違いしたのだろう。剣崎妹がなぜ反応したのかは分からん。もしかしたら、未来の妹になるかもしれない相手が来たのだとアホなことを考えているのかもしれない。どうでもいい。

 

 二人のことを無視して、俺は思考をぐるぐると回した。


 唯姉ゆいねぇと同じ顔をしていて、尚且つ俺のことを優お兄ちゃんと呼ぶ人物。


 思い当たる子は、一人しかいない。 


 「……もしかして、舞ちゃん?」

 「はいっ! お久しぶりです、優お兄ちゃん!」



 星野舞。


 七年前……突如として俺の前から姿を消したあの人の妹が、あの人と全く同じ年齢と姿を重ねて、俺の前に現れた。

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