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天使の仕事ほど嫌なものはない  作者: 大上丈
第一章  天童美花、降臨
25/80

へんじがない、ただのしかばねのようだ……

 「はぁ……今日も一日疲れたな」


 そんな溜息を吐いて、ようやくのことで家に辿り着く。


 今日は朝から大変だった。天童に骨を折られたり、犬に足を噛まれたり、バケモノに顔面を殴られたり、天童に町中を引きずり回されたり、天童に内臓を打ち抜かれたりと、散々な目に合ってばかりだ。


 どうしてまだ俺に命があるのか不思議なレベルである。


 特に天童から受けた被害の数は異常。天使の力ですぐに体の傷は治るとはいえ、流石に限度ってものがあるだろう。


 天使とは思えないほどの暴虐ぼうぎゃくっぷりに、ほとほと嫌気がさす。一刻も早くに天界に帰ってほしいところだ。


 そう願いながら、ドアノブに手を伸ばす。


 「……あれ?」


 しかし、開かない。


 「…………」


 もう一度ガチャガチャとドアノブをひねってみても、やはり開かない。


 今朝のことを思い返してみる。


 確か今朝は天童に無理矢理に腕を引っ張られたせいで鍵なんて掛ける余裕なんかなかったはずだ。


 だというのに、どうしてしっかりと戸締とじまりが済んでいるのだろうか?


 「うーん」


 しばし考えてから、鞄から鍵を取り出す。


 少し疑問に思いはしたが、俺の単なる記憶違いだろうとそう判断して、特に気にすることもなく鍵穴に鍵を差し込んだ。


 記憶違いじゃなかったとしても、もしかしたら休み時間の間にでも天童が空を飛んで鍵を閉めに来てくれたのかもしれない。別段ありえない話でもない。


 そう思いながら、玄関の扉を開ける。


 「ただいまー」

 「にゃーん」


 扉を開けて一歩家の中に足を踏み入れると、俺の声に反応したのか、シロが奥の方からすたすたと小走りで駆け寄ってきた。


 「げっ!?」


 突然のバケモノの襲来に、思わず悲鳴を上げてしまう。


 俺は反射的に身構えて、シロからの攻撃に備えた。


 驚いた。バケモノが家に居ること自体は分かっていたが、まさか帰るなりすぐに向こうから駆け寄って来られるなんて思ってもみなかった。


 こちらから近づかなければ大丈夫だろうと考えていた自分の愚かさに、我ながら頭を抱えたくなる。


 シロは一応猫みたいな姿形をしているが、実際のところはとんでもない力を宿すバケモノだ。頑丈さが取り柄な俺ですら、猫パンチ一発であっさりと沈められてしまう程の強さを秘めている。下手すれば、天童よりも強いかもしれない。


 まさに気分は猛獣のいるおりに放り込まれてしまったかのよう。コイツに襲われたら最後、俺は間違いなく捕食されてしまうことだろう。


 「…………ごくり」


 じーっと、獲物を見定めるかのような視線が俺にそそがれる。


 緊張感が漂う中、俺の生唾を飲み込む音だけが妙に大きく聞こえた。


 少しでも動いたらやられる。そんな予感がした。蛇に睨まれた蛙とはまさにこのことだ。一瞬たりとも油断なんかできない。


 果たして、俺はこの状況から無事に生還することが出来るのだろうか。正直言って、自信はない。


 というか、どうして俺は自分の家でまでこんな危険な目に合っているのだろうか。せっかく少しは一人でゆっくりできるかと思っていたのに、これでは体を休める隙がまったく無いぞ。過度なストレスで、頭がどうにかなってしまいそうだ。


 これはいよいよ引っ越しのことも念頭に入れておいた方がいいかもしれないなと、天童達に家を差しだす覚悟まで決めていると、


 「……にゃん?」


 『何やってんだコイツは?』といったような顔で、シロがコテンと小首を傾げた。

 

 「……アレ?」


 てっきり俺を捕食するために駆け寄ってきたのだとばかり思っていたのだが、シロは襲い掛かるどころか玄関マットの上でたたずんだまま、置物のように大人しくしてくれている。


 「…………」


 お腹いっぱいなのだろうか?


