やな予感しかしない
「うーん、井上さんがCに入っちゃったか。これはの1回相手は井上ぽいじゃない」
井上がブロックを選んですぐの東魔法学校陣営は少し困っていた。
残りのブロックはD、G、Hだが、沙理が井上を避けると、明治が井上とあたる可能性が高い。
かといって沙理がDに入るのはリスクが大きい。
左のブロックの方が明らかにメンツが厳しいのだから実力の高い沙理を右側に置く方が2人を決勝戦に送っている東魔法学校陣営としては妥当。
しかし、もう1人残っている中田勝も曲者。井上を倒す手段を持っているとの噂で1回戦からあえて井上を指名する可能性がある。そうなると1回戦から潰し合いになってしまい、東魔法学校は不利になる。
『兼田選手はDに入られました! まさかまさかです!』
「やっぱりそうするのがいいのか? ん……?」
秋大と明治が話し合っているとなぜか歓声が聞こえた。
「やな予感しかしない。めいじ、一応聞いておくが沙理はどこ選んだ?」
「……Dだよ。これで僕と中田さんも決まりじゃない」
「マジかー、まぁいいけど。作戦だけ考えなきゃ」
「どうも」
次の日に生徒会室に聡美が入ってきた。
「組み合わせ抽選会見ましたよ。兼田先輩何やってるんですか?」
「……ちょっと井上とは縁があるのよ……」
「井上さんと言えば超有名人ですよ。知り合いなんですか?」
「……私が初めて学校に通った時にはもうM-1グランプリは終わっていたの。だから非公式戦が私のデビュー戦だったんだけど、その相手が井上だったの……」
「誰ですか! そんな無茶なマッチメイキングをしたのは!」
井上の昨年までの成績はもちろん無敗。昨年の大会終了から決勝戦までの1年間では25試合無敗24KO勝ちという無敵っぷりである。
「闇属性の噂を聞きつけて、名古屋魔法学校からオファーが来たんだよ。光属性や闇属性は珍しいし、東魔法学校に通うくらいの実力も伴うとなればなおさらだからね」
沙理が暴走したこともあるように、光や闇属性は自制が非常に難しいのでまともに扱えるということを考えると実際に存在するこの属性は0.1%よりもさらに珍しい。
公式のM-1グランプリを含めても光、闇属性の優勝者はいない。
世界で活躍する選手にも一流はいても超一流はいない。
だがその対策されない珍しさは時に大判狂わせを起こす。
だからこそ、対策を立てられるチャンスがあるなら戦っておくに越したことはないのだ。
「……名古屋魔法学校が、勝ち負けに関わらず金一封をくれるっていうから二つ返事でいいって言っちゃちゃったの……」
「当時お金にさーちゃんは困ってたからね。学費は奨学金でなんとかなったけど自由に出来るお金が無かったから仕方ないんじゃない」
「因みに結果はどうだったんです」
「完敗だったね。沙理が初戦な上に名古屋でやったから緊張しっぱなしで」
「え? 兼田先輩緊張するんですか?」
海泉とは違って本物のポーカーフェイスをしている沙理か緊張している場面が聡美には想像出来なかった。
「倒されなかっただけすごいじゃない」
「あれなら倒された方がましだったんじゃないかな? ひどい試合だった」
「……秋大ひどいわ。嫁さんが落ち込むようなことを言うなんて……」
「悪かったよ。でもそれ以降のめいじを破った試合を含めていい試合が多いからあの試合は目立つんだよ」
「秋ちゃんひどいよ。さーちゃんを慰めるのに僕の負けた試合を持ち出すのは良くないんじゃない?」
「違う違う。あの試合は特にいい試合だったから印象に残ってるだけで」
2人をなだめるのに少しお時間を頂きます。
「というか、去年唯一井上さんがKO出来なかったのって兼田先輩なんですね」
「……そうよ。だから井上は多分抽選会で番号が私より後だったら私を相手に指名したと思うわ。クールっぽい見た目だけどすごく気にしてるから。私も負けたのは井上だけだから戦いたいとは思ってたわ……」
「兼田先輩も意外と気にしてるんじゃないですか」
「というか、誰が嫁さんだ!」
「ツッコミが遅い上にタイミング悪いです!」
17行くらい遅い。




