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天使の仕事ほど嫌なものはない  作者: 大上丈
第一章  天童美花、降臨
13/79

春といえども夜は寒い 

 「んん~、美味です~!」


 静かな公園に、天童の嬉しそうな声が響く。


 買い物を済ませた俺達はすぐに帰ることをせず、近所の公園に立ち寄っていた。


 お腹がいて一歩も動けないからと、そう天童が訴えてきたからだ。


 「このジューシーさ、たまりません~!」


 あーむと大口を開けて、ザクっと小気味いい音を立てながらフライドチキンにかぶりつく天童。


 俺はその音を隣で聞きながら、一つ大きな溜息を吐きだした。


 「おい、もっと声のボリュームを抑えろよ。近所迷惑になるだろ」


 天童の声はいささかうるさ過ぎる。


 スーパーとコンビニで手早く買い物を済ませたものの、今はすでに日付が変わっている時間帯だ。街灯以外の町の明かりはほとんどが消えていて、耳をましても何も聞こえないほどに静かである。


 そんな中で大声を出すということは迷惑行為以外の何ものでもないだろう。


 美味しいものを食べて大いに喜ぶのは一向に構わないが、ここは家の中ではなく外だ。出来る限り自重じちょうしてもらいたいものである。


 俺がたしなめると、天童は口の中の食べ物をごくんと飲み込んで、神妙しんみょうな面持ちで頷いた。


 「それもそうですね……。すみません優さん、気をつけます」


 流石に天童も人様に迷惑を掛けるのはマズいと判断したのか、俺に向かって、今までにないくらいに素直に頭を下げてきた。


 その様子を見て、俺はホッと胸を撫でおろす。


 安心した。天童は本当に人の話を聞かない奴だから、きっと今回も軽く無視されてしまうんだろうなと心配していたが、どうやらそれは杞憂きゆうに終わってくれたようだ。


 「分かったのならそれでいい」


 片手を上げて、もうこれ以上謝らなくていいことを天童に伝える。


 天童は下げていた頭を上げ、それから俺の要求通り、エコバックに入っている肉まんをなるべく音がでないよう静かな手つきで取り出した。


 一口パクリ。


 再び、喜びの声が公園に響き渡る。


 「んん~! これも美味びみです~!!」

 「いったいお前は今なにを反省してたんだ!? もっと声のボリュームを抑えろつったろボケ!!」


 舌の根もかわかぬうちに出された大声に、堪らず俺は怒鳴り声を上げていた。


 先程まで見せていた反省の色はどこへやら、静かにしようとする気概きがいが全く感じられない。


 いくらなんでも忘れるのが早すぎんだろ。にわとりだってもう少し長く覚えていられるだろうに。


 「にゃあぁぁぁ!?」

 「──うわっ!?」


 しかし、マズいことをしてしまったのはどうやら俺も同じようで、すぐ近くのゴミかごに隠れていた猫が、悲鳴を上げながらとんでもないスピードで逃げてだしていった。


 その様子を見て、天童がやれやれと言った感じで肩をすくめる。


 「あーあ……もう、何をやってるんですか優さん。そう言う優さんが一番うるさくしちゃってるじゃないですか。近所迷惑になるんですから、私を怒る時はもっと声のボリュームを抑えて怒るようにしてくださいね」

 「マジでお前はどの立場で言ってるんだ?」

 

