閑話休題 聡美サイド
「やっぱり一流の試合は面白いわ」
大会が始まってからやや影が薄い彼女だが、それはずっと観客席で試合を見ているからである。ちなみに1人なので独り言である。ある彼女は昔から魔法選手の戦いを見るのが好きで、1番前の席を取って見続けている。
「井上さんが負けるとは思わなかったわ。つくづく会長は底が知れないんだから」
毎年見ていただけに、井上の強さは知っている。
自身と同じ火属性で、抜群の破壊力で相手をなぎ倒すスタイルは彼女の憧れで、戦い方をリスペクトするくらい尊敬していた。
そんな彼を倒した沙理に、改めて恐ろしさを感じていた。
「来月は私もあそこに立って試合が出来るのね」
既に新人戦決勝を決めている彼女は長年見続けた憧れの場所で戦えることを楽しみにしていた。
「最大限警戒しなきゃ」
彼女は元々、入学前から知名度のあった魔法使いで、周りには既に技を認知されていた。
今回の予選ではかなりきびしいマークを受けたが、それをねじ伏せた。
ただ、彼女の弱点は明らかになった。
明治にずっと負け続けている原因でもある圧倒的な弱点。
それは技の少なさによる戦闘パターンの単純さである。
技1つ1つは確かに協力だが、それぞれ発動したときの動きで何をするか分かってしまう。
加えて、技を2つ組み合わせるのにもまだ成功していない。
大振りな技の多い彼女が完全に対策されれば、隙をつかれる可能性はあった。
現に井上は隙とも呼べないくらいのほんの小さな隙をつかれて敗北した。
実力派の揃う決勝では、ほんの小さな隙も見逃さない。
耐久力に自信のない彼女には、その隙が純粋に負けに繋がってしまう。
今回の試合は2つ以上の技を使用する選手がたくさんいて高い戦略を見る機会に富んでいた。井上はもちろん、誰かの技を自らに応用できないかと模索していた。
「私だったらあそこでこうして……。それをこう返して……。ここからが無理ね。動熱変化があれば……。覚えたいな」
やはり興味があるのは井上のようである。井上の動きを真似しつつぶつぶつ言っている姿は不審者に近かった。
そのあと警備員に捕まって注意されたのは彼女は納得いっていない。
試合に間に合わなかったら、彼女は本気で怒っていただろう。
「私のどこが怪しいのかしら? もう!」
しかし、何とか試合前に戻って来ることができた。
文句を言いつつも、また捕まってはたまらないので静かにするようにした。