 俺が呆然とする中、シロはくしくしと頭を掻いて、またもう一度「にゃーん」と鳴いた。


 「…………はぁ」


 いくら待っても変化がないので、大丈夫だろうと判断して警戒を解くことに。


 糸の切れたマリオネットのように、俺はへなへなと玄関に座り込んだ。


 「良かった」


 ほっと胸を撫でおろす。


 短い間だが、生きた心地が全くしなかった。回復役てんどうのいないこの状況では、襲われていればまず間違いなく俺は殺されていたことだろう。それだけはわかる。


 「にゃーん」

 「……にしても」


 危機が去ったということで、改めてシロに目をやる。


 今朝は色々あって気にも留めていなかったが、こうしてまじまじと見てみると新しいことにも気づくものだ。


 「綺麗な毛並みだなぁ……」


 野良であったにも関わらず、シロは随分と手入れが行き届いているように見えた。まるで外の世界なんて何一つとして知らない、箱入り娘のように大事に育てられてきたかのような純真さを感じる。


 天童と同じように、体を清潔に保つ能力でも備わっているのだろうか?


 背中から翼を生やしたり、天使の輪っかを出してたりしていたから、今更そんな能力が備わっていたとしてもおかしくはないが……。


 「…………」


 しかしアレだな。


 こうして大人しくされていると、シロがただの可愛い生き物にしか見えなくて困る。


 バケモノに対して絶対に抱く必要のない庇護欲ひごよくが、不思議と芽生えてしまった。


 俺の中の好奇心がうずく。


 「……おいでー、シロー」


 試しに、シロの名前を呼んでみることに。


 「にゃーん」

 「おぉ……」


 すると、シロは俺の呼びかけに応じ、何の抵抗も見せずにそばまで近づいてきてくれた。


 続けて手を差しだしてみると、小さな舌で指先をぺろぺろと舐めてくる。


 「……へへ」


 ざらざらとした舌の感触がくすぐったくて、自然と笑みがこぼれ落ちた。


 バケモノとはいえ、なんだかんだで自分になついてきてくれる生き物は可愛いものだ。人間社会の荒波にまれて疲れ切った心が、段々と穏やかになっていくのを感じる。


 顎下あごしたを撫でると、シロはゴロゴロと気持ちよさそうに鳴いてくれた。可愛い。


 天童がこの子を飼うと言い出した時はどうなることかと思っていたが、意外と大丈夫そうで安心する。


 見たところ家の中を荒らされたような形跡もないし、むしろ俺にとってはプラスに働いてくれたのではなかろうか。


 初めて、天童を褒めてやろうという気になった。


 実際に言葉に出して褒めてやる気は一切ないが。


 「へへ……へへへ……」


 周りに誰もいないことを確認して、遠慮なくシロをでさせてもらうことに。


 「へへへへへへへ、にゃーん」


 自分も半分猫になりながら、なめらかな毛並みを思う存分に堪能させてもらった。


 「にゃーん」


 ヤバい。凄い癒される。普段猫の癒し動画を見たりはしているが、やはり実物に触れている分だけ、見ているだけの時よりもずっと癒されるようだ。


 天童が来てからというもの心はすさんでばかりだったが、それもシロのおかげであっという間に洗い流されていくような気がした。数秒触れ合うだけで、日頃の疲れが吹き飛んでいく。


