粘る2人
『こいつら! まだ言うことを聞かないぞ!』
ずっと洗脳の魔法を勝と歩美はかけられていたが、なかなかほかの2人のようには行かなかった。
『どうしてだ! 2人とも今回の大会で好結果を残せていないだろう。何かしらのコンプレックスはあるはずだ!』
洗脳というのは人の心にあるスキマにつけこんで、思考を操るものである。
「私は岡ちゃんに勝つまでは絶対にあきらめないもん。それで来年は兼田さんも倒して、同年代の中で1番になる!」
「なんとかなるよ。あきらめない限りはいつかかなうものだし。時間さえかければ達成できる」
しかし、歩美は同年代にコンプレックスではなく、正しいライバル心を持ち、勝は強い心で常に向上心を持ち続けている。
そのまっすぐな心は、あきらめたり、周りをねたんだりしてきたレインのメンバーにはできないことであり、逆にその姿勢にコンプレックスを感じさせられた。
『うるさい!』
そしてつい、1人が歩美に手を出そうとする。
ガン!
構えていた銃で殴ろうとしたが、勝が前に出てかばう。
そのまま勝は倒れてしまう。
「中田さん! 大丈夫ですか?」
歩美が強気でいられたのは、勝のおかげである。彼が倒れてしまえば歩美も心が折れてしまうし、それを狙っての攻撃であった。
「どうした?」
騒ぎを見て、このメンバーのまとめをしている高ノ宮がやってくる。
『あ、高ノ宮さん。この2人だけどうしても洗脳されないので、今何とかしようとしてたところです』
「……、お前手をあげたな……」
勝が倒れているのを見て、高ノ宮が質問する。
『はい、この男がこの女を励ましていましたので、こいつを倒せば……、グッ!』
話す途中でその男は殴られる。
「拘束した相手に手をあげるとは何事だ! 拘束した以上は、今はこいつらは弱者なんだぞ! いいか、俺たちは弱いものの味方なんだ。その俺たちが弱いものに手を出してどうする!」
『も、申し訳ないです』
「ふん、とはいえ確かにしぶといな」
「な、なによ」
高ノ宮が歩美をじっと見る。
「いい面構えをしてはいる。しかし、君が今回この状況から助かるとすれば、結局は岡ちゃんとかいう君より上の実力者だ。要は君は守られる側になる。そんな彼女と試合をして勝ったからといって、彼女よりそれは上になったといえるのか?」
「そ、それは」
勝が気絶して心が弱くなった彼女は、高ノ宮の言葉を耳に聞き入れてしまった。