 なんで怒られてるはずの天童からそんな注意を受けなければいけないのだろうか。まったくもって意味がわからない。


 ……とはいえ、納得がいかないからといって、ここで更なる怒りの炎を燃え上がらせるのは完全に悪手あくしゅだろう。


 人の話をロクに聞かないコイツにこれ以上何かを言ったところで、この怒りが収まることは絶対にありえない。


 コイツに文句を言う行為は、やぶをつついてへびを出す行為に他ならない。無駄どころかむしろマイナス。不幸になるだけだ。


 なので俺は、大人しく怒りをグッと堪えてあげることにした。


 幸いにも先程の騒ぎで町の住民達を起こしてしまったわけでもなさそうだし、自分で言った通り静かにすることが一番だろう。


 だから天童よ……どうかせめて、俺を見てニヤニヤと笑うのはやめてほしい。決意がらいで、思わず本気でぶん殴ってしまいそうになるから。


 ムカつくんだよ、お前の笑顔。


 俺は自販機で買った温かいお茶を飲み、無理矢理に溜飲りゅういんを下げた。


 「……はぁ」


 そして、もう何度目かになるのかも分からない溜息を吐き出す。


 四月になったとはいえ夜は未だ寒く、吐き出される息が霧状きりじょうとなって目の前に広がる。冷たい風が吹き、薄着している俺の体を容赦なく叩いた。


 着替える間もなく外に連れ出されたから、さっきから寒い思いをしてばかりだ。あったか~いお茶なんて、クソの役にも立ちやしない。


 「あーむ。もぐもぐ」


 対して天童は、平気そうな顔で次の肉まんにかぶりついている。


 寒さなんてなんのこと、俺と違ってしっかりと厚着をして外出しているため、ニコニコニコニコと、本当に美味しそうな表情で肉まんを頬張っていた。メシの顔しやがって……。


 しかし……だからこそ、静かな公園に俺の腹の音が大きく鳴り響くのは必然だったのかもしれない。


 ぐぅぅぅぅぅぅぅ!!


 昼間からまともなものを口に入れていなかったからか、それはそれはもう、大きな音がした。


 「……優さん?」


 くるんと顔を向けてきた天童に、俺は無言で目をらす。自分の顔に少し熱がともっているような感じがしなくもないが、きっとそれは気のせいなので気にしない。


 これは人間として生きる上で当たり前に起こる現象なのである。恥ずかしがるようなことでは決してない。


 恥ずかしくない恥ずかしくない。俺はそう自分に強く言い聞かせて、再び温かいお茶を口にした。


 じんわりと、体に熱が広がっていく。うん、あったか~い。このお茶、凄くあったか~いですね。


 心なしか、天童の表情もあったか~く見えた。


 「ほら、やっぱり優さんもお腹空いてるんじゃないですか。遠慮えんりょしないで早く食べちゃってください。早く食べないと、せっかく温めてもらったお弁当が冷めちゃいますよ?」

 「はぁ? 何言ってんのお前? 食べないよ。バカなの?」

 「え?」


 俺の言葉に、天童は一瞬硬直した。


 俺としては別に変なことを言ったつもりは全然ないのだが、天童は何を言われたのか分からないといった感じでポカンと口を開けている。


 次の言葉が出てくるまで、少しばかりの時間をようした。


 「いやいやいや、優さんが何を言ってるんですか。別にいいですよ、食べてもらっても。というか、そのために買ったものでもありますし。……えっ、何で今私、バカって言われたんですか? そんなにおかしなこと言いました?」


 われを取り戻したものの、天童はいまだ俺の言ったことが十分に理解できてないようだった。自分の想像の埒外らちがいの出来事に、酷くうろたえた様子を見せる。


 仕方がないので、心優しい俺はそんな天童に分かりやすく説明してあげることにした。


 「いや、だってそりゃあお前が俺に食べ物を恵むなんて相当おかしなことだろ。天地がひっくり返るくらいにありえねーよ。むしろ『このお弁当を食べたら貴様を殺す』って言われた方がしっくりくるくらいだ」

