祝杯
もう自分は良いと母親に言ったのに、母は「
私たちはまだ何もお祝いできていないんだか
ら」と言って今日の夜お祝いすると言った。
颯斗は、昨日の満漢全席が思いの外重かった
と感じていた。
仕方のないことだが…。
母の作ってくれた料理を食べきる自信が今の
颯斗にはなかった。
しかし家族がこんなに祝ってくれることは本
当に嬉しいことだった。
きっと兄貴や弟も祝ってくれるのだろう。
兄貴は家にいないけど。
きっとそうに違いない。
颯斗はそう思っていた。
いやそう信じたかった。
理由なんて特にない。
ただ嬉しいと思ったから。
大会は夏休みに行われているから、弟は家に
居るか、塾で勉強をしているはずだ。
弟ははっきり言って、すごかった。
何がすごいのかというと、陸上ではなく野球
だ。
弟である、健人は野球で全国区の選手だった
。
何もなければドラフト指名されると、ドラフ
トの雑誌に書いてあった。
兄貴はスポーツは普通だが、頭がとてつもな
く良かった…。将棋を兄貴はしているが、全
国の準決まで行ったらしい。
大学も国内最高峰の東大法学部に主席で合格
し今はアメリカに留学している。
颯斗は「全くなんで兄弟だ、親は頭良いけど
昔スポーツで全国行ったとか何とかとにかく
そんな話は聞いたことがなかった。」
颯斗は何か受け継がれたDNAがあるとは思っ
ていたけれど。
弟は今中3で野球も強く、勉強もできる高校
を探していた。
条件を満たす高校はあったが遠かった。
しかも全寮制だ。
それでも行きたいというのだから本気で野球
で飯を食っていくつもりなのだろう。
「俺にはそんな考えはできない」と颯斗は思
った。
だから今は勉強しつつ練習もしつつ、いそが
しい日々を送っていた。
一つだけ疑問に思うことがあった。
両親は自分たちの進路について行きたいとこ
ろについて、金銭面での反対はしたことがな
かった。
どんだけ父親は給料もらってるんだ?という
疑問だった。
またそのうち聞いてみようとも思った。
そんなことを考えながら時間を過ごしていた
が、颯斗は疲れて眠ってしまっていた。
しばらくして母親が「颯斗お風呂湧いたけど
入る?」という声が颯斗に聞こえてきた。
颯斗はそれにハッとした。
「あー俺眠っちゃってたか。ま、仕方ないか
」そして母親に「入る」と答えた。
風呂てゆっくりと疲れを癒そうと思った。
実際にすっきりした。
そして風呂から出ると、母親が夕食の準備を
していた。
母親に気持ち良かったと伝えると「颯斗には
楽しみにしてて欲しいから、自分の部屋に居
てね!。
また呼ぶから。」と言った。
颯斗は別に良いんだけどと思いながらも自分
の部屋に行った。
颯斗は今度はゲームをしていた。
颯斗の趣味の一つだ。
勉強をする気は起きなかった。
本当はするべきなのだけれど。
そして30分くらいだった頃声がした。
「颯斗ーご飯できたよ!」母親の声だった。
一階に行くと、弟もいた。
弟は「おめでとう。」とそっけなく言った。
颯斗は「おう」と言って、テーブルを見ると
凄いごちそうがならんでいた。
颯斗はびっくりした。
しばらく見ていると母親が「気に入った?
母さん腕によりをかけて作ったのよ」と言っ
た。
家族からの祝いこれは本当に嬉しいことだっ
た。




