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仕組み?

 ファリアさんの意味深な言葉。仕組みって何の仕組みだよ。


 その日の夕食の席で仲の良くなった同僚の隣の席を確保して腰を下ろす。


 モヤモヤしながら配給してもらった夕食を置き俺は考え込んでいた。


 夕食の時間のフィフス砦の食堂は一度に百人は収容できる広さがある。


 この時間は砦の防衛組や周辺の探索組、次への進行の足掛かりになる地の開拓をする遠征隊の帰還者など多くの傭兵でごった返している。


「どうしたんだルイト。便秘にでもなったか? 」


 にこやかに冗談を言う同僚のケイン。


 こいつも俺と同じく物語の中なら端役的な可も不可もない容姿をしている。


 俺が傭兵Aだとすれば傭兵Bって感じのモブキャラのポジション。


 少し金色の入った茶髪のくせっ毛でとても目が細い。のんびりとした顔の頬にそばかすがある。歳は俺と変わらない高校生程度だろう。


 ちなみにファリアさんは少し上で二十歳前後に見える生徒会長ポジションのお姉さまって感じだ。


 この傭兵団の平均年齢は比較的若い。


 何でもこの世界の成人は十六歳。志願して傭兵を経験しておくと、その後の他の職に就職するときなどに有利になるらしい。


 それでなくても人口増加の問題に突き当たっている人族の他職種への就職は厳しいのが現状だ。


 星の一欠片の大陸だけではあぶれるものが多いため、自ら土地を開拓していくしかないのだ。


 少しずつ領域を広げ、安定すると砦だった場所を中心に町ができる。そしてまた拡大のため遠征しては侵略拠点の砦をその地に建てる。安定のため周辺勢力を撃退する。その繰り返しで発展してきた。


 もちろん平穏な拡大が望めるわけもなく、日々、他勢力から領地を奪い奪われを繰り返して一進一退の状態な訳だ。


 しかし、こんな殺伐とした情勢の傭兵団の中にはファリアさんを筆頭に女性も多数在籍している。


 こんなピリピリした世界で、砦に男しかいないという事は無いのが唯一の救いだろう。


 この世界は人口増加の過密状態で、子をなす女性の優先生存権が高い訳もなく、驚くほど男女平等な世界だった。


 能力的にも女性が男性に劣るなんてものはほとんど無く、下手すれば華奢な女性が大男に圧倒する何て光景も見られる。


 全てはレベルとステータス次第と言うわけだ。


 レベルは他勢力を倒すと上がる。だが他勢力もそのシステムは同じである。


 レベルと言えば、高レベルの者が少数精鋭でこの遊戯ゲームのクリアを目指して一直線に塔を攻略してしまえば終わるだろう。


 俺は最初はそう考えていたが、困難な理由がある。


 理由その一。大陸の構造上、必ず何処かで他勢力の軍勢に囲まれてしまう。そして、その高レベルが逆に多勢力の糧になってしまう。コレが塔まで未だにたどり着けない理由の一つ。


 更に追記として少数の精鋭が塔にたどり着いても塔の扉は開かないと言う徹底ぶり。何でも神様達のルールで種族単位でその地を約千日守りきってやっと塔を開く条件を満たすのだそうだ。