 「──なっ!?」


 言うと天童は、口をあんぐりと開けて驚いていた。


 「言いませんよそんなこと!」


 かと思うと、その口の形のまま俺に向かって怒声を浴びせてくる。


 「優さんは私を何だと思ってるんですか!? アホですか! アホなんですか!? 失礼にも程がありますよ! それ以上言うと、いい加減私だって怒りますからね!」

 「お、おう、すまん」


 もうすでに怒ってるような気がしないでもないが、天童的にはまだ怒っていないらしいので、俺は慌てて頭を下げる。


 怒りの形相を浮かべられながら、拳がグッと握りしめられていたからだ。


 天使のマジ殴りは、ぶっちゃけダンベルで殴られるよりも遙かに恐ろしいものがある。


 頭蓋骨陥没どころの話じゃ済まない。普通に首から上が消し飛ぶレベルだから、食らったら即死はまずまぬれないだろう。


 「い、いやー、悪かったって。まさかお前がマジで俺に食べ物を恵んでくれるつもりだったとは思ってもみなかったんだ。……知らなかったとはいえ、本当に失礼なこと言っちまったな。お前みたいなクソ野郎にも、一応良心みたいなものがあったんだ」

 「それで謝ってるつもりですか!? 失礼さが全然抜けてないんですけど!? むしろ悪化してるんですけど!!」


 真摯しんしに謝罪したつもりがどうやら逆効果だったようで、天童は更なる怒りっぷりを見せた。


 ぷんぷん頬を膨らませながら、強い口調で文句を言ってくる。

 

 「そりゃあ確かに、家の中の食べ物を食べ尽くしたり、優さんをゲロまみれにしたり、ダンベルで頭蓋骨を陥没させたり、散々酷いことをしてしまいました……。けれど! それでも私だってちゃんと反省はしているんです! クソ野郎呼ばわりされるいわれはありません!」

 「いや流石にそれは暴論が過ぎるだろ」


 俺的にはどう考えてもクソ野郎以外の何ものでもないのだが、天童的にはどうやらそうではないらしい。


 察するに、天使の倫理観は人間のそれと激しく乖離かいりしているようだ。


 難しいね、異種間コミュニケーション。


 「……まぁでも確かに、反省さえすれば何をやっても許されると信じてるところは、めちゃくちゃに天使っぽいかもな」


 思うに、教会とかで懺悔ざんげしにくる奴らを簡単に許してしまうから、そんなふざけた思考におちいってしまうのではなかろうか。


 深く反省し、謝罪の言葉を口にするだけで罪が軽くなる。なんて悪しき風習なのだろう。この世にいる全ての天使達は、是非ともその考えを改めてほしいものである。


 そう皮肉で言ったつもりなのだが、しかし天童は何を勘違いしたのか、


 「そうでしょうそうでしょう」


 と、誇らしげに胸を張っていた。


 どうやら俺に天使と認めてもらえて、嬉しかったもよう。機嫌がすっかり治っている。


 うーん、国語力が低くて助かったぜ!


 「……ふぅ」


 奇跡的に天童の怒りが収まってくれたのを確認して、俺は額の汗を拭った。


 しかし安心したせいか、今度は緊張から解放された胃が再び強い空腹感を訴えかけてくる。いい加減腹に何かを入れてあげないと、また先程のような大きな音が響いてしまうかもしれない。


 「それじゃあ、遠慮なく貰うことにする」


 一言断りを入れて、俺は天童の持つ肉まんを取り上げた。そのまま間髪かんぱつ入れず、大口を開けてかぶりつく。


 「──あ」


 途中、天童から頓狂とんきょうな声が聞こえてきたが、すでに食べてもいいと許可はもらっているので、俺は気にせず肉まんを口の中へ放り込んでいった。


 「うまっ」


 思わず笑顔になる。


 口いっぱいに肉まんを頬張ると、ふわふわの生地から溢れ出した肉の旨みが舌を刺激して、もう最高に美味かった。環のドーナツを食べたせいもあるのだろう、まともな料理の味に、体が喜びに打ち震えている。


 うーん、これだよこれ! やっぱりご飯はこうでなくっちゃ!


 やはりまともな料理は最高である。狂う程に甘いドーナツだとか、胃酸まみれのオムライスだとか、あんなものを料理だと俺は断固として認めない。認めないったら認めない!


