父親
忙しい颯人の父親の経緯です
じわりじわりと時間は迫ってきた。
そう決勝の時間が。
颯人はさっきまで、日本新聞記者の佐山さん
からインタビューを受けていた。
そしてアップの時間になってアップを始めた
。
しかし体が少し動きにくいような感覚に見舞
われた。
「理由などわかるものか!」こう颯人は思っ
ていた。
同じ頃浩二は、とにかく緊張しないためには
意識しないことと思っていた。
そのために取材も全部走り終わった後にして
くれと言っていたものの、決勝の雰囲気は予
選準決勝とはまた違うものだ。
浩二も意識しまいとしていたが震えるくらい
に緊張していた。
そして、アップも終わり召集されスタンドを
歩いているとある人が見えた。
父親だ。
颯人の父親は大手銀行の行員で今は福岡市の
支店の支店長をしていた。
颯人が住んでいたのは、東京だったから父親
は単身赴任をしていたのだ。
そんな父が忙しい中自分のために大分まで応
援しに来てくれたのだ。
嬉しかった。
後で話そうと思った。
忙しい父は1年前に福岡に転勤して以来、ほ
とんど、颯人と話していなかったし、東京に
戻ってきていなかった。
走るのが楽しみになってきた。