準決勝本番
しかしいくら調子が良くても油断はでき
なかった。
昨日の浩二の姿を見ているから…
組は颯人が2組、浩二は1組だった。
組は全部で3組組あった。
2着+二人が決勝に進むことができる。
全国大会もここまでくるともう強者しかいなくなる。
全員10秒半前後で走る可能性のある選手ばかりだ。
そんなことを考えつつ、アップを終えた。
召集場所に向かうと浩二の姿があった。
少し緊張していたような表情をしていた。
仕方のないことなのだろう。
昨日、緊張のせいで動きが硬くなったのだ。
それも今まで経験もしたこともなかったくらい、プレッシャーに強い奴が。
颯人は敢えて浩二に声をかけなかった。
自分も緊張はしていたし、浩二も集中していたと思ったから。
時間がきて召集され、召集場所からスタート位置に移動した。
1組が準備を始めた。
もうすぐ、スタートするのだ。
浩二もブロックを合わせて、軽く走った。
大丈夫なように見えた。
不安なことが一つあった。
1組めには優勝候補と目されている、松原光輝という選手がいた。
来年は日本代表になるとも言われている。
そんな奴がいる組で浩二は戦わないといけなかった。
コースと学校、名前が言われると、スターターの声が聞こえた。
「オンユアマーク」
全員の動きが止まった。
「セット」
「パン!」
雷管の音が競技場に響いた。
浩二は出だしは良かった。
伸びていく、しかしやはり松原は強い一着だ。
速報タイムは10秒4、まだ余裕のある走りだった。
一方の浩二は二着か三着のどちらかだった。
タッチの差なのだろう。
判別できなかった。
そうているうちに、颯人の出番が来た。
行く前に「よし!」と言った。
全てが終わった後、スターターの声が響いた。
「オンユアマーク」
「セット」
「パン」
ここから先はなにも聞こえなかった。
もっと速くもっともっと、と思いながら走っていた。
結果は一着だったらしい。
速報タイムは10秒52向かい風が吹いている中で良い記録だった。
浩二が声をかけてきた。
「俺の勝ちだな」と。
颯人は疑問に思ったが、浩二の話を聞いて納得した。
浩二は組で二着だったらしい。
タイムは10秒48何と、浩二は負けていたのだ。
何はともあれ、二人とも全国大会の決勝に進んだのだ。