 確かな幸せが、ここにはあった。


 こんな幸せな時間がいつまでも続けばいいのにと、切に願う。


 ぱしゃり。


 「────」


 しかし、そんな幸せな時間を打ち消すかのように、背後からシャッター音が聞こえた。


 頭の中が真っ白になる。背中から嫌な汗が噴き出してくる。


 恐る恐る振り返ってみると、案の定そこには、驚いた顔をした天童と、真顔でスマホを構えているたまきがいた。


 ぱしゃり。


 俺が二人を見て言葉を失っている間にも、更に環のスマホからもう一度シャッター音が鳴る。


 悲しいことに、俺の恥ずかしい写真がまた新しく環のスマホに保存されてしまったらしい。


 「お、驚きました」


 俺を撮影する環の隣で、天童はわなわなと体を震わせていた。冷静な環とは真逆の反応だ。


 「普段もの凄い堅物なのに、猫となるとめちゃくちゃにデレられるんですね」

 「正確には猫だけじゃないけどね。コイツ、動物相手には基本デレデレしてるわよ」

 「お、おい」


 そんないらない情報まで付け足され、俺は羞恥心で頭が爆発してしまいそうになっていた。


 今のシロとのやり取りをこの二人に見られてしまった。そのくつがえしようのない事実が、何よりも非情に俺を殺しにくる。穴があったら入りたい、そんな気分だ。


 できることなら一刻も早く、誰かにスコップを持ってきてもらいたいものである。そして持ってきてもらったスコップを使って、こいつらの頭をカチ割ってしまいたい。無理そうなら俺の頭をカチ割ろう。とりあえずこの状況をなかったことにできれば万事オッケーだ。


 「そ、そうなんですか……全然知りませんでした……。あっ、えーと、私も記念に一枚撮らせていただいてもよろしいでしょうか?」


 いったい何の記念になるのかまったくわからないが、天童は戸惑いながらも、撮影する環にならって自身のスマホを取り出した。


 ぱしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃ!


 直後、おびただしい数のシャッター音が天童のスマホから鳴り響く。


 「いや連射すんなよ!」


 一枚と言いながら突然に何十枚もの写真を撮りだした天童に堪らず俺がツッコミを入れると、


 「──いてっ!?」


 シロが爪を立てて俺の体をよじ登り、頭を踏み台にして、勢いよく天童に飛び掛かっていた。


 「ひゃっ!?」

 「ふしゃー!」


 顔面に飛びつかれた天童は、悲鳴を上げて後ろへ倒れる。


 「いたっ!?」


 受け身もロクにとれず、後頭部をごちんとぶつけた。良い音だ。


 「い、痛いっ! 痛い痛い痛い!」


 そして、シロの容赦のない猫パンチが天童を襲う。


 バシ! バシ! バシ! と、恐ろしいことに連続で天童の頭をシバいていた。


 「ご、ごめんなさい! 消します! 消しますから! 痛い痛い痛い! お願いですから殴らないでください! いだいっっ!! 殴らないでっ!」

 「…………」


 そのあまりの痛さにか、マウントを取られた天童は半ば泣き叫びながらシロに許しをうた。


 俺も勝手に写真を撮られたことに対して怒ろうと思っていたのだが、シロが天童を襲う光景をの当たりにして、すっかり言葉を失ってしまう。


 いつの間にか写真を撮られた怒りは完全に収まっていて、それどころかむしろ天童に対する同情心すら芽生えてきた。


 俺も今朝、この身でシロの猫パンチを食らったからこそ分かるのだ。たった一発で気を失いかけた。泣き叫びたくなるのも当然である。


 これ、助けた方が良いのかな?


