表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/153

005 古書店跡

 辺りを見回すと、そこは自室だ。ちゃんと帰ってこれたことにホッと息を吐く。左手には最終ページが開かれたままの本がある。

 パソコンのモニタは消えたままだが、まだきちんと電源は入っているようだ。

 本を閉じて机の上に慎重に置くとモニタの電源を入れる。

 どうやらゲームは起動したままで、露店の商品が問題なく売り切れていた。マウスとキーボードを操作して露店にアイテムを補充すると、モニタの電源を再び消した。


「ふう。ゲーム自体はそのままだったな……」


 椅子に座って一息つく。腹が減って戻ってきたはずだが、パソコンを目の前にするとゲームの中の露店の様子が気になってしまった。今度こそと思い財布を持って立ち上がると、自室を出てコンビニへ向かうことにする。

 家の外に出るともう薄暗くなっている。そろそろ晩飯時のようだ。春になって暖かくなってきたかと思ったがやはり夕方は冷える。上着を着てこなかったことを後悔しつつも、どうせ自転車を漕いでるうちにあったまるだろうと思いそのまま出ることにする。

 自転車で五分ほど行ったところにコンビニがある。たどり着く頃には体はあったまっている。適当に弁当とお茶を買い、コンビニを出る。


 ――そういえば、例の本を買った古書店はこのすぐ先だったな。


 帰ろうと自転車に乗ったところでふと思い出した。ちょっと寄ってみるか……。

 特に何か目的があったわけではないが、なんとなく行ってみようという気になった。向かっている途中で、店主にあの本について何か知ってることがないか聞いてみようなどと思ったところで到着したのだが。


 そこに古書店はなかった。


 いや、お店が入っていた建物はそのままあるのだが、中は完全にもぬけの殻だ。


「なんだこれ……?」


 自転車を脇に止めて店の前に立つ。扉の外にまで並べられていた本も本棚もすべてなくなっている。扉のガラス越しに中を覗くが、もちろん何もない。最初から何もなかったかのように、うっすらとホコリが積もっているようにも見える。

 うーん。ここであの本を買ったのは今日だよな……? 疑問に思いながらも本を手に入れてからの行動を思い出す。


 確か昼過ぎにここを通りかかって、本を手に入れたはずだ。そのまま帰ってから確かビール片手にゲームの様子を見ようとして、あの世界に飛んだんだっけか。

 そのままマジシャンになって敵を倒して、夕方になって腹が減ったから戻ってきたんだよな。って、ゲーム中の夕方だったけど、時間経過ってここと同じなのかな。

 ゲームの中に入っている間に実は何日も経ってましたなんてこともあるんではないだろうか。

 若干冷や汗を流しながら、思い出したようにポケットからスマホを取り出すと時刻を確認する。


「ああ、やっぱり今日のままだ」


 経過時間はだいたい同じらしい。となるとますます謎が深まるばかりだ。古書店は確かに存在した。ここにあの本が存在することがその証拠だ。なのに古書店はもう綺麗さっぱりなくなっている。

 とりあえず古書店だった外観だけでも写真に撮っておくか。スマホを構えて元古書店の写真を撮る。ネタとしてSNSにアップしようかなどと思ってた時期もあったが、あんな体験をしたあとだと若干躊躇われる。


 お店がなくなってるなら他にすることはないと思い、そのまま帰ることにする。

 自宅に自転車を止めて自宅へと入る。キッチンの電子レンジで弁当を温めると、そのまま持って自室で食べることにする。


 机の上に例の本が置いてあることを改めて確認すると、ひとつため息をつく。椅子に座り、買って来たお茶で流し込むように弁当を素早く食べ終えると、ゲーム内での出来事を思い浮かべる。


「ははっ、『ステータス』が見えるなんて、面白かったな……」


 そう呟いた瞬間、――目の前にステータス画面が現れた。


「……えっ?」


 そこにはこちらの世界に戻る直前、ロードライフオンラインの中で見たステータスが表示されている。


 いや、ちょっと待って、なんでゲームから出てきたのにステータスが見えるわけ?

 ゲームの中に入ったのだから、スキルとかああいった能力はゲームの中だけで使えるものだと思い込んでいた。だがそうではないのか。

 いや、そういえば服装も部屋着のままだったし、手に持っていた缶ビールまでゲームの中に持ち込んだよなと思い出す。


 もしかしていろいろ持ち込めるのか……。ということは、持ち出せる(・・・・・)ということか?

 そういえばアイテムボックスにいろいろ詰め込んだままだったな。


 思いついたら試してみるしかない。ゲームの中でしていたようにアイテムボックスを表示させる。と、問題なく表示された。

 あ、空き缶ここに入れっぱなしだったか。

 ひとまず取り出してみると、ビールの空き缶がそのまま手の中に現れる。


「うわっ、こりゃすげーな」


 俺もうカバン要らずですかね。どこでも手ぶらでいけそうだ。

 まあそんなことは置いておくとして、空き缶はゴミ箱だな。

 そしてそのまま杖をアイテムボックスから取り出す。無骨な木製の杖は、ゲームの中で見た姿と同じ形で俺の手に現れた。


 うーん。もしかして……、スキルとかも使えたりするんだろうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
↑クリックで投票できます

第六回ネット小説大賞受賞
隣のお姉さんは大学生
もよろしくお願いします!

ホムンクルスの育て方(改)
魔改造されたホムンクルスに転生したお話はじめました。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