 難儀な勝利条件である。


 他にも厄介なルールがある。


 塔周辺で死亡を含む消失ロストと呼ばれる状態に陥ってしまうと、種族や勢力に関係なく“第六の勢力”と言われるシシャと呼ばれる存在に変わってしまうと言うのだ。


 誰もその発生法則を知らず謎が多い存在“シシャ”。この存在になってしまったものは塔の守護のみしか行わず、元の勢力にも牙を向く。


 そんな特異な地域性がさらに難易度を高めている。


 この高難易度が塔攻略に各陣営、躍起になれない理由その二である。


 とまぁ、ケインの容姿やらの説明から大きく脱線した訳だが席に座りケインを見返す。


 コイツが当面の俺の目標の傭兵団の平均値である。それで良く観察しているうちに仲良くなったって話だ。


「糞詰まりで困ってる顔に見えるか? 」


 顔をしかめて抗議する。


 配給して貰ったシチューにパンを浸して口に中に放り込みながら先程のファリアさんとの修練場での出来事を話してみた。


「あぁ、ルイトは種族能力トライブアビリティについて知らなかったんだっけ? 顔を見てると見た目はまんまルイスだから知ってるもんだと思っていたよ」


 そこまでケインは話してハッとした顔をしていたので、気にするな。と手をヒラヒラ動かし続きを催促する。


 ちなみに失言だとケインが止まってしまったのは、俺の体の人の元の名前を言ってしまったからである。


 慌ててコップの中の飲み物を飲みだし誤魔化すケイン。


 良くもまぁ……。

 気まずい微妙な空気が流れる。


 俺の名前が平野ヒラノ 類斗ルイトでこの身体の元の持ち主の名前がルイス・ヒラーって言うらしい。


 ええ、もじって被せてあるような名前の響きに俺は親近感にも似た繋がりを感じましたとも。それを知った当初は、この状況に意図的な悪意を覚えたものだ。


 考え込んでも仕方がないルイスの精神の所在やら俺の元の身体の無事は転送したと知った頃に全部棚上げしてある。


 最早、二ヶ月目に突入するまでわずか数日の今日には今更である。


「で、そのトラブルアクティビティってのはなんだ? 」


 それにあまり開かない目から涙を流して飲み物を吹き出すケイン。気管に入ったのか大きくむせ込んでからツッコミが入る。


問題活動トラブルアクティビティってどんな聞き間違いだよ!! 」


 冗談はこの辺にして、俺の手腕により場の気まずさがなくなったのでそのまま話の続きを聞く。


 ……決して本当に聞き間違った訳ではない。


 ケインは改めて種族能力トライブアビリティの話を教えてくれる。


 天啓オラクルにより遊戯ゲームが始まり最初に各種族に神々からあの高性能の腕時計型魔道具が与えられた。


 それは各勢力に十個しか与えて貰えなかった貴重品だったらしい。


 人族の担当した神様は、人族だけしか知的種族を置いていない大陸を作っていたので全てが人族の代表に渡された。


 他の大陸はまちまちに知的種族がいるから一種族一個って勢力もあったみたいだ。


 大森林連合なんて良い例だ。


 それで最初に調べられたのが各大陸の代表的な種族の性能。

 つまりステータスの把握である。


 魔族がもっともバランスよく優れていた。

 獣人は身体能力に優れていた。

 エルフは魔法に優れ、竜人はその身にある頑強な鱗の防御力を持ち、翼人は飛翔出来る翼を持って空をかけ立体起動を有していた。


 人族の優れていたのは、適応力の高さとその繁殖力のみ。

 他は他種族に圧倒されるほど低かった。


 ここで人族は、その中の一つの魔道具を分解してその仕組みからなにまで調べたらしい。


 どのような構造で動いてるのか知りたい欲求と生存をかけた覇権争いを生き抜くため、解体して仕組みを各分野で体系化し調べあげ、大量に量産したのだ。


 それが今、俺達の腕についてるタイプである。


 神様特製のより若干劣るが、ほとんど変わらない高性能の魔道具を量産した事により、他勢力より劣っていた部分を補って一歩前に出た。


 他人のステータスが見えると言うのは現実リアルではけっこう重要で有利になる条件の一つだ。相手の状態から性能まで何から何まで情報として手に入る。


 更に人族には有利な点があった。繁殖力が高いと言うことは絶対数が多いと言うこと。


 戦いで一対一にこだわる必要もないなら、個体の質がどんなに高くても数に勝つ事は難しいのは自明の理である。


 それを実行して今も勢力争いを続けているわけだ。


 そして多勢力と互角に渡り合うことの出来る機能がこの魔道具にはもう一つある。


 それがさっきより話している種族能力トライブアビリティである。


 これは本来は種族を率いて希少な魔道具を持っている各種族の代表しか使用できないモノとして神様達は設定していたと思われる強力なもので、各種族の特性にあった能力を短時間のみ発動できると言う機能だったのだ。


「つまり……えと、どういう事? 」


 ケインの話を聞き腕時計型の魔道具を見る。


 それがファリアさんの言っていた「仕組みを知らない」って事とどう結び付くのかがわからなかった。


「ルイト、何度か傭兵団の遠征の偵察とかに付いていったことあるよね。そんな時、戦闘で急に皆の動きが良くなったこと無かったかい? 」


 目で瞼の裏でも見るように思い出すように考え込む。


 確かにあったような無かったような、素人の自分じゃ発動していたのかどうだかわからなかった。


「ちなみに僕が種族能力トライブアビリティ増幅ブーストを使ってルイトの通常状態をやっと圧倒できるレベル」


 俺の正しい中間地点の目標のケインの爆弾発言。それによって思考が止まる。


 この便利道具を人族は量産して配布してあるのだ。


 短時間でもこれを使えば多勢力の優れた種族とも五分に戦える状態になれる一種の増幅装置ブースター。コレが人族の戦士各人の手にあるのだから他種族にしたらたまったものではない。


「で話は戻るけど、さっきのルイトとファリアさんとの稽古の時の話ね。話の流れから察するに最後の連撃時、ファリアさんも種族能力トライブアビリティで低レベルのだけど能力増幅(ブースト)していたって推測出来る訳さ」


 涼しげに笑って親指を立てて笑うケイン。その名探偵顔負けのドヤ顔を見てやっと俺は思考停止から戻ってきた。


「なん……だと? 」


 能力の増幅ブースト? なんだその後付け設定。つまり俺の埋没する才能は失敗したと言うことか?


「なぜ、誰も教えてくれなかった!」


 俺の挫折の慟哭が砦の食堂にこだましてそして消えていくのだった。

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