 「うーん……まぁいいや」


 少しだけ悩んでから、結論を出す。いさぎよく、俺は天童を見捨てることにした。


 ……いや、だってしょうがないじゃん。


 怪力を誇る天童ですらどうすることも出来ない相手を、人間である俺がどうこう出来るはずがない。


 助けようとしたところで、返り討ちにあうのは必然だ。犠牲は天童だけで十分である。


 というわけで、取っ組み合いをしている天童とシロのことは完全に放置するとして、


 「で、なんでお前がいんの?」


 俺はここにいるもう一人の人物、スマホを操作しながらニヤニヤしている環へと目を向けた。


 「いや、なんでニヤニヤしてんだよお前。今撮った写真を勝手にネットにアップしたりしてないだろうな?」

 「に、ニヤニヤなんてしてないわよ! こっち見んな、変態!」


 顔を見ただけで変態とは、随分な言われようである。


 俺がここにいることなんて来る前から分かりきっていたことだろうに、理不尽過ぎてどうしたらいいのかわからなくなったぞ。


 「マジで何しに来たんだよお前?」

 「なによ、私が上月んに来たら悪いってわけ?」


 訊ねると、環は不満気な表情で睨み返してきた。不満気な表情を浮かべたいのは俺の方だっつーの。


 「いや、別に悪かねーけどよ……」


 環相手に嘘を吐いても仕方がないので、正直な感想を口にすることに。


 「まぁそうだな、シンプルに帰ってほしいとは思ってる」

 「やっぱり思ってるんじゃない……」


 俺の素直な感想を聞いて、環はねたように唇を尖らせた。心なしか、視線も鋭くなったような気がする。


 どうやら今の発言で、環は完全に機嫌を損ねてしまったようだ。


 まぁ、機嫌を損ねてるのはいつものことなんだけど。


 とはいえ、それでももう少し言葉を選ぶべきだったかもしれない。


 シロも天童も十分な危険生物ではあるが、環は環で、また別のベクトルで危険なのだ。


 気配を消して近づいて来たり、的確に急所を狙って来たり、家の中の食べ物を毒物に変えたりする。まさに生粋きっすいの暗殺者。ぶっちゃけて言うと、殺されかけた回数なら母さんよりも環の方が多いまである。


 加えて環が家に来た理由にも、俺には大体の察しがついていた。


 きっと環は、俺のクラスメイト達から今日あった出来事を聞いて、こうして刺客しかくとして現れたのだろう。


 三ノ輪環という女は、非常に正義感が強く、そして悪者に対して本当に容赦をしない。


 俺が少しでも悪いことをすれば、正義を振りかざし、躊躇ためらいなく凶器を振るってくるヤバい女なのである。


 要するに、絶対に警察官とかにしてはいけないタイプの人間。軽犯罪者すらみんな死刑にしたがる、危険な思考の持ち主だ。たぶん将来の夢は新世界の神。デ〇ノートなんか持たせちゃ、新しい世界が始まっちゃう。


 と、そんな風に俺が内心ビクビク震えているのを知ってか知らずか、環はフンと鼻を鳴らして、


 「安心しなさい、今日はアンタに会いに来た訳じゃないから。美・花・と! 遊ぶために来たの」


 やけに『美花』の部分を強調して、そう言ってきた。


 「そ、そうか。なら良いんだけど」


 よく分からないが、どうやら環は俺を殺すのが目的で家に来たわけではないらしい。


 というか、そもそも俺が熊谷にゲロをぶちまけたこともすらも知らないようだ。


 箝口令かんこうれいでも敷かれているのか、クラスメイト達は今日の出来事を誰も他クラスの生徒に話していない様子。


 どうしてだろう? と、少し疑問に思う。


 俺のことを始末したいのなら、環に報告するのが一番手っ取り早い。だというのに、それをしないのはなぜだろうか?


 他人の力を借りず、自分たちの手で俺を始末したいとでも?


