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本からはじまる異世界旅行記  作者: m-kawa
第四章

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139 転生者は異世界で何を見る? -倉科瑞樹3-

またもや瑞樹視点です。

 以前を思い出して尻込みしていたのだが、実際にこの世界の魔法を使って魔物を倒してみると、なんてことはなかった。

 何せ倒した魔物は血を吹き出すこともなく、消えてしまうのだ。ドロップアイテムを残して。


 それにしても王女様に魔物を釣ってくる役割を任せるなんて、誠さんは何を考えているんだろうか。

 まぁ本人がやりたいと言って楽しそうにしてるし、最初の街周辺なんて雑魚しかいないから問題はないんだろうけど。

 何事もなくある程度レベルが上がったところで、翌日からようやく魔工都市エキドナへ出発だ。


 意気込んでいたものの、エキドナへ出発する乗合馬車は週一の運航で、次は明日の午前中になるとのことだった。

 旅の前のワクワク感がちょっと減ってしまったのは言うまでもない。

 事前に聞いていたとしても、明日出発は変わらなかっただろうけども。


 時間もあったので、ギルド職員さんの忠告を聞いてとりあえず防具を揃えることになった。

 おれは金属製の鎧とかを想像したんだけど、体力のない今の状態でそんなものを着たら満足に動けそうにない。

 どうやら誠さんも似たようなことを考えていたらしく、お勧めされた寂れた防具屋で動きやすさ重視の服を店主にお願いしていた。

 誠さんから予算を聞いて驚いてはいたが。


 今のおれと大差ない身長だが横幅は倍以上あるドワーフっぽい店主が、カートに何やら防具を積んでカウンターの奥からやってきた。

 フィアさんは嬉々としながらあれこれと防具を選んでいる。そんな様子を誠さんは緩んだ表情で眺めている。

 おれもじっと見ているわけにはいかないので、目の前の防具を手に取って広げてみるんだけど……。

 なかなかサイズの合いそうなものがない。

 ようやく見つけたのは地味なグレーのローブだった。他にも探してみたけど残念ながらサイズが合わず、これしかないようだった。


「……むぅ」


 だというのに、おれが選んだ物が不満なのかフィアさんがふくれっ面をしている。

 そんなかわいい表情をされても他にサイズがないんだからしょうがない。

 日本でフィアさんに着せ替え人形にされたことを思い出しながら、心の中で「我慢してください」と呟くのだった。




 ことが起こったのはその後だ。

 ちょっと店内が狭かったので、外へ出て動きを確かめている時だった。


「ぐっ!」


 急に何かが視界に入ったと思った瞬間に体を衝撃が襲い、気づけば自分の顔は地面を向いていた。そしてどうも地に足が付いていようだ。

 痛みに眉を顰めながらも何があったのかと周囲を見ると、誰かの足が側にあることに気付いた。

 これは……、誰かに小脇に抱えられている感じなのか。


「ふん。騒ぐんじゃねぇぞ小娘」


 頭上から恫喝の声が聞こえてくると同時に、じわじわと恐怖が心の奥底から湧き上がってきた。

 まだ多少混乱は残るものの、状況はなんとなく理解できてしまった。

 おれは今……、男に襲われて……、連れ去られているんだろうか。


 小脇に抱えられて走る男の振動がするが、そんなことはどうでもいい。

 ただただ自分の心が恐怖に塗りつぶされていく。体がカタカタと震えているのが自分でもわかる。

 男が二人で何やら頭上で会話が行われているのだがまったく耳に入ってこない。

 なんとなく自分を呼ぶフィアさんの声がしたような気がしたけど、きっと空耳だ。


 ――怖い怖いこわいこわいコワイ。


 人が怖い。


 以前にギルドで素材換金時に脅された時も怖かったけど、その時はここまで恐怖を感じる対象だとは思ったこともなかった。

 心の奥底のどこかできっと、『人』とは会話が成立するのだから、問答無用で襲われることなんてないと思い込んでいたのかもしれない。

 確かに普段、日本の街を歩くときに周囲に気を配るなんてことは考えたこともない。やっぱり日本は安全なのだ。


 ひたすら恐怖に震えていると、どこかの建物の中に入ったのか視界が暗くなった。

 自分がこの先どうなるんだろうかと思うと恐ろしくてしょうがない。具体的にどうなるか想像はできなかったけど、ただただ恐怖だけがあった。


「よいせっ」


 建物の奥の部屋へとたどり着いたとき、抱えられた男に掛け声とともに放り投げられた。


「――っ!?」


 後頭部を地面に打ち付けて蹲っていると、おれに近づいてくる男の足音がしたかと思えば、伏せていた顎を掴んで持ち上げられた。

 見事なアゴクイではあるが、今の瑞樹にはツッコミを入れる余裕などない。

 涙で滲んだ視界のせいで相手の顔はよくわからなかったが、なんとなく気持ち悪いニヤついた表情っぽいことだけはわかった。


「はっ、改めて近くで見りゃ上玉じゃねーか。

 ――チッ! しっかしこんな上等な装備しやがって」


 そう呟くと男の手がおれの着ていたローブを掴み、脱がそうとしてきた。


「……やっ!」


 やめろと叫びたかったがうまく声が出ない。抵抗しようにも体も恐怖に縛られたのかうまく動かせない。

 どうやって腕を動かすんだったっけ。

 いやそもそも、どうやったらこの恐怖から逃れられるのか。

 どうすればいいのかわからない。


 誠さんとフィアさんと魔法の訓練をしたことなど、今この時には綺麗さっぱり思い出されなかった。

 思い出したとしても今の恐怖に塗りつぶされて動揺しまくりの精神状態で、魔法が撃てるかどうか定かではなかったが。

まさか3話で終わらなかった。

きっと次で終わるはず。

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第六回ネット小説大賞受賞
隣のお姉さんは大学生
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