ただいま!
颯斗は飛行機で外を見ていた。
景色を見ていたわけでもない。
考え事をしていた。ただそれだけのことだ。
大分であったことだ。
「自分は父親と約束したけれど、本当にやり
きることができるだろうか?」と思っていた
のだ。
そんな事を考えているうちに街が見えてきた。
そう東京だ。
あと5分くらいで羽田空港に着陸する。
長いようで短い大分だと思った。
空港では母が待っていると聞いていた。
どこにいるかは聞いていないが大方、ロビー
にでもいるのだろう。
アナウンスが鳴った。
「全日本航空326便は只今より羽田空港への
着陸を開始いたします。
シートベルトを御着用ください。」
着陸の時間はすぐだ。
降りるともう一回アナウンスが流れた。
「只今羽田空港への着陸が成功いたしました
。現在の東京の天候は晴れ、気温は32度で
す。本日は全日本航空326便にご搭乗いただ
き有難うございました。
またのご利用をお待ちしております。」
アナウンスが終わると客は降り始めた。
颯斗も降りた。
飛行機の中は冷房が効いていたので、少し蒸
し暑く感じた。
降りてロビーに向かうと、思っていた通り、
母がいた。
母がこちらに気づくと、歩いてきたそして一
緒にいた監督に、「どうも有難うございまし
た。」と言ってからしばらく世間話をしてい
た。
終わった帰るときに、監督に「有難うござい
ました。」と挨拶をした。
監督は「俺も良い思いをさせてもらったよ。
ありがとう」と言った。
その一言は嬉しかった。
頭を下げて車にむかった。
車に乗り込んで羽田空港を出発してから、母
が話しかけてきた。
「優勝おめでとう、母さんねテレビで見てた
んだけど、感激して涙が出てきちゃったわ…
そうそう浩二君も三位なんだってね?
すごいわよねー友達同士で表彰台に乗っちゃ
うんだから…。」
颯斗は「浩二は嬉しいって言ってた。でも一
つだけ心残りがあるとも。」
母は「そう…何なの?」
「俺に負けたことだよ。
でも、結果は素直に認めるとでも、次は絶対
に負けないってね」
「あら?そしたら颯斗も浩二君にかっただな
んて思ってちゃダメね。すぐに抜かされちゃ
うわね。」
「まぁ俺はこれから本格的に受験勉強に入る
。勿論浩二も同じような状況になると思う」
「そういえば浩二君の志望校はどこなのかし
ら?知ってる?」
「いや、でもあいつ頭良いからな。それに迷
ってた。」
「そう…。まぁでも取り敢えず今日はのんび
りとしなさい。」
「そうするつもりだよ。」と言った。
「今日はご馳走用意してある」と母はいっ
た。
颯斗はそのあと疲れて寝ていた。
気がつくと見慣れた景色になっていた。
そう家に着いたのだ。
颯斗は心の中で言った。
ただいま東京!ただいま!」と。