 「ちょ、ちょっと優さん!?」


 そんな風に俺が肉まんを堪能たんのうしていると、天童は頬をわずかに赤く染めながら、慌てた様子で止めに入って来た。


 「なんだよ、食べていいって言ったのはお前じゃねーか」


 俺のために買ったと言ったのは天童自身だ。今更止められる謂われはない。


 「あーいや……それはそうなんですけど」


 しかし天童も本気で止めるつもりはなかったのか、指同士をツンツン突っつかせながらしきりに目を泳がせていた。なんとも煮え切らない態度である。


 そんな天童に俺がいぶかし気な視線を送っていると、


 「わ、私としてはっ!」


 天童は突然意を決したような表情となって、まるで告白でもするかのような勢いで精一杯にその口を開いた。


 「そんな食べかけじゃなくて、その、あ、新しいものを渡そうと思っていたわけで……だ、だって……それを食べちゃうとわ、私と……か、関節キスすることになってしまいますから……だから」

 「は?」


 もじもじとしながらそんなことを言ってくる天童に、俺は素っ頓狂な声を上げてしまった。まさかコイツが『関節キス』程度のことで恥ずかしがるなんて思ってもみなかったからだ。


 「自分のゲロを食わせようとしてたお前がそれを言うのか?」

 「そ、そのことは忘れてください! あの時はちょっと慌ててて、判断力がにぶってたんです! さ、さっきも言いましたけど、私もバカなことしたなぁってちゃんと反省してるんですから!」


 まぁ確かに、ゲロを吐く前に自分で「本当は嫌なんですけど」とか言ってたしな。天童としても、アレはやりたくてやった訳ではなかったようだ。


 でもそれなら行動に移さないで欲しかったなとも思うけどな。どうしてくれんの俺の制服。あれ一着しかないんだけど?


 「ていうか優さん、なんでそんなに冷静なんですか。これじゃあ私だけが変に意識してるみたいでバカみたいじゃないですか」


 俺がまったく別のことを考えていたせいか、気づくと天童からジト目を向けられていた。


 「別に私だって変に意識してほしいって訳じゃないですけど、なんというか乙女心としては、間接キスにこうも冷静な反応を返されちゃうと、ちょっとだけ傷ついちゃうんです」


 そう言って、ねたようにそっぽを向いてしまう。


 どうやら俺はまた、知らぬうちに天童の乙女心とやらを傷つけてしまったらしい。めんどくさ過ぎんだろ、乙女心。


 「まぁそうだな」


 とはいえ、間接キスに反応を示さなかった明確な理由が俺の中にあったので、言い訳をするつもりではないが、一応軽く説明しておくことにした。


 「昼間に涙と鼻水入りのコーヒーを出されたからな、ちょっとだけ感覚がマヒしてるのかもしれない」

 「涙と鼻水入りのコーヒー!?」


 天童は思いのほか驚いてくれた。


 でもそうだよね。涙と鼻水入りのコーヒーって、字面じづらからしてもうヤバいよね。


 「完全に嫌がらせじゃないですか! 本当にそんなものが出されたんですか!?」

 「あぁ、いつもよりもなんかしょっぱい味がしてたし、飲んだ後のカップの底に、少しだけとろっとしたものが残ってたから間違いないと思う」

 「しかも完飲したんですか!?」


 天童の驚きは止まらない。目をいっぱいに見開かせながら、エサを求めるこいのように口をパクつかせている。


 なかなかに面白い顔をするなコイツ。タレントとか向いてるんじゃないの?


