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アドナイへと至る旅路

 結局、メリットとデメリットを照らし合わせてレイラの提案を受け付ける事にした。


 七国機関を頂点とした軍部、傭兵からなる人族の開拓進軍計画とは別方向からの世界の情報収集が可能になる点。


 今後、万が一に規律や規則などで身動きがとれないときの手足となる人員が確保できている点。


これがメリット。


 今後の山賊行為の一切の禁止を徹底するための物資調達、定期的な情報面等でのサポートをする点。


 物資調達の為の金策。及び山賊となった彼らとの繋がりが発覚した際に七国機関に睨まれる可能性がある点。


これがデメリット。


 だがデメリットの七国機関に睨まれる可能性と言うのは俺は案外、低いと感じる。この件について七国機関は非常に高いレベルで情報操作に成功しているからだ。


 必死に真実を知って脱走した傭兵達が、逃走先で真実を訴えても、その砦の傭兵の魔道具の認識番号を全て把握する七国機関が山賊行為を行った脱走傭兵と認定すれば、真実は隠蔽され一気に片が付いてしまう。


 例え山賊の世迷い言を真に受けた人間がいたとして、これこそが真実だ。と広めようとしても高レベルで情報操作は出来てるので相手にしなければどんなに大声を出してもそれはただの世迷い言としてしかその他大勢は見ないのである。


 逆に軍部などを動かして躍起になって対応すると、その人間の言っている事の真実味が増す結果になるのだ。


 協力する者や繋がりを持つ者が睨まれる云々の前に、既に逃走傭兵は四面楚歌。これ以上の追い込みの必要は殆どないのだ。


 これでデメリットは一つ消える。


 物資調達や情報提供も街でしか手に入らないモノを調達するだけで良いらしい。金銭的な話は元傭兵達が作っている工芸品やら狩猟や採取した物を売って充てて欲しいと頼まれている。こちらは俺の能力“収納”があるので金策の心配が無いのなら、特に大きなデメリットは存在しない。


 メリットの方の追記として決して、脳内で如何わしいアレコレを想像した訳ではない。


 いや、ちょっとは……。違う、断じてない。


 負傷者の多いレイラ達一味は比較的安全な近くの拠点で療養するらしい。


 無傷の者やファリアさんの圧縮空気の毒針の魔法の直撃を免れた比較的軽傷の者がその運搬やらをするらしい。


 負傷者には今後が気になる重傷者もいるが、ここに来ていない脱走傭兵(山賊)内にも非戦闘員の衛生兵はいるらしく回復の魔法が使えるので大事には至らないだろうとの事である。


 この世界に回復魔法が存在することは知っていたが、実際には未だに見た事がなかったので少々興味をそそられたが、アドナイの状況も後回しに出来ないので多くの山賊達とは別れて先を急ぐこととなった。


 現在は山賊の中でレベルの高いレイラのみが俺とファリアさんに付いてくると言う構成でアドナイを目指しているところだ。


「なるほどね。軍部が動いていたからアタシらの事が何処かからアドナイの街に漏れたのかと思ってたよ。本格的な山狩りでもされるのかと思って慌てたさ」


 俺達の行動のあらましもアドナイへと向かう途中でレイラに教えておいた。


 レイラはファリアさんの馬に相乗りである。


 最初は俺の後ろに乗ろうとしたが、ファリアさんが断固拒否して渋々自分の乗る馬に乗せた経緯がある。


「それで、慌てて情報を手に入れるための人員探しに出て都合の良い二人組を見つけて強襲したと思ったら、アタシらは返り討ち。更にはミノタウロスから助けられたって訳か。ちょっとお粗末だねこりゃぁ」


 自分達の行動を自嘲気味に振り替えって笑うレイラ。基本的には裏表がない性格らしい。


「それでルイトのかしら。相手の能力が恩恵ギフトだとして検討と対策はついているのかい? 」


 レイラの俺を呼ぶときの口調が提案を受け入れた時から変わったが、敬語やら様付けはむず痒いので現在の状態になって落ち着いた次第である。


「その頭って言うのも止めてくれると、俺としてはありがたいのだけれど……? 」


 俺は多分、承認されないとわかっていながらも控えめに並走する馬上からレイラに抗議する。ちなみにファリアさんは終始面白くなさそうな顔である。


「レイラ。あまり喋っていると下を噛むぞ! 」


 ムスッとした表情で一言レイラに注意しながらファリアさんは馬を走らせる。金髪のショートボブのファリアさんと癖っ毛交じりの後ろで縛り上げたレイラのたなびく銀色の長い髪。


