嘘だから
「どうするの秋ちゃん、このまま黙ってて明日来られても面倒でしょ。秋ちゃんがもし許可をくれるなら僕がやってもいいんじゃない?」
明治が不機嫌な秋大を見て提案する。
「な、何かあるのかしら」
その意味深な発言に聡美が反応する。少し発言がどもったのは、明治が明らかに不機嫌になっていたからである。
秋大は普段から不機嫌な顔をしているので、不機嫌にしていてもあまり表情に変化がない。不機嫌にしていない方がむしろ表情に変化が出る。
しかし、いつもにこやかにしていて顔立ちがよい明治が不機嫌そうにしていると、ものすごく表情に現れて怖かったので聡美は面食らってしまった。
いわゆる美人が怒ると怖いという話だが、明治は一応男なので、美人という評価は正しくないが直感的にそう感じるのだから、気にしなくてもよい。
また、いつも不機嫌そうだと思われたあげく、顔立ちが悪いと遠回しに秋大が言われたようにも聞こえなくもない。
「この学校の生徒会メンバーは、生徒会長が決めていいのは知ってることじゃない?」
「校則に書いてあるからね」
「入学したばかりなのに偉いね。その校則なんだけど、会長が付け足した項目があるじゃない」
「会長が? そんなことができるの?」
「一応できるよ。先生の許可が必要になるけどそれは仕方ないじゃない」
この学校で最も優秀である生徒会長の権限はとても強い。自分の任期の間に決められる特別校則制定権もその1つである。
「会長が付け足した校則は、『会長が認めた生徒会役員を下せば、無条件で生徒会長と戦える』というものなんだ。他にもいくつかあるんだけどこれが1番有名じゃない」
「つまり、生徒会のメンバーになるの?」
「一応そうなるんだけど、事実上僕だけになるんじゃない」
「どうして?」
「秋ちゃんは、第3種魔法使いで実戦はあまり強くないじゃない」
「あなたあんなに偉そうにしてたくせに強くないの? というかしばらく喋ってなかったけどどこに行ってたの?」
ずっといましたよ。
「生徒会副会長が偉そうにしてて何が悪い!」
「悪くはないけど、良くはないでしょ! 生徒会長の席に座ってるし」
「生徒会副会長が生徒会長の席に座って何が悪い!」
「それは悪いでしょ」
「それはさておき、最近会計やってた先輩が卒業しちゃって、会計が空席じゃない」
「ずいぶん強引に話を戻したわね。でも会長が12人待ちなんでしょ? あなたの方は何人待ちなの?」
「あ、会長の12人待ちは嘘だから」
「は?」
秋大の発言に聡美は目が点になる。
「そう言えば大抵の人は1回引き下がるでしょ。そうすると、大抵の人はこの特別校則に行き着くじゃない」
「まぁそうね」
「あんた引き下がってないじゃん」
「……ごもっともで!」
正論を言われて何も返せない。
「そうすると会長と戦う前に、僕と戦うわけじゃない」
「そうね」
「僕がこの試合に全部勝つとどうなるか分かるじゃない?」
「会長は戦わなくていいわね」
「この校則は会長が楽だからあるんじゃない」
「でも、あなたにしても、昔いた会計の先輩にしても無敗って訳じゃないでしょ。会長さんも少しは戦わないといけなかったんじゃない?」
日本でも優秀な魔法使いが揃うこの学校で、少ない生徒会メンバーでは対策もされてしまうはず。かえって会長が忙しくなってしまうのではないかと思った。
「それは大丈夫だよ。昔の会計さんは2つ前の会長で、めいじは前の会長だから」
「なにそれ強すぎでしょ」
「ちなみに、この1年間で、会長は2回しか戦ってないよ」
つまり2敗しかしていないということである。
「しかも負けたのは先輩だけだよ。僕は会長以外には負けたことないじゃない」
「面白いわ。あなたを倒して会長も倒せばいいんでしょ」
「やっぱ脳筋の発想だな」
しかし、分かりやすくてよい解答ではある。生徒会室に、聡美が入ってからどれだけ時間がかかったのかようやく話が前に進んだよ。
バトルが書ける~♪(うまく書けるかな?)