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シンの武具店

 路地裏に退散したものの、このゲームのマップの暗記とか全然していなかったので、散策と自己弁護しながらも、迷子になる始末である。


 「こんなことなら、もう少しネットで情報収集しておけば良かったですね。」


 そんな事をつぶやきながら、私は改めてこのゲームが凄いということを感じていた。なぜなら、いままで歩いてきたということをゲームの中なのに実感出来ているからである。このゲームでは、五感のうち三つが組み込まれてある。それは、「視覚」「聴覚」「触覚」の三つなのだ。残念ながら、「嗅覚」と「味覚」はまだ未実装だが、もうすぐ実装されるらしい。

 

(ダメージをくらったら、やっぱり痛いんでしょうか?まあ、そこは実際に試してみるしかなさそうですね。)

 

 そんな事を考えていると、ふと、とある看板が目に入った。そこには「シンの武具店」と書かれており、


 (とりあえずその店の人にでも話を聞こうかな。)


 と思い、店の扉を開けた。すると、


 「いらっしゃいませ。シンの武具店へようこそ!」


 という女性っぽい声が聞こえたので、すこし安心しながらも店の奥に歩いていき、おそるおそる


 「えっと、、、あの、、、ここってアルスのどこらへんかわかりますか?」


 と聞いてみると、


 「申し訳ありません。私には武器の取り扱いや販売しかできないように設定されておりますので、その質問には答えられません。すみません。」


 というふうに返されて、つい


 「えっ!?あなたNPCなんですか!?」


 と聞き返してしまう。すると、店の奥の方で何かが落ちた音がした。そして、


 「嬢ちゃんって、面白いやつだな。」


 という声が聞こえたと思うと、店の奥にある階段から一人の男性がお腹を抑えながら、ゆっくりと出てきた。その男性は、ダンディという言葉が物凄く似合うような感じがした。しかし、なんだかバカにされたようなきがしたので、むっとして、


 「面白いって、どーゆーことでしょうか?」


 と、すこし頬を膨らませて反論してみた。すると、なんでかその男性がさらに笑いだしてしまった。そしてやっとおさまったのか少し息を整えてから、


 「いや、NPCとプレイヤーの区別がつかないやつがほんとにいるとは思ってもなかったから、おもしろすぎてつい、な?」

 「つい、な?じゃありませんよ!おこりますよ!」


 すると、男性はすこしびくっとして、


 「す、すまん。そんなに怒るとは思っても見なかった、すこしやりすぎたな。本当にすまん。」


 と何故か半泣きになっていたので、


 「ま、まあ、そこまで反省してるのならいいでしょう。」


 というと、


 「よかったー、流石に初対面の美、、、」


 といいつつ男性はほっとしていた。そして気合を入れ直すような動作を取り、こう言った。


 「初めまして、俺の名前はシンこの武具店の店主をしている。職業は鍛冶師でテスター上がりだ。」

 「えっと、、、その、、、」

 「ん?どうした?ほら、自己紹介、自己紹介。」

 「は、はい!わ、私はコ、コマチと申しまして、しょ、職業は、えっと、、、あの、、、その、、、き、騎士でしゅ!」


 盛大に噛んでしまいうつむいてしまう。


 「まあ、まあ、そんなに緊張すんなって、ほら、もう一回言ってみな。」

 「は、はい、」


 すこし息を整えてから、


 「どうも、初めまして、私はコマチです。職業は騎士で、ソフトは今日弟にもらって初めてのログインです。こういうゲームも全然慣れてなくて初心者です。レクチャーとかしてもらえるととても助かります。よろしくお願いします。」

 「えっと、コマチちゃんね、俺のことはシンで構わないよ。まあ、テスター上がりとはいっても戦闘面はからっきしだけどな、まあ武器や防具なんかの注文なんかがあれば頼んでくれるとうれしいかな。」

 「わ、分りました。シンさんですね。知らないことが多くてご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いします。」


 こうして、私は初めてのゲーム友達ができたのであった。

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