ロマン
またとある日の生徒会室。
聡美は資料を見ていた。
海泉の話には大会の場面とかの説明が無かったので、彼女の戦績が気になったからである。
「これかしら? 第9回第2種ジュニアM-1グランプリ優勝。清水海泉……。優勝してるならもっと言ってもいいのに。角田先輩のことを誉めるのに精一杯すぎでしょ」
海泉は優勝していたので、資料にも大きく載っていた。
ついでにその時の雑誌にも『オーダーメイドの魔法使いが初の優勝!』と書いてあった。
「あら?」
しかし智美には気になることがあった。
資料にも雑誌にも秋大の名前が載っていなかったのだ。
「どうしたの? 何か分からないみたいじゃない」
声を聞いて、明治が話しかける。どうやら今生徒会室に入ってきたようだ。
「オーダーメイドの道具は、作った人の許可がないと製作者の名前が載せられないことになってるじゃない」
聡美の疑問を聞いて答える。
「角田先輩は希望してないんですか?」
智美には希望しないメリットが分からなかった。
学生の大会とはいえ、大量生産品を押し退けて優勝するほどのオーダーメイド品を作れる技術があれば、世間はこれを放ってはおかないだろう。
そうなれば注文も増えたりして資金も集まり、より良い道具作りができるのだから、断る理由は無いように思えたのだ。
「してないよ。秋ちゃんはオーダーメイド品を作るのが好きだから仕方ないじゃない」
「なぜですか?」
「大量生産品を作りたいなら周りの援助は是非とも欲しいね。でもオーダーメイド品を作るなら目立ったりして注文が多くなると、結局自分の作りたいものが作れなくなるじゃない」
智美は、話を聞いて納得した。
秋大は海泉の話でもあったように、世間受けするものよりも、たった1人にあう道具をつくりたいのである。
だからあんなコント、もとい道具が生まれたのである。
「角田先輩も変わってますね。モテないとか悩んでますけど、高いレベルでオーダーメイドを作れるスキルがあるなら、それで有名人になればモテるんじゃないですか?」
「それはそれ、これはこれだよ。大量生産品の方が基本的には強いけど、やっぱりオーダーメイド品はロマンがあるよ。自分にしか使えない魔法で勝つ方がやっぱり気分がいいじゃない」
第1種魔法使いでありながら、第2種、第3種魔法使いの考えも理解する明治を見て、単純な魔法の強さ以上にこういったところにも彼と差があるんだなと聡美は思った。
「私ももっと勉強が必要ね」