 少なくとも教室にいる間ずっと冷酷な殺気を感じていたから、俺を排除したいという意思は確かに彼らの中に存在しているとは思うが……。


 「ホントはアンタの家になんて来たくなかったんだけどね、友達に招待されたんじゃ来ない訳にはいかないじゃない」

 

 そう言いながら、環はやれやれと肩をすくめた。


 何が何でも俺に会いに来たと思われたくないのか、しつこいまでに自分の意思でないことをアピールしてくる。欧米人のようなおおげさな仕草が、この上なくウザい。


 それにしても、まだ出会って一日くらいしか経っていないというのに、この女はいつの間に天童と仲良くなっていたのだろうか。


 俺なんか十五年以上かけても一人も友達が出来なかったというのに、相変わらず友達を作るのが早い奴である。


 友達を100人作って、富士山の上でおにぎりを食べる目標でもかかげているのだろうか。


 100人で登山なんて大変だな。俺は絶対に行かないけど、高山病には気をつけるんだぞ。


 しかし、天童と遊ぶのが目的だというのなら、わざわざ俺の家に来る必要もなかったように思う。世間一般の女子高生たちが普段どんなことをして遊んでいるのかはまったく詳しくないが、少なくとも、嫌ってる男のいる家に出向くのは絶対に違うだろう。


 俺だったらそんな選択肢は選ばない。来たとしてもせいぜいチャイムを鳴らして終わりだ。ピンポンダッシュだけして速攻で帰る。


 とはいえ、それでも来てしまったものは仕方がない。


 幸いなことに俺を殺すのが目的で来たわけではないらしいし、二人が遊んでいるところを邪魔さえしなければ、俺に危害が及ぶこともないだろう。


 自室に引きこもって、嵐が過ぎ去るのを大人しく待てばいい。


 というわけで、環の相手は天童に任せることにして、さっさと俺は二人の前から姿を消すことに。


 もはや忘れかけていた天童に一言だけ声を掛けようと、視線を足元に移すと、


 「────」


 天童はピクリとも動かず、血だまりの中に沈んでいた。


 「……おーい天童、生きてるか?」

 「…………」

 

 声を掛けるも無反応。


 せっかく環の相手をしてもらおうと思っていたのに、残念ながら天童はすでに天にされてしまったらしい。


 「えっ? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 頭から血を流して倒れている天童を見て、環が悲鳴を上げる。


 まさか少し目を離した隙にこんなことになるとは思ってなかったのか、慌てて血の海に沈む天童に駆け寄り、優しく抱き起こした。


 「ちょ、ちょっとどうしたの美花!? さっきまでシロちゃんと遊んでたんじゃ!?」


 薄々感じてはいたが、どうやら環にはアレがただペットとじゃれ合っているだけのように見えていたらしい。


 まぁシロは見てくれだけは普通の猫だからな、そう勘違いしてもおかしくはないが。


 「う、うぅ……」

 「おっ」


 環の腕の中から、天童の小さなうめき声が聞こえた。


 てっきり死んだとばかり思っていたが、驚くことに、まだかろうじて意識が残っていたらしい。


 天童は環に抱かれたまま薄く目を開いて、


 「あ、あははは……だ、大丈夫ですよ環先輩、これくらい……」


 困惑している環を安心させるためにか、今にも消えてしまいそうな弱々しい微笑みを浮かべた。


 「こう見えても私は、絵里先生にしっかりと鍛えていただいているので……この程度の怪我は、怪我の内に入りませんから」

 「頭割れてるのに!?」


 環がもっともなツッコミを入れるが、残念なことに、上月家の基準では頭が割れた程度では怪我とは認識されないのだ。怪我のスタート地点は、頭から脳漿が飛び出してきてからである。


 ……もうそれほとんど死んでんだよなぁ。俺の母さん、マジで頭おかしい。


 「にしてもスゲーな天童」


 とはいえ、シロにあれだけやられてなお喋ることが出来るのは、素直に凄いことだと思う。


 「シロにあんだけ殴られてまだ息があんのかよ。流石は母さんに鍛えられた天使なだけはあるな。俺より頑丈じゃねーか、ハハハ───いてっ!?」


 天童の頑丈さと根性に感心していると、


 「笑ってる場合か! 早く救急箱持ってこい!!」


 環の怒声とローファーが、もの凄いスピードで俺の顔面に飛んできた。

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