 しかし、これは俺のポリシーに関わる話でもあった。


 変顔をしている天童には悪いが、言うべきことはきちんと言っておかないとな。


 「当たり前だろう。食べ物を粗末そまつにするのは良くないからな。ハッキリ言って、俺はお前がゲロって食べ物を粗末にしたこと、まだ許してないぞ」

 「えっ!? あ──、えーと、そ、それは…………は、はい、すみませんでした」


 まさかこのタイミングでガチ説教されるとは思わなかったのか、天童は言い訳もロクに思いつかないまま素直に頭を下げた。


 今度もまた、100パーセント自分が悪いと認識してくれたようだ。


 一応反省だけはしてくれるんだよな、コイツ。次に生かそうとしないだけで。


 今度の今度こそ、きもに刻んでほしいものである。


 「まっ、今後同じようなことをしないのなら、それでいい」


 俺はそれだけを告げて、ベンチからスッと立ち上がった。


 「じゃあ俺、先に帰ってるから」

 「え、もういいんですか? おにぎりとかお弁当とかまだいっぱい残ってますけど」


 エコバックの中身を見せつけながら天童はそう言ってくるが、俺としては本当に早く帰りたいので歩きながら答える。


 「お前の胃袋と一緒にするな。俺は肉まん一個でもう十分なんだよ。頼むからさっさと帰らせてくれ。いい加減寒いんだよ。誰かさんが無理矢理連れ出してくれたおかげでな」

 「え、えーと……すみません」

 「ふんっ」


 俺は不機嫌に鼻を鳴らして、そのまま公園を後にした。


 少しキツく言い過ぎたかもしれないが、おかげで天童が追いかけてくる様子はないので計画通り。冷たく突き放す作戦が見事に決まる。


 また無理矢理腕を掴まれたりしたら堪ったもんじゃないからな。天使の力で簡単に治るとはいえ、何度もへし折られるのは辛いのだ。


 「あー、君。ちょっといいかな?」

 「え?」


 しかし、ここで問題が発生した。


 「こんな時間に一人で何やってるの? 公園で何者かが騒いでるって通報があったんだけど、もしかして君?」

 「あー、いや、俺は」


 青色の服を着たお兄さんに声をかけられてしまったのだ。


 背中から汗が噴き出す。そういえば途中から全然声の音量に気をつけていなかったから、どうやら本当に誰かに通報されてしまったようだ。


 お巡りさんに顔をバッチリと見られてしまったから、もう逃げることも出来やしない。


 「見たところまだ若いようだけど、何か身分証明できるもの持ってる? 他にも誰か一緒にいるの?」

 「あぁ、いや……」


 質問攻めされて、しどろもどろになる俺。


 何も悪いことなんてしていないはずなのに、我ながら怪しさ全開だった。


 「おい天童、お前からもなんか言って──はぁ!?」


 結局、コミュ障の俺ではどうにも出来ないので、全ての元凶である天童に助けを求めて後ろを振り向くと、天童は体を黄金に輝かせながら、何食わぬ顔でベンチに座っていた。


 天使モード発動。当然、普通の人間では目視できなくなる。


 「おいふざけんな天童、それは卑怯だろ! 天使なんだから助けろよ!」

 「…………」

 「天使? 君はいったい何を言っているんだ?」


 俺にはしっかり見えているのだが、お巡りさんには全く見えていないので、すごく変な人を見るような目になっていた。


 「まさか君、怪しいクスリに手を染めてるんじゃないだろうね?」


 それどころか、怪しいクスリをキメていると判断されてしまう。


 「えぇっ!? いやいやいや待って待って待ってくださいちょっと待ってくださいよお巡りさん! 何でそうなるんですか!? してないっすから! 怪しいクスリなんてマジでしてないっすから! 違うんです! 天使は本当にいるんです! 見えないだけで存在してるんです! あそこのベンチに座ってコンビニ弁当食ってる奴がそうなんです! マジなんですってお巡りさん! なんで見えないんですかお巡りさん! 信じてくださいよお巡りさん!」

 「はいはいわかったわかった。それじゃあ続きは署で聞かせてもらうから、無駄な抵抗はやめて、大人しく着いてくるように。いいね?」

 「いや何も良くないんですけどぉ!?」


 

 必死の言い訳もむなしく、俺は仕事熱心なお巡りさんに署まで連行されて……最終的に家に帰れたのは、それから三時間が経ってからのことだった。

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