 肌の色は白と黒、髪の色は金と銀。共に美人だがなにかと対照的な二人である。


 しかしレイラの杞憂ももっともだ。アドナイで俺はどう立ち回るか? それは結構重要な問題である。


 実際に見てみないと正確な情報は手に入らないが、予測だけはいくらでも出来るのだ。


 何通りもの可能性を脳内で組み上げて、情報と照らし合わせ行動予測を組み上げる。


 蓄積していく予想。だがこれと言って同郷の相手の能力に検討はつけても対策は殆ど立てられないでいた。


 レイラやミノタウロスに出会ってからはアドナイへ至るその後の旅路は驚くほどに穏やかだった。


 さすがに距離はあるので一度、野宿をする事になる。


パチパチパチ……。


「こうして焚き火を見るとこの世界に来た日を思い出しますね」


 登校途中に穴に落ち、気が付くと焚き火の跡の前。理解不能な状況に混乱した末に芋虫に殺されかけた。


「あれから二ヶ月か。早いものだな」


 焚き火に差した魚の串を取って俺に手渡してくれるファリアさん。


 レイラはちょっと離れて仲間達の無事の確認の為の通話テレフォンをしている。


「ところで……。あまりに直ぐに信用しすぎじゃないか? 」


 通話テレフォン中のレイラを一瞥してファリアさんは俺に注意喚起してくる。


「あぁ、出会い方がアレでしたからね。レイラの事が面白くないんですね」


「そ、そうではないんだ。山賊をやっていた裏事情は充分に同情出来るのだ。そうではなく、なんか近いからモヤモヤするのだ」


 なんだろ? ファリアさんは無意識のうちにレイラに嫉妬しているようだ。俺の下に付く宣言したレイラの日常的になにかとスキンシップをとる馴れ馴れしい性格が羨ましいらしい。


 俺的にはあのスキンシップは大型の肉食獣になつかれているみたいにしか感じないのだが。


「ならファリアさんも近くに来ますか? 」


 臆病な俺の精一杯の努力である。どう返されるのか内心ではビクビクしている。戦闘状態のほうが冷静であるぐらいだ。


 焚き火の奥に対面で座るファリアさんは一瞬、硬直していたがコクッと頷いて俺のすぐ隣に移ってきた。


パチパチパチ……。


 しばらくお互いに無言が続き、焼けた魚を食べるだけの時間が過ぎる。何か言わなくては? と思うがこんな時に俺の能力アビリティは全く役に立ってくれない。


 あまりに無心で魚に食いついていたので小骨が喉につまり盛大に噎せてしまう。


「ゴホッ、ゴホッ」

「馬鹿、慌てて食べるからだ。ルイト大丈夫か? 」


 そんな俺に慌ててファリアさんは背中を指すってくれる。何とか落ち着いて差し出された水を一気に流し込んだ。


「助かりました。ファリアさん」


 ちょっと涙目になりながらお礼をいうと、現在の距離に二人して気がついてしまう。


 肩越しに背中を指すってくれたファリアさんと振り向き様に目が合って、また二人して時間が止まってしまう。


 沈黙が続く。こんな時に何で“高速思考処理”の能力は働かないのだろう。


 焚き火の炎に照らされたファリアさんの美しい顔が赤くなっているのは、それだけのせいじゃ無い気がする。かくゆう俺も自分の顔が真っ赤になっている自覚がある。


「二人して何、見つめ合って固まってるの? そういうゲームか何か? 」


 どれくらい見つめ合っていたのだろうか。気が付くとレイラの声で時間が動き出す。


 仲間との通話テレフォンを終えたレイラは当たり前のように俺の逆隣に座って魚を頬張り始める。


「レイラ、それだ。何で当たり前のようにルイトの隣に座るんだお前は! 」


 その行動にファリアさんの時間も動き出したみたいだ。何か取り繕うように抗議の声に力が入っている。


「いいじゃんか。空いてるんだしルイトのかしらの側のが何かと便利だろ? 」


「に、にゃにを言っているんだ。ん、便利って何だ? 」


 ファリアさん、声が上擦りすぎて噛んでますよ。


「こういった事とか? ファリアもやる? 」


 俺の胸元にすり寄って猫みたいに甘えてきて抱きつくレイラ。

 そういえばレイラの中では俺とファリアさんの立場は逆転しているらしい。


 本人いわく傭兵のシステムの外にいるから自分の見た情報が全て、つまりミノタウロスを直接仕留めた俺とサポート役のファリアさんでは俺のほうが上なのだそうだ。


「ま、また意味もなくルイトにくっつく。駄目だぞルイトは渡さん」


 そう言ってファリアさんに俺は掻っ拐って抱き締められる。支えを失って転がるレイラ。


「やっぱりファリアもやりたいんじゃないか」


 レイラに指差されて指摘され俺からバッと手を離すファリアさん。レイラの表情を見ると、ファリアさんはからかわれている見たいである。


 うん、仲良くなるのは良いことだね。俺はいきなり離されて地面に倒れる。


 そんなこんなでその日の夜は更けていった。


 そして翌朝に俺達は出発して数時間後にはアドナイの街の前に到着したのだった。


 いよいよ同郷の相手との対面の瞬間が近づいていくのに期待と不安が綯い交ぜの気持ちが込み上げて来る。


 鬼が出るか蛇が出るか? そもそも交渉は成立するか?


 その蜃気楼のような実態のない街の影を見ながらゴクリと喉がなるのだった。

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